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with 益子直美「バレーボール 黒後愛」
NHK
2021年4月9日 午前11:53 公開

いい練習って、なんだろう。

番組で黒後選手が試行錯誤する姿を見て、久しぶりに30年前の現役時代を思い出した。

『今日はノーミスでスムースに終われていい練習だったな』と当時は思っていた。

けれど、ちょっと待てよ、、、

ノーミス、それって無難でなにもチャレンジすることなく、課題も見つからず、実はコーチの練習設定ミスだったりする、ということに気付いたのはごく最近のこと。

          

学生時代からミスをすると怒られて育ち、ノーミスがいい練習だと思い込んでいた。

自主性も主体性もなくバレーが嫌いなまま引退した私は今、『監督が怒ってはいけない大会』を主催している。

そんな私がくぎ付けになったシーンがあった。

                  

番組前半、Vリーグ6位で終わった昨シーズンの映像。レシーブからのコンビ練習、

『Aパス入ってるのにミドルで何本も決まらないのに、、、何回も使っているからイライラしたんです怒』

黒後選手が怒り、ピリッとするシーン。

これか!

以前、黒後選手の高校の先輩、大山加奈さんが言っていた言葉を思い出した。

『先生が怒ってくれたらどんなにラクだったか、、、』という言葉。

全国屈指の強豪校、東京の下北沢成徳高校は選手の自主性、主体性を大事にする指導方法。私の時代だったら監督が怒るシーンだ。見る人によっては自分勝手、自己中と言う人もいるだろう。

私には、自主性、主体性という指導は、選手たちにとって本当に辛く、痛みを伴い、こんなにも厳しいものだったんだ、、、ということを、このワンシーンで目の当たりにし、真の強さというものを見た気がした。

だから黒後選手は若くしてチームのキャプテンを託されたのだろう。

          

仲間がミスすると安心すらしていた自分の弱さが急に恥ずかしくなった。自分に自信がなかった私は、仲間のミスや失敗に対して怒ることは一度もできなかった。自分も怒られたくないから人のことも怒らないあまちゃん、典型的な仲良しこよしタイプ。

監督が怒ってくれるから、選手は怒る必要はなかった、ということ。

            

怒らないと強くなれない、怒って追い込まないと真の根性は生まれない、、、という指導者はまだたくさんいる。

この黒後選手のシーンを見て、監督が怒らなくても強くなれるんだということを実感し、怒ってはいけない活動をさらに進める決意が強くなった。

           

そして怒っている黒後選手を見て、重なったのは、

現在、女子バレー日本代表監督の中田久美さん。

         

私が高3で初めて代表に入った時、天才セッターと呼ばれ中心選手として活躍していた、ひとつ年上の久美さんは自分にも仲間にも厳しかった。

         

練習中、オリンピックで活躍した大先輩エースに

『○○さん、なんでトス呼んでくれないの!怒』

『このトスで決められないならどんなトスあげればいいの?怒』

そして試合ではベンチの監督に向かって

『うるさい!だまってろ!怒』と。

             

久美さんは、選手時代の自分を黒後選手に少なからず重ね合わせ、そして信頼しているはず。

きっと近い将来、久美さんは

『うるさい!だまってろ!』と黒後選手に言われる日を待っているような気がする。

     

人は成長すると壁ができ、心が折れて、修復してさらに強くなる、それを繰り返す。

黒後選手はまだまだ強くなる、伸び代しかない!

     

東京オリンピックで中田久美監督とともに戦う勇姿を見るのが楽しみでならない。

       

【益子直美】

バレーボール女子元日本代表。高校時代に代表に選ばれ注目を集めた。現在はタレント・キャスターとして活躍。中学高校時代に手を上げられながら指導を受けた経験に疑問を抱き、2014年から「監督が怒ってはいけない」ルールの小学生バレーボール大会を開くなど、スポーツを心から楽しめる子どもを増やすための取り組みを続けている。