The Crossroad 黒木華さん

NHK
2023年4月18日 午後1:54 公開

廣瀬:「春風のように
(さわやかなお着物姿で)。」

黒木:「よろしくお願いします。」

今日のゲストは、女優の黒木華さん。
今月末公開される『せかいのおきく』。
江戸時代、
貧しくも逞しく生きる若者たちの青春を
モノクロの映像で描いた映画で
主演を務めています。

廣:「(着物での)撮影の合間の大変さは
ありますか?」

黒:「なんとなく
グダッと座れないと言いますか。」

演技に定評のある
黒木さんの人生の分岐点とは?
聞き手は廣瀬智美アナウンサーです。

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■映画で黒木さんが演じるのは
武士の家に生まれながらも、
貧乏長屋で健気に生きるおきく。
ある事件をきっかけに声を失うも、
好意を寄せる相手に
思いを伝えようとする姿を
熱演しています。

黒:「すごく自分にとって難しくて
課題になったのですけれど、
江戸時代は手話みたいなものがなかったので
身ぶり手ぶりでどう伝えようか、
これが正しいのかどうなのか。
全身で伝えるというか“全身で伝われ!”
と思いながら演じていました。」

■黒木さんがデビューしたのは
大学の映画学科で学んでいた19歳の時。
野田秀樹・中村勘三郎という大物との三人舞台。
その娘役として
1,000人を超える応募者の中から
演出も務める野田さんに抜擢されたのです。

黒:「まだちょっと学生気分が抜けやらない
というか、そもそも女優さんになれるとも
思っていなかったので。
ほとんど野田さんから始まったような
人生なので。」

■デビューから5ヶ月後。
再び野田さんの舞台に立つことになった
黒木さん。
その演技をめぐって、
ベテランのスタッフなどから
さまざまな指導を受け、
混乱してしまったのです。

黒:「舞台でどうお芝居をしていいか
わからなくなってしまったときがありまして、
それで、先輩方が
たくさんアドバイスしてくださるんですね。
だけど、そこをくみ取る力もなかったので、
そのときの私は。
ただただアワアワしてしまうと言いますか。」

■この舞台で、
真逆の意見をアドバイスされるなど、
黒木さんはどう演じればいいのか、
思いつめてしまいました。
そこに人生の分岐点が訪れます。

黒:「どうしていいか
わからなくなってしまったときに、
野田さんに
『いろいろな人が
アドバイスしてくれるだろうけれど、
自分で選択してそのお芝居をして、
その中で自分自身の責任を
取らなくてはいけないんだよ』
みたいなことを言ってくださって。
自分で責任を持って
選択したことをやるということが
自分の仕事なんだなと。
お芝居の中で正しいと思ったことを
選んでいくと決めたことが
私の、黒木華の人生の分岐点ですかね。」

■人からのアドバイスを
そのまま受け入れるのではなく
その中から自ら選択し、
演技することに決めたのです。
さらに大きな変化も・・・。

黒:「皆さんが意見してくださることを
素直に、より聞けるようにはなりましたかね。」

廣:「そうなるんですね。
逆にもう受けつけないではなく。」

黒:「受けつけないではなく、
結果、自分で選ぶから
より選択肢が増えるようになりました。
言ってくださったことに。」

■話題のNHKドラマにも
たびたび出演してきた黒木さん。
大河ドラマ『西郷どん』では
西郷隆盛に生涯尽くす
妻の役を熱演しました。

■最新作の声を失った女性の表現も
自ら考え抜き、演じました。

黒:「身ぶり手ぶりは
監督が『やってみて』という感じだったので
『じゃあこう?』とやらせていただきました。
その選択でよかったのかと思うことは
やはり常にありますけれど、
でも人のせいにするよりは
自分で失敗したなと思って、
自分のせいのほうが私は楽なんですよね。
人が選んだことで
“だってあなたが言ったから”というよりは
そういう選択をしたのは自分だし、
しかたないな
“次頑張ろう”ぐらいの気持ちのほうが
自分が健やかにいられるので、
それでよかったなと思います。」