#39 モーグル・堀島行真 “ひたむき”であり続ける強さ

NHK
2023年2月3日 午後8:35 公開

 北京五輪のモーグルで銅メダルを獲得した堀島行真選手。昨シーズンのワールドカップでは総合2位、全試合で表彰台にのぼる快挙を成し遂げました。堀島選手は岐阜県の池田町出身です。NHK岐阜放送局では、堀島選手を6年以上にわたり取材し続けてきました。そして今年、満を持して「スポーツ×ヒューマン」で堀島選手を取り上げることになりました。

 きっかけは、昨夏、堀島選手が放った一言。それは、「今シーズンは、『カービングターン』ではなく『スライドターン』で戦う」というものでした。長年、堀島選手を追い続けてきた取材陣は、その発言に驚くと同時に、今シーズンの戦いに密着することにしたのです。

自分らしさを捨てる そのワケは?

 モーグルには、大きく2つのターンがあります。一つは、安定感に優れた「スライドターン」。そして、もう一つが得点は高いものの、難易度が高い「カービングターン」です。堀島選手といえば、「カービングターン」の名手。リスクを負ってでも、見る人を魅了する滑りこそ、堀島選手の持ち味です。性格は温厚で誠実。いつも優しい笑みをたたえている反面、滑りは攻撃的というギャップも大きな魅力の一つでした。(番組では、堀島選手の笑顔がたくさん見られます!)

 その「カービングターン」を「スライドターン」に変えるということは、まさしく「自分らしさ」を捨てることを意味していました。いったいなぜ、そうした決断に至ったのか。宿敵に勝つために。そして、想定外の出来事・・そこには、逆境と真正面から向き合おうとする堀島選手だからこその理由が隠されていました。

いつどんな場所でも貫いたもの

 堀島選手の姿は、たとえ大勢の人がいる中であっても、きっとすぐに見つけられます。なぜなら、姿勢と歩き方がとにかく美しく、ひときわ目を引くからです。骨格のバランスを改善するための地道な取り組みですが、ワールドカップ前、海外へのフライトでも背もたれにほとんど寄りかかることがなかったそうです。(なんとその時間10時間以上!) いつも猫背で下を向いて歩いている私には全く想像もつきませんが、今ではピンっとした姿勢の方が楽なのだそうです。

 上の写真は、スキー場でリフトに乗る堀島選手です。私たちは離れた場所から撮影したのですが、練習の移動中でさえ背筋を伸ばしていました。とにかく、いつも、どんな場所でも、理想的な姿勢と歩行を貫く。そこには、堀島選手のひたむきに物事と向き合い続ける意志の強さがあるように思えました。ロケの際に一番印象に残った姿でもありました。

 堀島選手は、今シーズン、ワールドカップでの総合優勝を掲げて戦いに挑んでいます。これからどんな滑りを見せてくれるのでしょうか。そこには、堀島選手の生き方や「らしさ」が垣間見えるはずです。堀島選手の滑りの進化の一端をぜひ番組でご覧ください。

                     ディレクター 田浦俊輔 (NHK岐阜)

*左より、ナレーター・伊藤英明さん、森田CP、田浦D