年末年始を前に オミクロン株対応ワクチンの接種は

NHK
2022年12月5日 午後9:17 公開

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、国と県が年内の接種完了を目指すオミクロン株対応ワクチン。しかしその接種率は残り1か月を切った12月2日時点で24.7%、およそ4人に1人の割合となっています。ワクチンの接種についてどう考えたらいいのか、現場を取材しました。
2022年12月2日 「おばんですいわて」で放送 ※動画リンクはページ下部に記載

▼4人に1人接種も 30代以下は2割↓

オミクロン株に対応したワクチン接種は、県内では9月24日に始まりました。それから2か月あまり経ちましたが、受けた人の割合は12月2日時点で時点で24点7%と4人に1人の割合です。ただ、30代以下の若い世代に限定すると、接種率は18点3%と20%を割り込んでいます。こうした世代の人たちにワクチン接種への印象を聞いてみました。

【3回接種した40代女性】
「副反応がひどくて2日とか寝込んでしまう。その間は仕事もできない、家のこともできないとなってしまうので、子供もまだ小さく4回目はちょっと足踏みしています」

【4回接種した10代男性】
「もっと副反応とかを詳しく開示していかないと打つ人も怖いし分からない。ワクチンを詳しく説明することが大切なんじゃないかと思います」

実際に話を聞いてみる中で最も多く聞かれたのは「副反応への懸念」でしたが、「休日を確保する難しさ」や「繰り返し摂取してきたことへの嫌気」などの声も聞かれました。

▼ワクチン接種の効果も 第8波で高まる関心

一方で、「新型コロナにかかった時に1日か2日で熱が引いた」と話している人もいました。こうした、感染しても重症化しづらくなっている背景にはワクチン接種の効果もあると指摘されています。県内では、3回目までのワクチン接種を終えた人の割合は8割近くに上っています。

ただ、ワクチンの効果は時間がたつと落ちてきますし、「従来型」のワクチンは、オミクロン株に対する発症予防効果も低いとされています。接種を受けるか、受けないかは、メリットとデメリットを比べた上でそれぞれが判断することですが、国や県は、年末年始のさらなる感染拡大を懸念して、接種を年内に終えることを目指しています。

新型コロナ 接種率の推移

まだ低くとどまっているオミクロン株対応ワクチンの接種率ですが、第8波に入り感染者数が急増してきたことを受けて、その上昇幅は増えてきています。県内で接種が始まって1か月の10月24日時点では、5.3%にとどまっていましたが、第8波に入り感染者数が急増すると、そこからひと月で15%ほど上昇。11月24日時点では19.8%となっていることが見て取れます。感染者数の伸びと接種率の伸びが似た傾向を示していて、関心が高まっていることが分かります。

▼接種の現場にも若い世代の姿

意識の変化は、ワクチンを接種している現場にも表れてきています。盛岡市上田にあるこちらのクリニックでは、1日に40人ほどにオミクロン株対応ワクチンの接種を行っています。クリニックによりますと、接種に訪れる年代は、10月半ば頃までは65歳以上がほとんどでしたが、最近はそれ以下の若い世代も増えてきたということで、取材に伺った日も、30代や40代の人の姿が見られました。

【接種に来た30代の男性】
「今までかかったことがなかったので無関心というか、そこまで関心がなかったんですけど、家族がつい最近感染してしまったこともあってちょっと気持ちが変わりました。やっぱり打つに越したことはないのかなと思います」

【接種に来た40代の女性】
「接種することで予防になると思うし、重症化を防ぐというところもあるので、受けるチャンスがあるのであれば受けた方がいいと個人的には思っています」

及川寛太医師

【おいかわ内科クリニック 及川寛太医師】
「第8波が始まったあたりから、少しですけど接種希望者が増えてきているような印象があります。ですが、まだまだ若い世代で受けに来ている人が少ないとも感じています。今からでも受けることでピーク時の感染人数とか死亡率が低くなるので、積極的に受けた方がいいんじゃないかなと思います」

▼高まる関心…一方で不安も 専門家は

一方で、接種への関心が高まるとともに、副反応をはじめ、ワクチン接種を行うことへの不安も少なからず増しています。こうした不安にどう向き合えばいいのか、県の感染症対策専門委員会の委員長を務める、櫻井滋医師に話を聞きました。

櫻井滋医師

【岩手県感染症対策専門委員会 櫻井 滋医師】

Q:オミクロン株対応ワクチンの副反応について。
A:現状では従来のものと差はないと考えていいと思います。大切なのは副反応は起きるものだと想定しておいて、起きたときにどうするかをきちっと考えて相談しておくということです。心配な方は医師に相談して、納得の上で受けていただくということが大切です。

Q:重症化しないとして打たない人がいることについて。
A:重症化しないということは、ワクチンを打たないでウイルスをまき散らしながら生活して、多くの人を巻き込んでるということです。ワクチンは自分のためならずです。家族のため、社会のためにも打っていくことでウイルスの量が減り、そして感染者が減り、社会活動が自由になっていくと考えてください。

Q:インフルエンザとの同時流行の懸念について。
A:今はパンデミック対策が緩められているので、インフルエンザが戻ってきて同時流行すると考えられています。2種類の病気に対して1種類のワクチンでいけるかというと、答えはノーです。インフルエンザのワクチンもコロナウイルスのワクチンも打つことが重要です。

Q:行動制限のない年末年始について。
A:まだパンデミックは終わってないということを最初に申し上げておきます。最終的に患者数が医療提供体制に影響を与えるほどに増えた場合には、行動制限はより強い形で再発効される可能性があるので、そういうことにならないように自分だけではなくて、家族を守るためにも、推奨される予防策は全てに関心を持ってきちっと行っていくことが重要です。

▼改めて感染対策の徹底を!

ワクチンの種類にもよりますが、現在一般的なファイザー社製のオミクロン株対応ワクチンは、1回目と2回目の接種を受けた12歳以上が対象で、前の接種から3か月たてば受けることができます。県によりますと感染拡大を受けて、医療機関や集団接種会場での予約も埋まりつつあるということです。県は、集団接種の枠を増やしたり、接種日程を追加したりして、引き続き年内に接種を終えられるようめざしたいとしています。

一方で、お伝えしてきたワクチン接種は、感染を防ぐ1つの手段でしかありません。手洗いや消毒、それに換気といった基本的な感染対策を、引き続き徹底していくことも重要です。年末年始が久しぶりに行動制限なく迎えられるよう、今一度、それぞれの感染対策について考えてほしいと思います。

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▼取材後記

 取材を始めたきっかけは、定例の知事会見での「国と同様に県も年内のオミクロン株対応ワクチン接種の完了を目指す」という達増知事の発言でした。直前に接種率の原稿を書いていた私は当時わずか14%ほどにとどまっていたことを覚えており、「それはいくら何でも無理な話では…」と感じたのです。
 どうしてここまで接種が進んでいないのか、医療現場や専門家、それに実際に接種に来ている人などに話を聞く中で副反応についての懸念や、繰り返しの接種によるワクチン疲れのようなものが背景にあることが分かりました。
 一方で、第8波で感染者数が急増する中で、再び感染が身近なものになり、急速にオミクロン株対応ワクチンの接種率が高まっているということも、取材を進めていく中で初めて分かりました。岩手県民の意識の高まりを感じるとともに、ここまで感染者数が増加してしまう前に自分事と感じてもらえる情報発信ができていれば…という一抹の後悔も湧いてきました。
 この悔しさを忘れず、次こそはもっと早い段階で関心を持ってもらうための報道を、という意識をもって新型コロナウイルスの取材に向き合い続けたいと思います。

NHK盛岡放送局 記者 渡邊貴大

平成25年入局
福島、鳥取、広島で勤務し災害や行政、経済取材を担当
広島局での医療現場の取材経験を元に
今回のワクチン接種の取材を提案