ゲストに聞く!日本の半導体産業 今後の可能性は!?

NHK
2022年7月1日 午後7:50 公開

●TSMC日本進出への評価

廣瀬アナ
井上さん、地元ではTSMC進出に期待が高まっていますけれども、この進出をどのように捉えていますか。

井上弘基さん(機械振興協会経済研究所 首席研究員 半導体業界を長年研究 国への提言や政策立案を行う)
日本の半導体にとって、とても大事な一歩だろうと思っておりまして、この半導体産業、かつて隆々としていた産業がちょっと弱っていたわけですけど、もう一度、こういうことをきっかけに、元気になったらいいなと思っております。

井上弘基さん 機械振興協会経済研究所 首席研究員 半導体業界を長年研究 国への提言や政策立案を行う

井上さん
熊本のTSMCの立地は、ソニーさんの工場の横につくられるように、ソニーさんの画像センサーとTSMCさんのロジック(論理回路)を合わせて製品にしていくという態勢で、ソニーさんにとっては、とても大事な半導体の供給が横から得られるのは安心材料。

それはデンソーさんも同じ。また、万が一、災害などが起きたときや、情勢の不安定な場合も含めて、国はTSMC熊本から半導体の供給を国内に広く受けることができますから、二重、三重によかったなと思っております。

廣瀬アナ
ものづくり太郎さんはどうでしょうか。

ものづくり太郎さん(製造業系YouTuber 半導体業界の分かりやすい解説に定評)
今、井上さんがおっしゃったように、(TSMCが)日本に来ると。ソニー関連の半導体をつくると。なぜこれがよかったというと、やっぱりソニーのCMOS(画像センサー)というのは、グローバルでもトップなんですね。

廣瀬アナ
その画像センサーの半導体が。

太郎さん
そうです。そのシェアを優位に進められるという土壌ができたというところは、非常によかったかなと思います。

ただ、『(ソニーの画像センサーを)日本メーカーでなぜつくられなかったのか』というご意見もあると思うんですけども、日本もかなり手詰まり感があったというところは拭えないかなと。

なので、技術を持ったTSMCが来てくれるというのは、僕はポジティブに考えていきたいのと、やっぱり、今後どうしていくかというところが非常に重要かなと思います。これで終わりじゃなくて。

ものづくり太郎さん

井上さん
そうですね。

太郎さん
例えば製造装置ですとか、化学メーカーですね、そういったものを一緒に育てていくというところが非常に重要かなと思います。

廣瀬アナ
TSMC進出の恩恵をより広くというところですね。

太郎さん
そうです。そうです。

●最大約4.700億円にのぼる補助金・・・

廣瀬アナ
ただ、今回のこのTSMC誘致のために、国は最大約4,700億円にのぼる補助金を用意しました。その点はどのように考えていますか。

井上さん
はい。金額の規模というのは、人は案外、論じないものなんですけれども、その4,000億円、5,000億円の税金投入が、もしソニーさんとデンソーさんのためだけだということになると、さすがにちょっと、それは税金投入としては多すぎないかという疑問もあります。

もう1つは、法律に基づいて補助金を投入するので、その法律に災害とか、万が一のときには、国内に広く半導体を供給するという取り決めが行われているので、そういう意味では、保険料になるわけで、その効果もあるかなと思います。

けれども、災害が起きる前では、ソニーとデンソーしか半導体の供給を受けられないことになるのであれば、4,000億円、5,000億円というのは、少し多すぎないかなと。

保険料というのは、保険金に比べたら少ないわけですから、月々の保険料のようなものですから、それが5,000億円とかといったら、もうちょっと広く、ほかにも日本の技術がいっぱいありますから、そういうものをTSMC熊本さんでも、いろいろ活用してもらいたいと思っております。

廣瀬アナ
4,700億円という税金を投入するということについて、もう少し、その恩恵を広げていくために、今後、国としてもかじ取りが必要だということですね。

井上さん
まったくそうです。

太郎さん
そうですね。現状で言うと、ソニーさんがもう、やったという感じですね。

廣瀬アナ
限られた企業に(恩恵がある)ということ。

太郎さん
環境だけ見るとですね。

●TSMC日本進出の経済効果を高めるには?

廣瀬アナ
井上さん、これだけの税金を特定の企業に投入することになりますが、その効果を十分に生かすには、どんなことが必要ですか。

井上さん今のところはソニーさん、デンソーさんに主に供給する。

もう1つ法律、法令的に、何か災害とか重大な問題が起きたとき、政府は熊本のTSMCの会社に対して日本国内に半導体を供給する要請ができるというかたちになっているので、万が一のときの保険にはなっていると思いますが、そうしますと、災害とか万が一のときが起きない場合、普通は起きないわけです。

その間、じゃあ、ソニーさんとデンソーさんだけに供給するんですかというと、それを決めるのは熊本のTSMCやソニーやデンソーさんの合弁の会社が決めることですが、

税金を4000~5000億も投入する以上は、日ごろ何事もない場合でも、そのほかの2社以外にも貢献してもらいたいと思うわけで、例えば、経済産業省は、つくばや産総研を使いながらユニークなデバイスの研究開発も進めているんですね。それが一部でも熊本で入っていくとか、日本の技術も熊本で活用されるかたちを、もう一歩進めてもらいたいと思います。

廣瀬アナ
特定企業だけに閉じたかたちではなくて、日本の半導体産業がさまざまな恩恵を受けられるようにしていく必要があると。

井上さん
そう願いたいところですね。

会社だから関係ないではなくて、税金を投入する以上は法律の定めだけではなくて、それをもうちょっと超えて、日本の技術の盛り上げにTSMCさんとしても協力してもらいたいと思います。

●人材育成に待ったなし!

廣瀬アナ
ものづくり太郎さん、人材育成の取り組みをどのようにご覧になりましたか。

太郎さん
人材がかなり必要だと思うのですが、お金がないと若者は働きたくないと思うんですよ。半導体業界にしろ、ものづくり業界にしろ。

TSMCは受託生産をしているわけで「設計」と「製造」が分かれています。極論にはなりますが日本の力、天才的な半導体設計者が出てきてもおかしくない状況ではあると思います。

トップを取ると、何がいいかというと、非常にお金をもらえます。儲かります。具体的にいうと、TSMCの部長級で年収1億円くらい。そういう世界です。なので半導体含め、ものづくり業界でトップになれば、グローバルでも活躍できますし、食いっぱぐれないというところで、これからかなとは思いますね。

廣瀬アナ
若者たちに、そうした夢のある業界だということを、しっかり業界として伝えていく必要もありますね。

太郎さん絶対ありますね。なかなかものづくりは、とっつきにくいんですよね。トップになっても、「何がええねん」みたいな感じですが単純に、必要とされるということですね、人材として。

廣瀬アナそうした希望も含めて人材、しっかりと獲得に動いていく必要があるということですね。

太郎さんあります。

廣瀬アナ井上さんは、この人材の育成というところでは、今後どのように取り組むべきだとお考えですか。

井上さん今、始まったばかりなところがあるかなと思っていまして、その割には時間がないと思っているのは、指導者のほうなんですね。

かつての日本半導体産業が元気だったころのエンジニアたちが、どんどん今、退職を年齢によってしているわけで、そうするとこれからの人を育てるための先生役、その人たちがどんどんいなくなってしまうという問題があるから、先生のほうが人材不足になると、もう若い人を育てようがなくなってしまうので急がなければいけない。規模感がまだまだ足りない。もっと数千人単位で育てなければ、到底、日本半導体全体を元気にしていくことはできない。

政府は人材の養成の計画を今、練っている最中なので、これからだんだん大規模な計画ができてくると思いますが、1つは急がなければいけないということと、どうしても政府は大きい、ソニーさんとか、デンソーさんというところを焦点にした政策を立てるんだけれども、それだけでは足りなくて、太郎さんが言われたように、設計などというのはベンチャー企業だったりするわけなんですね。

そういう小さい企業に対しても、部品や装置(の企業)でも人材の問題が出てくるので、大企業さんも、ベンチャーとか小さい会社さんも、民間の側でも、「自分の働く職場が魅力的だ」というかたちをつくりだすことが民間に期待されることで、なんでもかんでも政府よろしくということでもないかなと思っています。

太郎さん今、有名どころの半導体メーカーも昔はベンチャーだったんです。

30年くらい前は、ベンチャーが育って、いま花開いているわけですね。そういったところのバックアップも絶対的に必要だろうと思いますよね。

●日本の半導体産業の成長に必要なこととは?

廣瀬アナ
九州のシリコンアイランド復活、ひいては日本の半導体産業全体の成長のためには何が必要か、提言をいただきたいと思います。

太郎さん
シェアを落としてしまった半導体もありますが、今、シェアをもっているような半導体もあるわけですね。

パワー半導体とか、先ほど、ソニーさんのCMOS(画像センサー)ってあったのですが、パワー半導体もグローバルで上位10社のうち半分くらい日本企業が占めているんですね。

パワー半導体は何がいいかというと、電力を非常にコントロールできる。

例えばモーターだと全世界の消費電力の50%はモーターですから、そういったところにパワー半導体は必ず使われるわけですね。

ここのシェアを非常に大きくすると、やっぱりその影響力も大きくなるわけです。そういったところも、しっかり成長させてあげる必要がありますね。

ここにもバックアップが必要だろうと思います。    

廣瀬アナ
戦える分野を、さらに強くしていく。

太郎さん
そうですそうです。

超弱っちいところを今からせっせと育てあげるのは難しいと思うので、現状いい戦いをしているところも、しっかりバックアップしてあげるという感じですね。

廣瀬アナ
そして戦略も必要だということですね。

太郎さん
そうです。プラス、リスクをとった投資が必要ですね。

海外メーカーを見ると本当にリスクをとっています。非常に、1000億円以上の投資をするみたいな、1桁違いますね。

廣瀬アナ
攻める姿勢が必要だというご指摘がありました。井上さん今後への提言をお願いします。

井上さん
太郎さんがおっしゃったとおりですが、さらに追加しますと、設計の人材のことも触れられましたが、設計はさらにその上流に半導体を使う側が、半導体にとってのお客さまとしてあるわけで、半導体を盛り上げようとしたときに半導体を使ってくれる産業や人、そういったものが活発にあるかどうかは、半導体自身が元気かどうかということに、すごく大きな影響を与える。

廣瀬アナ
例えば家電業界とか車の業界とか、半導体を実際に搭載する商品ですね。

井上さん
そうです。

そこが元気で、グローバルな競争力をもつと、それに引っ張られて半導体の設計もグローバルに成功していくんです。自分たちの頭だけでお客さまが具体的に見えない状態で、ただ設計しろと言われても、やみくもに打つようなかたちになって、設計が成功する確率が高くなくなるのですが、具体的に大きい、成功する、使ってくれるお客さまがいる状態だと、そこにターゲットを向けて設計していけばいいので、成功する確率がずっと高まります。

例えば、車はこれからも自動運転とかが活発になってくるわけですが、皆さん車の自動運転というと、車の内部だけの半導体に注目しがちですが、自動運転が進むと車は車同士、あるいは大きな交差点にはレーダーが入ったりして、その情報を車に取り込みながら自動運転を全体として成り立たせていくようになっていくんだけれども、

そういう車の外側に設置した基地局のようなものにも半導体はたくさん使われますから、そういう分野に日本がベンチャーも含めて車の場合はトヨタさん、日産さんとか、大手さんがかなり手がけられる部分が多いのだけれども、そうじゃない、路上の側だとか、そういうところの通信にはベンチャーなんかが入り込む余地が多いにあると思っています。