サッカー日本代表のキャプテン、吉田麻也選手。密着取材は３月、ワールドカップ・アジア最終予選の終了直後にスタートしました。吉田選手は、所属クラブがあるイタリア行きの便に乗るため、空港に向かっていました。その車に同乗することが許されたのです。時刻は朝４時。聞くと、吉田選手は時差調整のため、試合後、一睡もせずにイタリアへ向かうとのことでした。

　私が眠気で目をこすりながらカメラを回す中、真摯に質問に答えてくれる吉田選手。どんなにタイトなスケジュールでも世界中を飛び回り、結果を出すことが求められるプロサッカー選手のタフな生活に感服しました。「これがサッカー選手っすよ」と軽々と言ってのける吉田選手でしたが、自分が同じスケジュールで動いてみて初めて、彼らにとっては日常である厳しい世界の一端に触れたような気がしました。

　取材中は吉田選手の気遣いに何度も助けられました。５月、イタリアを訪れたときのことです。撮影に向かった試合は、吉田選手に出場機会はありませんでした。残念な思いで現場から引き上げようとしていたところ、吉田選手がカメラの前に現れました。プレー時間がなかったにも関わらず、私たちのインタビューに応じてくれるというのです。

　しかも、去り際には「撮れ高は大丈夫？　あすロケいきましょう」と逆提案。ありがたくも、私は目が点になりました。これほどの一流選手が、“撮れ高”まで気にかけてくれることに驚いたからです。こうして分け隔てなく接する吉田選手の姿に、多くの選手たちがついていきたいと思うのだと実感しました。

　私にとって最も印象に残り、この番組を制作する上で「勝負どころ」と感じていたのは、数回に渡って行った吉田選手へのインタビューです。キャプテンとして日本代表をどう導いていきたいと考えているのか。今回の番組では、吉田選手の力強い言葉が随所に散りばめられています。普段あまりサッカーに触れる機会がない方でも、きっと心に刺さると思います。ぜひ吉田選手の言葉に、耳を傾けてもらえればと願います。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ディレクター　水谷 ジョージ 嵩