郷土の名を背負って 平戸海にインタビュー

NHK
2023年3月12日 午前0:50 公開

春場所、前頭9枚目で挑む平戸海。 現在、2場所連続勝ち越し中です。 右を差して、左前みつをとり前へ攻める相撲は、 多くの人を魅了しています。 ふるさとは長崎県平戸市。 “平戸海”という四股名は故郷そのものです。 郷土の応援を背に躍進を続けています。 春場所前、平戸海に話をききました。 聞き手:ゆう5時相撲部 副部長 赤井麻衣子
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

赤井「九州場所に10勝、先場所は8勝と
二場所連続の勝ち越しで最高位更新となりました。
先場所の相撲はどう振り返りますか?」

平戸海「まだまだ、前に出られていない
相撲があったと思っています。
そして1番負けたら考え込んでしまう。
そこをいま治したくて。連敗したくないな、
結構考えるタイプなんです。
切り替えができるようになりたいですね」

赤井「右差し、左前まわしの相撲が力強いですが、
どんなことを意識して相撲を取っていますか?」

平戸海「稽古場から考えて
相撲を取るようにしています。
立ち合いまず踏み込む。腹に力を入れる。
ぐっと体を丸めるみたいな感覚ですね、
腰から重みをつたえるんです。
あとは真っ向勝負でいくっていうのを考えて、
今はやってます。
緊張したら自然と横に動いちゃったりする。
それが一番逃げなんで。
逃げたくないんでやっぱり。
それで負けるんだったら、
真っ向勝負で負けた方がいいなって」

赤井「十両に昇進してから、
順調に番付を上げてきたと思います。
強さのきっかけになるようなことは
ありましたか?」

平戸海「自信ですかね、だいぶついてきました。
気持ちを強く持てるようになったんです。
稽古場で、妙義龍関とか佐田の海関に
勝ったりしてそういうのが、
自信になってきたと思います」

赤井「関取は、“稽古好き”だとよく聞きますが…」

平戸海「好きじゃないですよ!好きじゃない。
でも、強くなるためにやるしかないんで。
ほんとはトレーニングとかもやりたくないんです、
でもやらないと。
好きってことにしておいてください(笑)」

赤井 「ライバルだという力士はいますか?」

平戸海「對馬洋さんです。仲良いですね。
食事も2人でよく行きます。
幕下の時、稽古場でよく言ってたんですよね。
“俺が先に上がる!俺が先だ!”って。
やっと上がってきてくれました。
怪我とかもありましたしね。嬉しいです。
あがってきてくれた方が
こちらも気合い入るんで。」

出身は長崎県平戸市、 中学卒業後の入門まで、この町で育ちました。

赤井「平戸で相撲を始めたのはいつですか?」

平戸海「小学校1年生から体が大きくて、
大会に出たり。真剣に始めたのは、小六とか。
元々はそんなにやる気がなかったんですけど、
2個上の先輩がまじめに取り組んでいて、
それを見て自分も強くなりたいなと」

赤井 「どんなお子さんでしたか?」

平戸海「わかんないな…
いや、真面目でした。
勉強もしたけど、テストの点数が悪かった…(笑)
中学になると、身長は今と変わらなくて、
体重は60キロくらいしかなかったですね」

赤井「入門はいつから意識していましたか?」

平戸海「中2くらいからですね。
勉強できないから行くしかないなと
思ったんじゃないかな(笑)
小学生の頃、相撲の全国大会がの時に
境川部屋に泊めてもらったんです。
関取も多いし、いろんな稽古相手がいるなと。
厳しいとは聞いていて、最初は緊張感があって
怖いな…と思ってたんですけど。熱い部屋ですね。
ずっと豪栄道関に憧れていて、
相撲を取ったことはないですけど、
胸はよく借りていましたね」

赤井「地元はどんなところが好きでしたか?」

平戸海「平戸の海は好きでしたね。よく泳いだり。
めちゃめちゃ綺麗ですよ。あと空気は綺麗だし、
魚がうまい!ぶりとか好きでしたね」

赤井「九州場所後3年ぶりに帰省されたそうで
その間に関取になられましたね」

平戸海「ちょっと車から出たら声かけられるので、
すごく嬉しいなと思いました。
これまでとは全然違いましたね。
嬉しいですよね、
自分の地元とは違う小学校・中学校の子とかが、
“平戸海だー!”って、嬉しかったですね」
そんな平戸市の中部にある紐差町。

平戸海の活躍に 町は盛り上がりを見せています。

紐差小学校区まちづくり運営委員会を中心に、 本場所前には平戸海の相撲幟が平戸中に およそ300本掲げられます。

まちづくり運営委員会事務局長
廣田耕太郎さん

「四股名に“平戸”と入っていることは、
私たちの誇りになっています。
何百年に1度でるかどうかの逸材ですからね。
ぜひ地域として盛り上げたいなと。
負けてもいい相撲、褒められる力士、
私たちの会話でいつもその話題が出ています、
自慢の力士ですね」

平戸海が稽古を積んだ土俵は、 母校の紐差小学校の一角にあります。 入門まで指導していた元力士坂尾廣毅さんが 案内してくれました。

「稽古場でも、負けて悔し涙を流したりという
姿はありましたね。
ほかの子より大きいし、足も速いし、
体力面ではずばぬけていて。
性格は今と変わらず大人しめですね。
みんなに慕われるっていうか、人を思う、
仲間に何かあったら助ける、優しい性格ですね。
相撲に関しては
その部分が心配だったりするんですけど…。
あうたびに貫録、力士っぽくなってきました。
ほんと頑張ってほしいですね。」
平戸海も通っていた紐差町の図書館では 応援の気持ちを伝えようと メッセージを募集しています。  地元の中学生が書いていました。

「平戸海を見ていると、
つかれた体に元気が宿ります、と書きました。
平戸の誇りですね、かっこいいです、力強くて」

「こないだ中学校に来てくださって、
努力は裏切らないという言葉が
心が残っています。とても誇らしいですね」

「私は、学校の先生になりたいんです。
平戸海関を見ていると
わたしも頑張ろうって思えます」

メッセージを送っている、副館長の椎山操さん。 中学生時代の平戸海と思い出がありました。

「娘が、小学校の時バレーボールをしていて。
学校で試合中、
応援に来ていた弟が
耐えられなくなって体育館から脱走して。
土俵で練習していた平戸海が
優しく相手をしてくれていました。
“ごめんねー”っていうと“いいですよー”って。
近くで練習を見ていた、
女の子たちがその時教えてくれました。

“ゆうきくんは、相撲部屋に行くとです。
強くて性格もよくて人気者なんですよ。
だから寂しいんです“って。
あんなに細くて優しいお兄ちゃんが
今は立派になられて、本当に応援しています」

届いたメッセージ、 平戸海は“力になる”と大切に保管しています。

そしてそんな故郷には 平戸海の心の支えとなる人がいました。

赤井「相撲の原動力はなんんですか?」

平戸海「妹と弟ですね。
4人兄弟なんですけど、
下の2人が年離れていて。弟が7歳、妹が11歳。
めちゃくちゃかわいいです。
応援してる動画とか写真とか送られてきて、
癒されますね。
ランドセルも買ってあげました。
僕が彼らにとって
自慢になってくれたら嬉しいですね」

平戸で妹と弟に話を聞くことができました。

大切な取組の日には、 母と妹の佳穂さんは目を背けてしまう。 大和君が結果を教えてくれるといいます。

弟・大和さん(7)
「ゆうき兄とはスイッチとかして遊びます」

妹・佳穂さん(11)
「普段は優しいお兄ちゃん。
いつもいうこと聞いてくれる。
勝ち越しても勝ち越さんでもいいけん、
怪我せんで、とってーって」

赤井「春場所、目標はどこにありますか?」

平戸海「まず勝ち越し目指して、
まだ三賞取ったことないので、
三賞目指して、がんばります。
真っ向勝負の相撲を見て欲しいです」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
((こぼればなし・・・平戸海の趣味編))

赤井「お休みの日はなにしてますか?」

平戸海「韓ドラみてますね。
“梨泰院クラス”“サイコだけど大丈夫”とか、
“愛の不時着”とか、面白かったですね。
いま、韓国に行きたいんですよね…。
美味しいもの食べたいなって。
焼肉とかあと、韓国でチャミスルが飲みたい」

赤井「2月の福祉大相撲では、
美声を披露されていましたね。
すっごくお上手でした」

平戸海「ほんとですか?ありがとうございます。
あの日、調子悪かったんですけどね。
朝、声がまったく出なかったので、
のど飴なめてがんばりました」

赤井 「本気だしたら、
あんなもんじゃないぞ、と?」

平戸海「それは、やめて…
まぁあれくらいってことで。(笑)
よく歌うのはEXILEとかコブクロとか。
力士っていったら
古い歌おぼえないとなぁ」

赤井 「趣味はありますか?」

平戸海「“釣り”ですね。いま勉強中です。
妙義龍関が、すごく詳しいんで、
教えてもらっています。
“この道具いいよ”とか、釣り方とか、
プロみたいですよ。なんでも知ってるんです。
平戸にも釣り竿持って帰ってやりました。
今の課題は魚を触れるようになることです」

赤井 「魚が触れないんですか?」

平戸海「練習してるんですよ!
気づいたのは、
ビビりながら触ったらあばれるんで。
サッて持った方がいい。
1回もできたことないんですけど(笑)

生きてるうちに持った方が
魚が大きく見えるんですよ。でも怖くて。
針とか刺さったらどうしよ、って
いつか平戸で釣ったらその時は触ります!!」

平戸海関ありがとうございました!