ことし(2022年)7月30日、那覇市の認可外保育園で赤ちゃんが死亡する事故が起きました。施設は「経営が厳しい」としてその後、廃止され、市は安全管理に問題があったとして調査を続けています。
県内には1200か所以上の保育関連施設がありますが、このうち3割のおよそ400か所が認可外です。認可に比べると自治体からの補助は一部に限られ、厳しい運営状況の園が少なくありません。ただ、認可保育園で預かることのできる人数は限られていて、子どもの受け皿として無くてはならない存在となっています。
厳しい運営状況の保育園
今回、私たちが訪ねたのは、沖縄市にある認可外保育園「こころ保育園」です。平日の午前8時から午後6時半まで1歳から5歳までの園児54人を預かっています。運営にあたっているのは保育士など7人です。開園してから13年がたちますが、運営状況は厳しいといいます。特別に仲地薫園長に収支報告書を見せてもらいました。
それによりますと、この園の保育収入は月平均216万5000円です。このうち9割以上が保護者からの保育料。一方、支出は人件費や施設の維持費など、1か月あたりおよそ250万円にのぼります。毎月30万円程度の赤字です。このため、銀行から借り入れたり、みずからの給料を補てんに当てたりしています。保護者に負担をかけたくないと、ここ数年間、保育料は値上げしていません。
「保育園してます、何が大事かと言ったら、預かってる子どもたちの安心安全だと思っています。運営が厳しい中でも、やっぱりどうにか保護者の皆さんの期待や思いに応えたいと考えています」
“大切にしている安全対策”
園が最も大切にしているのは子どもたちの安全です。呼吸のチェックを定期的に行い、窒息事故を防ぐため、お昼寝の時間には、うつ伏せに寝ていれば横向けやあおむけにさせていました。認可外保育園では、保育士を職員の3分の1以上配置するよう定められていますが、この園では、職員の9割が保育士の資格を持っています。
さらに保育の質を高めたいと、ことし4月から職員の募集を新たに始めました。しかし、今の状況で提示できた条件は、最低賃金の時給853円から950円です。半年以上たちますが、問い合わせは一件もないといいます。仲地園長は、自分たちの力だけでは、この状況は変えられないと訴えています。
「どうにかやっていけるように頑張りたいなと思っています。ただ、行政の支援がもっとあればと考えてしまいます。私が一番望むのは、子どもたちに対する支援、例えば、教材費だったりとか給食費だったりとかっていうのをもう少し支援して頂きたいです。あとはやはり働く保育士たちの処遇を少しでもよくできるような人件費の支援もして頂けたらすごくありがたいなと思っています」
動き出した認可外保育園
ことし(2022年)11月、取材した仲地園長をはじめ、沖縄市の認可外保育園の園長たち14人が会合を開きました。このなかで、国がことし2月、処遇改善策として保育士の収入を月9000円上乗せする事業を始めたものの、認可外で働く保育士は対象外になっていることについて、「同じ資格を持っていても勤め先によって処遇が異なるのは不平等だ」という意見が出されました。また、認可に比べ公的な補助が少ないため、一時預かり保育の利用料が割高になっていることについて「保護者への負担が大きくなってしまうが、料金を安くしてしまうと保育の質を維持できなくなる」といった声が聞かれました。そして、参加者たちは保育の質を維持するために県に支援を求めていくことを確認しました。
認可外から認可へ低くないハードル
取材後記
県内の多くの自治体は子育て支援の充実を掲げています。認可外保育園など、保育の現場に対する具体的な支援を、さらに検討していくことが求められていると思います。
NHK沖縄では、保育現場の現状や課題を「保育現場の今」と題して、シリーズでお伝えしていきます。皆さんの子どもたちが通う保育園の状況はいかがでしょうか、また、保育現場で働く皆さんの声もぜひお聞かせ下さい。https://post.nhk.or.jp/pxkluhdeq2/hoikugenba_toukou/image/registrations/input
記者 安座間マナ