ジェンダー平等にも効果あり?『夫婦会議』研修ってなに?

NHK
2022年12月7日 午後0:09 公開

『夫婦会議』という夫婦の対話の方法を研修に取り入れている自治体が九州各地にあると聞いた取材班。
どんな研修なのか?取材しました。(ジェンダー取材班)

『夫婦会議』を研修に取り入れている自治体の一つ、北九州市役所です。
子育て真最中の市の職員など、5組の夫婦が参加していました。

研修の様子

講師
「これから夫婦のパートナーシップをより強めてもらいたいなと思っています。そのために『夫婦会議』を実際に始めてもらいたいなと思っています。」

『夫婦会議』は、夫婦が自分たちの理想の家庭を作っていくために「対話」を重ね、その後の行動に繋げていくというものです。
ただ話し合うだけでなく、具体的に対話ができるようになっています。
対話をするために使用するのが専用の「ノート」です。  

ノート

ノートを開くと、家事や子育て、仕事など10種類のテーマに分かれています。
テーマに関する設問に対して、夫婦2人で書き込んでいきます。

ノート

例えば家事。
最初に、夫婦が家事に対してどう考えているのか、お互いの価値観を確認し合います。
家事への考え方や、好きな家事、嫌いな家事などを書き込みます。

次に、家事の進め方など、お互いが納得できる「理想の形」を記入していきます。
「家事を半分ずつ担いたい」という夫婦もいれば、「得意な家事を時間に余裕があるときにする」のが理想という夫婦もいます。
夫婦がともに納得できる形であることが重要です。

最後に、理想の実現のために2人で何をしていけばよいのか、具体的に書き込みます。
対話のあと、実際に行動に移せるようにしていくのです。

なぜ?職場で夫婦の対話の研修

なぜ、自治体でこうした研修を行っているのでしょうか?
北九州市にその背景を聞いてみました。

北九州市は8年前から、市の男性職員の育休取得や家事・育児参加に非常に力を入れてきました。その結果、男性職員の育児休業の取得率はなんと60%越え!!(令和3年度)
国が発表している全国の男性の育休取得率は約14%(雇用均等基本調査)ですから、たいへん高い取得率です。

その上でさらに男性の育児休業の“内容”を充実させたい!というのが導入のきっかけでした。

北九州市 柏木佳奈子さん
「男性の育児休業の取得率が上がっていますが、その内容を見てみると、まだ家事・育児を女性が多く担い、仕事をセーブするという傾向がありました。北九州市役所は職員同士の夫婦も多くなっています。女性も男性も長く活躍し続けていただくというのが、強い市政を運営するためにとっても大事だと考えています。
そのために性別など関係なく職員たちが活躍できる環境を作りたいと導入しました。結果的によりよい市民サービスに繋がるのではないか、そういった観点で取り組んでいます。」

北九州市役所係長

北九州市総務局 女性の輝く社会推進室 女性活躍推進課 女性活躍推進担当 柏木佳奈子さん

『夫婦会議』誕生のきっかけは、ある夫婦の離婚危機!?

『夫婦会議』のノートを作ったのは、福岡市内で子育て支援の会社を経営している長廣(ながひろ)百合子さんと、遥(よう)さん夫妻。
受講者に意識してほしい点を伝えました。

長廣さん夫妻

夫・長廣遥さん 妻・百合子さん

夫・遥さん
「男だから・女だからという、アンコンシャス・バイアス、そういったものに捕らわれることなく、自分はどうしたいのか。わたしたち夫婦としてどうしたいのか、こうしたことを『夫婦会議』で考えて決めていく」

「アンコンシャス・バイアス」とは、「無意識の偏見」のこと。
たとえば、男性は仕事、女性は家事といった意識が、知らず知らずのうちに植え付けられていることです。

このアンコンシャス・バイアスに捕らわれず、自分たち夫婦がどうしたいかを軸に対話するよう勧めています。

この『夫婦会議』は長廣さん夫妻の離婚危機から生まれたものでした。
地域活性化のコンサルティングの会社に勤めていた遥さんと、キャリア支援の仕事をしていた百合子さん。8年前の妊娠・出産を期に、関係が悪化したことがありました。

夫・遥さん
「家事は妻ものと思っていたので、自分は家族のためにしっかり稼ごう。仕事ばっかりやっていました」

妻・百合子さん
「(周囲からの)よき妻・よき母プレッシャーでドーンとメンタルが落ちてしまって。
それを見ている夫に対して、なんで見ているだけなの?なんか言いなさいよ!といった調子で、どんどんどんどん嫌いになっていく。」

夫婦関係の改善のため、しっかりと対話するようになった長廣夫妻。その中で、気付きがありました。

夫・遥さん
「仕事もしたいけれども 最も大切なものって、「家族の笑顔」だった。一番大事なのに、そこを大切にできてない自分がいた事がすごく大きい。(アンコンシャス・バイアスは)阻害しているものだったなと思って。」

その後、自分たちの経験をもとに「夫婦の対話の方法」を作り上げました。

長ひろさんお家

『夫婦会議』は現在、九州の10以上の自治体などで導入されたり、全国各地の子育て家庭から問い合わせがきたりするなど、広がりをみせています。

取材した内容は12月11日(日)NHK総合 午後1:05~ 放送されます。