2020年6月15日放送 https://www.nhk-ondemand.jp/
ストーリーズ
ストーリーズ
「誇り高き悪魔 KISSジーン・シモンズ」
ロックバンドKISSの創設者、ジーン・シモンズ(70)。46年間、悪魔を演じてきたが引退を決意。日本ラストツアーの独占密着取材で知られざる“素顔”を明らかに! ラストツアーの舞台裏に密着!火を噴く秘密、悪魔メイクは自分で▽70歳の今も20キロ近い衣装で、2時間休みなく演奏。過酷なステージを支えるものとは▽原点は最愛の母の生い立ち。ナチスの強制収容所に送られ、両親が殺害されるのを目の当たりに。過酷な人生を乗り越えた母の教えとは▽ビジネスも大成功!関連グッズの売上1000億円以上。「生きる糧は金だ」▽スーパースターの心の内。「我々は頂点のまま去る」
番組スタッフから
担当ディレクターより
2019年12月。ジーン・シモンズ(70)との対面、撮影許可が正式に降りたのは、来日の3日前だった。 カメラクルーを連れ成田空港へ迎えに行くと、190cmの巨漢が目の前に現れた。 初めて会うなり、男は笑顔で私に会釈した。 1977年の初来日以来、今回が12回目。日本の歴史を深く知っている。 “I’m Gene Simmons, and you’re not.” [私はジーンシモンズだ。お前は違う]という独特の決め台詞と共に、開口一番高らかにKISSを辞める理由を話し出した。 「我々は世界一過酷なバンドだ。ローリング・ストーンズは70代後半まで続けられるかもしれない。 しかしKISSはそのようにデザインされていない。20kgの鎧のような衣装を着て2時間ぶっ通しでステージを駆け回る。 ”世界一ホットなバンド” 。長年連れ添ってきたキャッチコピーが偽りになる前に、我々はステージから降りる」 本人に指示されるがまま、初めて会った日に私はジーン・シモンズ とメールアドレスの交換をした。 その日以来何かをお願いし相談する際には、直接メールでのやり取りが始まった。 ジーン・シモンズから次から次へとメールが来る。それにすぐ反応しないと、顔を合わせた時にチクりと指摘される。 多くのセレブリティのようにSPを付けるようなこともなく、アシスタントもいない。その姿は意外であり、新鮮でもあった。 コンサート会場へ訪れると70歳の楽屋は秘密が多いらしく、最低限のスタッフ以外一切の入場禁止であった。 そんな中で撮影に協力してもらうことは容易なことではない。押し引きの攻防が始まる。 ジーンはとにかく頭の回転が速い。すっとぼけることも多々ある。 今まで数多のインタビュアーからの質問を受けており、だいたいの質問には答えのテンプレートを持っている。 他のメディアに取材されている彼は脳みそを殆ど動かさず腹話術で話しているかのように、質問に答えている。 独占取材の名に恥じぬ、他では聞かれないような質問を投げかけられるよう努力しながら、大きな背中を追いかけた。 負けたことはあるか?と聞いた私にジーンは答えた。 「毎日負けている。文字通り、毎日だ。だが気にしない。負けることは、女性にデートを断られることと一緒だ。 最初の子がダメだったら次を誘えば良い。それもダメだったらまた次の子。ずっと続ければ、いずれ当たる。 失敗も不安も何の意味もない。命奪われるもの以外は、全て人を強くする。とにかくバットを振り続けるんだ」 自称4000人以上の女性を抱いてきたロックスターは、物事をよく女性に例えて説明してくれた。 彼が初めて会い、最も影響を受けた女性の記憶。それは紛れもなく母親である。 一昨年92年の生涯を閉じた母・フローラはハンガリー系ユダヤ人だった。 第二次世界大戦の中、14歳にしてナチスの強制収容所に送られて、親と兄の死に際を見ることになる。 ホロコーストを生き残ったフローラと一人っ子のジーンは二人三脚で生きてきた。 全ての彼を形作ったのは母親であると言っても過言ではない。 8歳の頃、イスラエルからの移民としてニューヨークへ降り立ったジーン。 父親に捨てられ、母親は貧乏暇なし、とにかく一生懸命働いたという。 母を助ける一心で12歳から新聞配達などに従事する献身的な少年は、 アメリカ文化の洗礼をもろに受け、チャック・ベリーやビートルズに憧れミュージシャンを目指す。 やがてKISSは世界中でブレイクし、アメリカで歴史上No.1のゴールドディスク数を誇るロックバンドに成長。 権利ビジネスを中心に大きな富を得て、純資産は370億円を越える。愛する家族にも恵まれた。 それでもまだ欲しい、もっともっと欲しいと彼は言った。 ジーンの人生はアメリカン・ドリームそのものだ。 自分の人生で一番良かったことは、自由の国アメリカに降り立てたことだとも言っている。 “ロックスターではなく、モンスターになりたかった” 悪魔の化身となり、46年。見た目だけでなく、知名度、財産までまさにモンスターになった。少年の夢は叶ったのである。 70歳のジーンは私に少年の面影を時折見せてくれた。人にいたずらをする事も多々、知らない事があればどんどん吸収する。 おどけたような、ニコッと笑うあの笑顔が忘れられない。悪魔は優しい紳士であった。 人生を乗り切るには、勝とうとする意思、自信を持つこと、人生を貪欲に愛することが大事だと諭してくれた。 予定されていたKISSのコンサートは現在コロナの影響下で、多分にもれず全て延期・中止を余儀なくされている。 いつ再開出来るかも分からないこの状況で、今回の取材はとても貴重な記録となってしまった。 悪魔のメイクをしたジーン・シモンズ、最後の機会。この番組ではその断片を垣間見ることができる。 (番組ディレクター 津田雄介)
見逃し配信
「将棋界のレジェンド」羽生善治九段。タイトル戦の大舞台から遠ざかっていたが、最先端の将棋を研究、「竜王」への挑戦を決めた。迎えた七番勝負はまさかの展開に…。 ここ数年で激変した将棋界の勢力図。進化するAIを使いこなす若手棋士が台頭し、「将棋界のレジェンド」羽生善治九段もその激流に飲み込まれた。3年前に「竜王」を奪われて無冠に。大舞台から遠ざかっている間、家族との時間を大切にするなど、心身ともにリフレッシュ。さらに最先端の将棋に向き合い、「AI世代」の感覚を吸収していった。その成果が表れたのが去年秋。藤井聡太二冠を王将リーグで下し、さらに将棋界最高峰のタイトル「竜王」挑戦も決めた。相手は、かつて棋聖位を奪われた因縁のある豊島将之二冠。迎えた七番勝負はまさかの展開に…。50歳の苦闘を描く。