『地獄の黙示録』(Apocalypse Now)

ライター 高田秀樹
2022年4月22日 午後0:00 公開

1979年

監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド、マーティ・シーン、ロバート・デュバル

ベトナム戦争末期、帰国して酒に溺れていたアメリカ陸軍のウィラード大尉(シーン)は、ある極秘作戦のためにベトナムに呼び戻される。その指令とは元グリーンベレーのカーツ大佐(ブランド)を暗殺せよというものだった。カーツは、軍から殺人の嫌疑をかけられた末に脱走し、カンボジアの奥地で現地人を従えた「王国」を作っているというのだ。
ベトナムに戻ったウィラードが見たのは、狂気的な光景だった。川を遡行するための援護を依頼されたキルゴア中佐(デュバル)は、「サーフィンをするため」に河口のジャングル一帯をナパーム弾で焼き払う。川沿いの基地では、兵士たちを慰問するプレイガールの乱痴気騒ぎを繰り広げ、もはやリーダーのいない部隊は目的もなくただ戦闘を続けている。
数々の矛盾は、次第にウィラードの精神をむしばんでいく。彼は言う。キルゴアが許されて、カーツが許されないのはなぜか、と。この言葉はベトナム戦争におけるアメリカの欺瞞をついたものだった。ウィラードはカーツを殺すことを決意するが、その真意はすでに命令とは別のところにあった。