シンガーソングライターの
矢野顕子さん。
3月発売の最新アルバム
「君に会いたいんだ、とても」のテーマは
「宇宙」。
実は矢野さん、幼いころから
宇宙への憧れを強く抱いていると言います。
矢野:「宇宙飛行士になりたいんです。
この前のJAXAの(飛行士募集の)ときは
応募どうしようか、真剣にずっと考えて。
宇宙のことを考えて暮らせるなら
一日そうやって暮らしたいくらい好きです。」
その思いがこうじて、
今回のアルバムでは
宇宙飛行士の野口聡一さんに
歌詞を書いてもらいました。
常に新しい挑戦を続ける矢野さん。
その人生の分岐点を伺います。
聞き手は八田知大アナウンサーです。
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八田:「宇宙飛行士の
野口聡一さんとの共作ですが、
どんな思いで制作されたのですか?」
矢:「曲を書いているときは、
野口さんの詞をピアノの前に置いて、
野口さんから頂いたドアップの写真も置いて、
“私は野口聡一”という風に。
ははは。
実際宇宙へ行った野口さんが
地球はどんなにきれいだったかを
直接彼が言葉にしてくれないと、
私たちはやはりわからないですよね。
そこが大事なので、(野口さんの)言葉は
ほとんどそのまま使いました。」
矢:「大気圏に守られていて、
私たちのその生活と(宇宙は)
実は密接に関係しているので、
皆さんがそういうふうに
思いをはせてくださったらいいなと思って。」
■そんな矢野さんの人生の分岐点とは…
矢:「1990年にそれまで住んでいた東京から
ニューヨークに移住したときだと思います。」
■35歳のとき、
矢野さんは家族でニューヨークへ移住。
以来、この街に住み、
音楽活動を続けてきました。
矢:「その当時の夫が、
欧米での仕事が多くなったので。
それで結局私はもう
『ニューヨークにしよう』とたきつけて。」
■異文化の中で、家事や子育てをしながら、
音楽活動に取り組む日々が始まりました。
矢:「それはもう経験してみて、
いろいろなことがあるわけですよね。
家族の中で私の英語がいちばんマシで、
子どもたちは学校へ行かなくちゃいけないし、
運転できるのも私だけだったし。
もう本当にね。
薄切りのお肉とかは、
普通アメリカのスーパーではないんですね。
どうやって暮らしていたんだろう?
と思うぐらい。」
■やがて矢野さんは、
様々な人種が集まるニューヨークで、
ある大切なことに気付きます。
矢:「地下鉄に乗れば、
自分の両隣に座っている人は、
出身も宗教も、食べるものも(違う。)
これだけ違えば
考え方も違って当たり前ですよね。
自分が“個”でいられる、
“個の自分”を人は見てくれる。
そういう人たちの集まりですし、
そのとき感じたことや考えたことが、
音楽に反映されるのが
シンガーソングライターなので
その環境の力は大きいと思います。」
■ニューヨークで異邦人として暮らす。
そのことが、自由な発想や感性を磨き、
チャレンジし続けることにつながったのです。
八:「もしあのとき
ニューヨークへ行っていなかったら?」
矢:「何なら音楽を作ることを
やっていなかったかもしれないですね。
ずっと甘やかされたままで、
自分はどんなものを作るかを
問いただされることもなく、
苦労して音楽作るよりも
なんとなくおいしいものを食べて、
普通に暮らすだけでもいいかな、みたいに。
本当にあの町にはね、何か力があるんです。
アート、ものを作るという心を育む、
育むものがあるんだなと。
一生懸命やる人、やりたいと思っている人を、
“助ける”“助け合う”という精神は、
おそらく日本よりもあるんじゃないかな
と思うんです。」
■デビューから47年。
ニューヨークという街が
矢野さんのチャレンジする心を
後押しし続けています。
八:「改めて次にやってみたいこと、
何でしょうか?」
矢:「宇宙飛行士になりたいという気持ちは
ずっとありますけれども。」
八:「やはり宇宙なんですね。」
矢:「国際宇宙ステーションへ行って、
そこで、ピアノは無理ですから
キーボードを弾きながら
歌を歌ってみたいと思います。」
八:「宇宙で歌ったら、間違いなく
世界中にその歌が届きそうですね。
ニュースにもなって。」
矢:「そうですね、
じゃあNHKで中継していただいて。
ははは。」