中日ドラフト1位 仲地礼亜投手がプロの世界で飛躍へ

NHK
2023年1月30日 午後7:12 公開

去年のプロ野球ドラフト会議で、中日から1位指名を受けた沖縄大学の仲地礼亜投手。最速151キロのストレートとスライダーを中心とした多彩な変化球が武器の右投げのピッチャーです。

沖縄の大学からドラフト指名は初めてで、沖縄の野球史に新たな1ページを刻みました。NHK沖縄放送局は、仲地投手を去年9月から約4か月にわたって継続的に取材しました。

「不安ですよ。本当に大丈夫かなって。最初は『進路をプロに絞っても選ばれないんじゃないか』というふうにしか考えられませんでした。でもプロ1本に絞って自分を追い込みました」

去年9月。ドラフト会議前に取材したところ、プロを目指す覚悟の裏に、大きな不安を抱えているという印象を受けました。

プロ野球志望に絞ったのは大学3年生

兄の影響で小学2年生から野球を始めた仲地投手。高校時代は県立嘉手納高校でエースとして活躍しましたが、1年生の時にチームが出場した甲子園ではベンチ入りできず、高校生の時はプロをあまり意識していませんでした。沖縄で野球を続けたいと思い、進学したのは沖縄大学。

去年12月まで約30年にわたって沖縄大学の監督を務めた大城貴之前監督は、入学当初の仲地投手は、ストレートが速く投げられるという印象しかなかったと言います。投げられる変化球もスライダーとフォークの2種類で、変化球のほとんどをスライダーに頼っていました。

しかし、練習試合などで、どんどん新しい球種を投げることで感覚をつかみました。変化球を習得するようになり、得意のスライダーを中心とした6種類を投げ分けられるようになりました。

プロを意識するきっかけになったのはおととし6月。大学3年生で全日本大学野球選手権に出場し、東京ドームで強豪相手に8回1失点と好投したことでした。

「全国という初めての大きな舞台で自分らしく投げることができて、緊張よりも楽しかったです。思っていた以上にいいと思ってもらえたと感じました」

数か月悩んだ末に、おととし10月、進路を”プロ1本”に絞りました。

実は“プロ1本”に絞った当時、ウエイトトレーニングでは100キロのバーベルを持つのがやっと、走り込んでもすぐ疲れてしまう状況でした。

覚悟を決めて本格的に始めたのが、外部の社会人チームも見ているトレーナーのもとでのトレーニング。ドラフト会議まで1年という短い期間で、筋力を強くしてパワーを出せるようにするため、バーベルを使ったスクワットやデッドリフトなど下半身を中心に鍛えるメニューをこなしました。

1年間のトレーニングで、体重は10キロほど増えて、持てるバーベルの重量がスクワットは275キロ、デッドリフトは220キロになりました。今まで着ていた洋服も入らなくなったといいます。ストレートは140キロ中盤を安定して投げられるようになり、去年の春には自身最速の151キロをマークしました。

ドラフト1位指名を受けて…

沖縄で多くの人に支えられながら迎えたドラフト会議当日。指名後の会見で述べたのは、県内でのサポート体制について、感謝の気持ちでした。

「最初は自分はプロに行く道を考えていなかったんですけど、いろいろな人のサポートをもらいながらプロの道を決めることができたので、沖縄にいてよかったと思います。選ばれたことで沖縄の大学からでも目指せるということが実証できたと思うので、上を目指して野球をやってくれる子が増えればと思います」

「彼からプロに行きたいという話しがあったときから彼の目標が同時に私の目標になって、『沖縄にいるからプロ野球選手になる夢をかなえられない』と絶対に言われたくなかったので、仲地にとっても私にとっても意地でした。長らく沖縄の大学野球に携わって、歴史的な日になりました」(沖縄大学・大城貴之前監督)

「やっていたアルバイトも辞めて、私生活もなく、すべてを野球1本に絞った覚悟がありました。ふだんはニコニコやっていますが、野球に入ると表情も一変するし、負けず嫌いの子なので、プロの世界でもその性格を発揮してくれると思います」(金城判トレーナー)

プロの舞台に立てることになった仲地投手。ドラフト指名後、あいさつに訪れた立浪監督から、沖縄で行われる秋のキャンプを見に来てほしいと提案を受けました。

見学に訪れた仲地投手は、ブルペンで先発ピッチャー陣の投げるボールの力強さに圧倒されたと言います。

「ボールの強さは強いなっていうのはあったんですよ。1球1球のコースであったり、再現性があったりというのでしょうか。これからもっと自分もそこを大事に1球1球投げていかないといけないと思いました」

刺激を受けた仲地投手は、より厳しいトレーニングに取り組むようになりました。週6回、午前・午後、下半身を徹底的に鍛えることで、ピッチングの安定感につなげようとしていました。

「スライダーが得意なボールですが、それを生かすためにもまっすぐがもっと大事になってくると思うので、変化球のためにもまっすぐをしっかり練習して。変化球を使うための良いまっすぐを投げていかないといけないと思っています。空振りが取れるまっすぐを投げたいです」

沖縄からプロ野球の世界で飛躍へ

トレーニングを続ける中でも感じていることは、「目標を持つことの大切さ」だと話してくれた仲地投手。母校・嘉手納高校で講演した時も後輩たちに話していました。

「Q継続するためにはどうすればいいですか?」(高校生)

「自分もプロに行くというのを決めて、目標を持ったことで、それに対して何かをやることに対しての継続する力は出てきたのかなと思います。やっぱり目標がないと途中で諦めてしまうことも多いと思うので、目標があれば嫌でもきついことでも続けていけると思います」

去年末、自分自身のプロ1年目の目標を聞くと、長く野球を続けたいという仲地投手らしい答えが返ってきました。

「まず開幕1軍から投げられたらと思うんですけど、まず本当にけがだけはしないようにまずはやっていって。その中でも勝負しないといけないときはあると思うので、そこはちゃんとやっていって。1年目から投げられて少しでも結果を出して、少しでもチームに貢献できればいいなと思っています」

取材後記

取材中、チームメイトと和やかにトレーニングを行っていましたが、ピッチングの練習になると一気に表情が変化することが印象的でした。監督、トレーナー、チームメイトなど沖縄で多くの人に支えられてのびのびと野球をしてきた姿を見て、仲地投手が自分らしく野球ができる沖縄を選んだ理由が分かったような気がしました。1年目から仲地投手らしく投げて、活躍できることを沖縄から応援しています!

沖縄放送局記者 上地依理子

2021年入局。ふだんは警察・司法取材を担当。夏の甲子園取材をきっかけにスポーツ取材も。