「ランニングバイク 正しく楽しむには」

初回放送日: 2021年7月20日

「ランニングバイク」と呼ばれる二輪の遊具の人気が高まっている。バランス感覚が身につくなどの長所がある一方、転倒による事故も多発。正しく楽しむコツを解説する。

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ランニングバイク正しく楽しむには

「ランニングバイク」と呼ばれる、公園でよく見かけるペダルがない二輪車の遊具。人気が高まる一方、転倒などによる事故が後を絶ちません。乗る際に保護者として気をつけたいことについてお伝えします。

《ランニングバイクとは?》
ランニングバイクとは、ペダルがなく、地面を足で蹴って進むものです。
国内で最も売れているとされるメーカーのものが発売されたのが12年前。消費者庁によると、自転車に乗る前の子どもが、バランス感覚を身につけることができると人気となり、今では様々な種類のものが販売されています。消費者庁が、徳島県内の保護者を対象に調査をしたところ、2歳から6歳までの6割から7割が持っていたという結果もあります。

《どのような事故が?》

どのような事故が多いのでしょうか。バランス感覚が身につく一方、自分でバランスを取らなければいけないため転倒しやすく、その際にけがをすることが多くあります。また何かにぶつかってけがをするケースもあります。
3年前には、4歳の男の子が車にはねられて死亡する事故が起き、おととしには、道路脇の崖から転落して4歳の男の子が大けがをし、助けに向かった男性が転落、死亡する事故もありました。
グラフは消費者庁が発表している事故の件数です。ただこれは消費者庁が連携している全国24の医療機関から報告されたもので、実際はもっと多いとみられます。年々増加する傾向にあり、2018年度には21件です。正確な数字はまとまってはいませんが、一昨年度、昨年度も同程度の数が報告されているということです。

最近の事故の例です。
「道路の段差でバランスを崩して転倒、腕と肩を骨折」。
「斜面で転倒。おう吐し、脳しんとうのほか額から頬にかけてすり傷を負った」。
「坂道を下っていた際に勢い余って遊具ごと転倒。顔面を砂利の地面にぶつけ、額や顔、唇のすり傷を負った」などです。

《坂道は危険》
消費者庁への報告では半数以上が坂道で起きています。ブレーキはついているものもありますが、ついていない方が多いのです。最大手のメーカーによりますと、「2歳・3歳ぐらいの子どもは、握力が弱く、ブレーキを握るよりも、とっさに足で止まろうとするので、備えていない」と話しています。
では坂道を走るとどのぐらい危険なのか。国民生活センターが人形を乗せたランニングバイクを走らせる実験をしました。足で止まるのは想定していません。傾斜が6度の坂道で、10メートル走ると、時速10キロを超えました。大人の自転車と同じぐらいの速度になります。10度の傾斜では、5メートル走っただけで、時速10キロを超えました。10メートル走ると時速は20キロ近くに。また大人が後ろから追いかけると、追いつきはするものの、止めることはできません。消費者庁は、坂道では走らないよう呼びかけています。

《気をつけるべきこと》

坂道以外にも乗る場所として気をつけなければならないことがあります。
道路交通法には、「交通の頻繁な道路において、球戯やローラースケート、又はこれらに類する行為」を禁止するという規定があります。ランニングバイク、法律上は自転車ではなく、ローラースケートと同様の扱いで、「これらに類する行為」にあたります。つまり交通量の多い道路で走行するのは法律違反にあたり、消費者庁は絶対にしないよう呼びかけています。
このほか、駐車場など車の往来がある場所、ぬれて滑りやすい場所などでも使用せず、利用可能な公園での使用を呼びかけています。
またメーカー側は、そもそも公道では走行しないように呼びかけています。
そして必ず保護者が付き添い、子どもだけで遊ばないようにしてほしいとしています。ただ、保護者が近くにいればよいというものではないと思います。私は何度か、子どもが公園から乗ったまま道路に出て保護者がその横を歩いているのを見かけました。やはり公園を出たら、子どもには降りてもらい、保護者が持って歩くというのを習慣づけることが大切ではないでしょうか。

《体を守る装備もしっかり》
また保護者にとっては、子どもの体を守る装備を備えるのも重要です。
消費者庁への報告では、けがをした部位では、顔と頭で8割を占めています。これは幼い子どもは重心が頭部よりにあり、転倒した際に頭から落ちることが多いためとされています。
ヘルメットは、転んだ時に外れないよう、あごひもを締めるのを忘れないようにしてください。また私も経験があるのですが、ヘルメットを買う際に、経済的なことも考えて、すぐに小さくなるからと大きめのものを選びがちです。それは危険ですので、しっかりとサイズに合ったものを選ぶようにしましょう。
ヘルメットのほかにも、手を守るグローブ、ひじやひざを守るプロテクターもありますので身につけましょう。
そしてもう一つ、乗る前には車体の点検もしっかりしてほしいと思います。

日本キッズバイク安全普及推進協会という団体が提唱している点検項目を紹介します。
ハンドルの緩みがないかどうかは、足でタイヤを固定してから、ハンドルを切るように少し力を入れ、動かないかを確認します。サドルの緩みがないかもチェックしたい点です。緩んでいると、突然高さが変わったり、向きが変わったりして危険です。
ホイールは、タイヤを手で前後左右に押してがたつきがないか確認します。ネジが緩んでいるとタイヤが外れることもあるので気をつけましょう。タイヤは、ひび割れなどないか確認し、また小石などが挟まっていたら取り除くようにしましょう。そしてもう一点。なるべく、室内で保管するというのも重要です。よく家の前や庭など屋外に放置され、さびてしまっているランニングバイクをみかけます。故障の要因になりかねません。ぬれない場所に保管し、ぬれたらしっかりふき取ることも大切です。

《様々な楽しみ方も》
実はランニングバイク、公園などで遊ぶ以外に、別の楽しみ方もあります。
速さを競うレースです。先月、神奈川県で開かれた大会では、プロテクターを身につけた子どもたちが年齢別に特設コースを回って速さを競いました。こうした大会、全国各地で行われていて、600人以上の子どもたちが出場する大きな大会もあります。一緒に練習するチームもあり、練習会なども盛んに行われています。また設置された、こぶや傾斜をうまく走れるかチャレンジするイベントなども各地で開催されています。

ただ、どんな楽しみ方をするにしても安全が何よりも重要なのは言うまでもありません。夏休みに入り、子どもたちが外で遊ぶ機会が増えます。保護者の皆さんには、思わぬところに危険が潜んでいるという意識を持って、今一度、正しい乗り方をきちんと確認してほしいと思います。

(田中 泰臣 解説委員)