アメリカ中間選挙 ペロシ下院議長宅襲撃 先鋭化する政治的暴力への懸念

NHK
2022年11月8日 午後0:01 公開

  アメリカのバイデン政権がウクライナの高官に対し「プーチン大統領との交渉を拒否する姿勢を改め、交渉に前向きな姿勢を示すよう内々に勧めていた」。アメリカのワシントン・ポストは11月5日付けの記事でこのように伝えています。 ただ、目的は、ウクライナに交渉の席に着くよう強制するものではなく、各国からの支援をつなぎ止めることだとしています。望月キャスターの解説です。
(「キャッチ!世界のトップニュース」で11月7日に放送した内容です)
 

・共和党側から“悪魔化”されたペロシ氏

有力紙ワシントンポストは、「事件は中間選挙で何が問われているかを思い出させた」と書いています。議会でどちらが多数派を握るかだけでなく、憎悪と対立が渦巻くこの有毒な政治環境が改善されるのか、それとも悪化するのか、それこそが問われているとしています。

共和党陣営は長年にわたって、初の女性下院議長となったペロシ氏に対して、左寄りの「進歩的な政策」の象徴として批判の対象としてきました。
 

今回の中間選挙のキャンペーンでも、ペロシ氏を攻撃する広告に多額の資金を投じていて、ワシントンポストは、共和党がペロシ氏を「悪魔化」してきた末にこの事件があると伝えています。ペロシ氏の自宅に侵入した男は、「ナンシーはどこだ?」と叫んでいたともされていて、去年の1月6日に大統領選挙でのトランプ氏の敗北を受け入れない人々が、連邦議会議事堂になだれ込んだ際にも同じようなフレーズを叫んでいたことが想起されます。
 
 

・問われるアメリカの理念 民主主義を取り戻せるか

2020年の大統領選挙に不正があったと信じる人々は、今回の中間選挙でも物議を醸す行動に出ています。激戦州のひとつ西部アリゾナ州では、あるグループが選挙を監視すると称して期日前投票に来た有権者を写真や動画で撮影したり、投票後につけ回したりしていると伝えられています。中には銃を身につけている活動家もいたとして、有権者や投票事務に関わる人たちを脅迫していると非難されています。

ワシントンポストは、今回の中間選挙で連邦議会の上下両院や州知事、州務長官などに共和党から立候補している人たちの半数以上が、2020年の大統領選挙でバイデン大統領の勝利を否定するか、疑いを抱く立場を取っていると伝えています。
 

こうした候補者たちは、「Election Deniers」「選挙否定論者」と言われ、自分たちが負けた場合に、選挙結果を受け入れない可能性が懸念されています。また、州知事や州務長官などに当選すれば、2024年の大統領選挙を各州で実施・管理する立場にもなるため、「選挙否定論者」の当落の行方は次の大統領選挙にも大きな影響を及ぼすとみられています。一方で、共和党側は、過去の選挙結果に疑いをはさむ発言は、民主党からもこれまでに数多く出ていると反論しています。
 

政治への不信が高まり、暴力的な対立が続くアメリカ。選挙によって民主主義への信頼を取り戻すことができるか、それとも選挙がかえって分断と対立を深め、民主主義を後退させていくのか。中間選挙で問われているのはアメリカの理念そのものだと言えます。