〝痛くない〟乳がん検診X #beyondgender

NHK
2022年10月6日 午後7:15 公開

10月は、乳がんの早期発見
治療を呼びかける「ピンクリボン月間」。
そこで今回のゆう5時は
〝痛くない〟乳がん検診にチューモクしました!

乳がんは、日本人女性で一番罹患者数が多いがん。
国は、40歳から2年に1度の受診を勧めていますが、
検診率はおよそ47%と非常に低くなっています。

その理由のひとつが「痛い」こと。
検診として確立されているマンモグラフィーは、
乳房を2~3cmの薄さになるまで
ぎゅーっと押しつぶして、X線で撮影します。
このときに大変痛い思いをするので、
乳がん検診を敬遠してしまう

という女性が多いのだそう。

<痛くない!乳がん検診>

そんな中、最新のMRIを使った
「痛くない」乳がん検診が実用化され、
運用が始まっているのです。

服を脱ぐ必要はありません。
くぼみに乳房が入るようにうつぶせになるだけ。

MRIはこれまでも乳がんの精密検査では
使われてきましたが、造影剤の投与が必要でした。
この方法ではそれが不要なため、
一般的な検診でも使えるようになったのです。

<受診した人は>

これまで定期的に検診を受けてきた
という40代の女性は、
今回初めてMRIを使った検診を受けて、
「見られたり触られたりがなく、
こんなに楽なんだとビックリしました」
と話していました。
また、検診の案内が来ても痛いのがいやで
行かないこともあったという50代の女性は
「これなら毎年でも検診に行けます」と
喜びを語ってくれました。

<がんを発見しやすい>

この方法では、微弱な電波を使って
乳房周辺を5ミリ単位に輪切りで撮影します。
そのデータを3D画像に合成して、
あらゆる角度からがんを探すことができます。
その結果、これまでは難しかった
脇の下のリンパ節のがんも見つけやすくなりました。

この無痛MRIによる乳がん検診を
実施している医師は、
画像診断の精度がぐっと上がったといいます。

【SeedsClinic新宿三丁目 石田二郎院長】

「腫瘍の広がり具合、その位置が
どういう位置関係にあるのか、
3Dの画像では見やすい。かなり画期的な方法」

<メリットはほかにも>

こちらは、乳腺の多い一人の女性を
二つの方法で検査した画像です。

左側がマンモの画像。
正常な乳腺も病変も白く映るので全体が真っ白に!
日本人女性にはこのように
乳腺の多い(高濃度乳腺)人が多く、
そうした場合は病変をみつけるのが
とても難しいと言います。
一方、右側がMRI画像。正常乳腺は薄く、
病変は➡の部分、黒く写るので見落としにくく、
がんの発見率も高くなると期待されています。

<増える実施医療機関>

この「痛くない」乳がん検診を受けられる医療機関は
徐々に増加しています。
現在実施しているのは
全国で38施設(文末のリスト参照)。
予約すればだれでも受けられます。
さらに今年度中に青色で示した
4つの県の医療機関でも導入される予定です。

<料金は全額自己負担>

ただ、課題は検診を受けるための料金の高さ。
現在、無痛MRI乳がん検診は自治体から補助金が出る
「住民健診」には指定されていないため、
全額自己負担で2~3万円かかります。

なぜ、乳がんの早期発見につながりそうな検診が
指定されないのか。
住民健診の項目を決めている厚生労働省によると、
「まだ実施数が足りない。
死亡率が下がったというデータがそろったら検討する」
ということです。

この検診を開発した東海大学の高原教授は
「撮影や読影には、専門技術が必要。
実施機関が広がるよう、人材育成を進め
検診率の向上に繋げたい」と話しています。

日本人女性の9人にひとりが
かかるというデータもある乳がん。
今は早期に発見して治療すれば
治る割合も高いといいます。
より多くの人が乳がん検診を受けられるよう、
選択肢が増えることが期待されています。                

(取材:浅岡理紗ディレクター・志鎌咲那ディレクター)

【参考】無痛MRI乳がん検診を実施している医療機関 (2022年9月現在)

ドゥイブス・サーチ無痛MRI乳がん検診 
ポータルサイトより