2年前、北京オリンピックに向けてスキー担当になったばかりの私は、長野県の白馬ジャンプ競技場に向かっていました。スキージャンプワールドカップで総合優勝を遂げ、日本選手初の「ジャンプ週間」総合優勝という若きエース、小林陵侑選手を取材するためです。
それまでプロ野球を担当していた私にとって、全く違う世界の取材。少しドキドキしながら待っていると小林選手は、電動のキックボードのような乗り物に乗って颯爽と登場しました。「今どきの若者だ!」と感じ、話してみると本当に普通の24歳(当時)。趣味はスニーカー集めに洋服。音楽も大好きで、インタビューは「人見知りをする」というだけあって少しことばが少なめ。それも含めて24歳の青年らしく感じ、とても好印象を受けました。
理想の動きへ 全身の感覚を研ぎ澄ませろ
ワールドカップ総合王者となった小林選手。取材を始めたころは、ちょうど新型コロナの影響で予定通りに雪上でのトレーニングができず、悩まされていました。オフシーズンからずっとスタートから踏み切りまでの「助走感覚の姿勢」をつかみきれずにいたのです。ジャンプ競技は、腰の位置や体を傾ける角度が飛距離に大きく影響を与えます。そのため、いかに全身の感覚を研ぎ澄ませて理想の動きに近づけられるかが鍵を握ります。
小林選手は、鏡の前でフォームのチェックを繰り返していました。体のバランスを整える基礎トレーニングを繰り返し、助走姿勢で腰を沈める深さをミリ単位で修正する。本当に地道で根気のいるトレーニングです。小林選手がたびたび口にすることば「ビッグジャンプがしたい」。この目標に向けて努力を続ける姿は、ふだんの若者らしい姿と大きなギャップを感じました。そして、その愚直さが小林選手の強さの秘密なのだと感じました。
いよいよ北京の大舞台 快挙を楽しみに
そして、オリンピックシーズンが開幕。「ビッグジャンプ」という目標に向かって愚直に走り続けてきた小林選手、年末年始には2回目のジャンプ週間総合優勝を果たしました。「先のことは考えずにまず1勝」とあくまで目の前の大会だけを見据え、自然体を貫いて臨む小林選手の姿勢が快挙につながったのだと思います。
小林選手がオリンピックの舞台で「ビッグジャンプ」を披露する姿を現地で見られることを心から楽しみにしています。そして、ジャンプを再び1998年の長野オリンピックのように盛り上げたい、という小林選手の願いがかないますように。
記者・沼田悠里(北京五輪の会場から)
放送 【総合】2月11日(金・祝)午後6:05 【総合】2月13日(日) 午前8:25