The Crossroad 大森南朋さん

NHK
2023年1月23日 午後3:32 公開

大河ドラマ「どうする家康」で
徳川家臣団のまとめ役、
酒井忠次を演じる大森南朋さん。
数々の作品で高い評価を受ける
大森さんの人生の分岐点を伺いました。
聞き手は高瀬耕造アナウンサーです。

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高瀬:「ひと言、言わないといけないと
思うのですけれど、
連続テレビ小説『ちむどんどん』
お疲れさまでした。」

大森:「ありがとうございました。」

高:「私としては、
やはりお父ちゃんもう少し長く
生きていってほしかったなという。」

大:「そうですね。いや、僕自身も
もう少し長生きしたかったのですけれど。」

高:「今度は(酒井)忠次役ということで、
引き続き楽しませていただこうと
思っておりますが。」

大:「いや、ありがたいですね。
ぜいたくに朝ドラから
大河ドラマに渡っていけるという。
だから本当にもう
NHKさんには足を向けて寝られない。」

高:「そういうの、放送で使えませんから。
はははは。」

大:「はははは。」

大:「徳川家康様が、成長していく。
それを家臣団が支えていく。
わりと僕は青春群像劇のように
やらせていただいているというか。
もうすごいテンポ感で来ているし、
今までに見たことのないような。
本当に楽しめると思います、そこは。」

■そんな大森さんの人生の分岐点とは…

大:「『ハゲタカ』という
金融もののドラマがありまして。
それでだいぶ俳優として
いい角度のほうに進められるようになった
という気がしていますね、うん。」

■2007年放送のドラマ「ハゲタカ」。
バブル崩壊で苦境にあえぐ日本に、
大森さん演じる
外資系ファンドマネージャーが
企業買収を仕掛けるという作品です。

■デビュー以来、
アルバイトをしながら
役者を続けてきた大森さん。
いつか自分にしかできない役をつかもうと、
地道に努力してきました。

大:「ドラマとかに
どんどん出ている同世代がいるのに、
自分はアルバイトしているという、
仕事が増えそうで増えないみたいな
低空飛行続くみたいな、
本当にモヤモヤしていた。
オーディション何で受からなかったのだろう
ということを考え、
ひとりで分析みたいなことを
していましたけれど、
それをやり続けることで、
突出したものが出てくるかもしれないしとか。」

■その後、個性的な演技で
徐々に注目されるようになった大森さん。
35歳にして初めて、
テレビドラマの主役に抜てきされたのです。

大:「NHKのディレクター陣にも
変わった方がいらっしゃって、
僕のわりとコアな映画を見ていただいていた。
『本当に僕でいいんですか?』
と聞きましたよね。
『大丈夫ですか?
数字(視聴率)は持ってないですよ』と。
ははは。」

■苦節14年で掴んだ、
本格的な経済ドラマの主役。
大森さんは半年をかけて役作りに励みます。
脇を固めたのは、
菅原文太さん、大杉漣さん、中尾彬さん、
柴田恭兵さんなど早々たる面々でした。

大:「大抜てきというかたちで
やらせていただいたので、
僕が中途半端なことをしてコケたら、
もう僕は俳優を辞めるしかないぐらいの
覚悟を持って。
だからたまっていたうっ屈したものを
今ここで吐き出していくみたいな、
静かに、静かに、吐き出していくみたいな。」

高:「プレッシャーの中で
勝負をかけていたわけですよね。」

大:「だと思います。そうそう。
だからなんか、メラメラと
燃えていたのでしょうね、心は。」

■大森さんが主演を務めた「ハゲタカ」は、
国内はもとより、海外でも高い評価を得ました。

大:「やはり人に褒められる、
評価をいただくと、
必要としてくれる場所があるのだという、
“まだ大森南朋は俳優で生きていっていい”
と言ってくれているんだなと思って、
あれ(ハゲタカ)がなかったら
絶対いないとは思いますね、ここには。」

■もうすぐ51歳になる大森さん。
35歳で演じた作品を胸に秘め、
毎日俳優の仕事に向き合っています。

大:「なんか50(歳)になって、
周りが見えすぎちゃうんですよね、
狙いというか。生意気ですけれど。
でも昔は本当によく言われたんですよね、
『気にしないで芝居しろよ』みたいな。
20代、30代前半とか
『ハゲタカ』の頃とかのほうが
自由にやっている、
いい俳優だったような気もしたりもしますね。
まだまだ頑張っていかなきゃなという風に
思いますけれど。
大杉(漣)さん、(菅原)文太さん、
(柴田)恭兵さんとかもそうですけれど、
一緒にいることだけでなんかうれしかったし、
だからそういう存在になれればいいかなと
思いますけれどね。」

高:「分かりました。
では後ろからずっと
大森さんの背中を見ています。」

大:「ちょっと勘弁してくださいよ(笑)
ムズがゆいわ!」