このドキュメンタリーがヤバい!12月29日放送
担当ディレクターから
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? 在日コリアンの方の番組はこれまでも多く制作されています。今回は、特に、戦中戦後を知る最後の世代(2世)、その等身大の飾らない言葉を聞くことができる現場を記録したいと考えました。「自分の人生、人に語るほどのものではない…」-取材をするなかで、そういう方々こそ、驚くような経験をしていたり、胸に突き刺さる深い思いを抱いていたりします。もしかしたら、近所のおばあちゃん、横にいる友達の家族の話かもしれない、、そう思って見てもらいたいと思いながら制作しました。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? 強いて挙げるなら…2世のおばあちゃん南賀恵(みなみ・よしえ 本名イ・カヘ)さんが、宝物にしていた子どもの賞状が、火事で燃えてしまった時のことを話す場面、2世のおじいちゃん高石文一(たかいし・ぶんいち 本名ハン・ムイル)さんが、結婚相手側が切り取られた結婚写真について話す場面でしょうか。 理由は…2世の方々が大切にしてきたこと、葛藤してきた思いなどが凝縮されていると、撮影させていただいて、感じました。 最後、娘さんが2世の母親の過去の写真を見つける場面も、番組を見た方が、どんな印象を持つか、関心があります。 ※南さん、高石さんともに、幼い頃から現在まで、通名を使用しており、ご本人の考えを伺った上で、番組ナレーションでは通名でご紹介しました。 Q.3 苦労したところ、難しかったことは? 取材で出会った多くの在日コリアンの方たちが、自分たちのルーツをカメラの前で語ることを恐れていました。理由は「子どもや孫に迷惑がかかる」から。カメラのないところで、意気揚々と自身の苦労や頑張りを話してくれても、撮影はかたくなに拒否されました。「自分たちが黙って死んでいけば、日本国籍を取得して日本人として暮らす子どもたちは差別を受けず暮らせる」「多くの日本人の心の中にある在日コリアンへの差別の気持は今も絶対になくなっていない」生まれながら日本社会で生きてきた彼女たちが、人生の晩年に、自分のルーツすら話すことを躊躇する、日本の“多文化共生社会”の現実を突きつけられました。 もちろん、自身のルーツを明かす、明かさないは個人の選択で、強制できるものではありません。ましてや、彼女たちの人生が私たちの人権学習のためにあるわけではありません。語りにくい社会だからこそ、それぞれの生きた姿、思いを知りたい、伝えたい、という制作者としての思いは強くなる一方、実際にドキュメンタリーとして映像で記録し、伝える難しさを痛感しました。 Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? 放送を見て、在日コリアン2世の方たちのことをもっと知りたいと、聞き取りをするNPOの村木さんのもとに多くの問い合わせがあったそうです。色々な制約がある中、番組で全てを伝えきれたわけではありませんでしたが、番組をきっかけに、「もっと知りたい」と行動をおこす人が出てくれたことがとても嬉しかったです。手紙を寄せてくださった視聴者からも、「とにかく知らなければならないという発想、全てはそこから始まるのですね」という言葉を頂きました。 (番組ディレクター 酒井 有華子)
担当ディレクターから:「NHKスペシャル 認知症の第一人者が認知症になった」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? 認知症の第一人者である長谷川さんが認知症になって気づいたことが何より大切な番組のメッセージになると思い、“言葉”を伝えることにこだわってきました。その言葉をできるだけ長谷川さんの生活のなかで見つけるために定期的に通い続け、気がつくと取材期間は500日にも及んでいました。 長谷川さんが、認知症になって初めて経験したデイサービスや、日々の講演会、家の中での暮らしのちょっとしたシーンに対して、「何を感じていらっしゃったのか」を繰り返しお伺いしてきました。インタビューでは、長谷川さんも以前話された内容を忘れてしまい、どうしても同じ話になることがありましたが、何度も聞くうちに本音を語って下さったり、私たちが想像していた答えとは全く違う答えを下さることがありました。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? 町内会の講演で、長谷川先生が突然歌をうたい始めるシーンです。周囲は動揺したものの、長谷川先生には「場の空気を和ませたい」という明確な理由がありました。認知症の人と接するとき、無意識に「わかっていないのではないか」と思ってしまうことがあるかもしれませんが、「決してそういうわけではない」ということを私自身も突きつけられた気がしました。 Q.3 苦労したところ、難しかったことは? 番組は、お宅での撮影が多いこともありディレクターのデジタルカメラでの撮影になりました。編集の段階で、“長谷川さんが日常で見ている景色”の映像が足りないと編集マンから言われ、長谷川さんが暮らしている周辺や家の中で、「長谷川さんが見ているかもしれない風景」をイメージして撮影しましたが、カメラマンが撮影すればもっと印象的な映像が増えていたと思います。 Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? 放送中Twitterを見ていたのですが、想像以上の量のツイートをいただきました。自分の両親や親戚、祖父母など、様々な立場で本当に多くの方が認知症の人向き合っているということを改めて実感しました。 (番組ディレクター 加藤 弘斗)
担当ディレクター・プロデューサーから:「ETV特集 人知れず表現し続ける者たちⅢ」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? ・人間の不思議というか、わからないこと、言葉にならないことをなんとか映像と音を紡ぐことで感じてもらいたいと思い、制作しました。(ディレクター) ・「人知れず表現し続ける者たち」は2015年~年に一度目安で放送してきました。この作品はパート3となりますが、ぼくが一貫して企画書の冒頭に書き続けていることがあります。「なんだかわらないけど、なんだかすごい」それがこだわりであり、つたえたいことでもあり、なにより最初に自分が彼ら彼女らとであったときのファーストインプレッションです。(プロデューサー) Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? ・作品はもちろんですが、登場人物の表情にも注目してもらえたら、嬉しいです。笑ったり、泣いたり、居眠りしたり、その表情の動きはそれ自体が生き物のように感じます。例えば、希望の園という施設で画伯と呼ばれる川上建次さんが絵を描きたくても描けずに、泣くシーンや、長恵さんという天子を描く人が絵を描きながら寝てしまうシーンなど、です。(ディレクター) ・相手との距離感、です。 制作者ならわかってもらえると思うのですが、あの間合いやあの距離で、いわゆる自然な表情とつぶやきを撮る、録る、こと。ドキュメンタリーがやばくて面白いと感じてくれる視聴者に伝わるといいな、と思っています。(プロデューサー) Q.3 苦労したところ、難しかったことは? ・実はこの番組、8Kで制作されています。ヒューマンドキュメントには向かないとされる8K撮影ではありますが、機材に合わせるのではなく、取材相手に合わせることを心がけました。基本手持ちは厳禁(8Kでは揺れが顕著に目立つため)でしたが、手持ちでないと表現できなかったシーンもたくさんあります。例えば、最後の長さんの教会のシーンやはくのがわさんが叫びながら、壁に絵を描くシーンなど、です。(ディレクター) ・ここは現場の世界ですので。(プロデューサー) Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? ・「なんか怖かった」と言われた。「どこらへんが?」とは訊けず、ヘラヘラしてしまいました。(ディレクター) ・放送ではないですが、試写を見終えたとき、得体の知れない、えもいえぬ、気分になりました。手の内に入りきれないゴツゴツさに、でしょうか。(プロデューサー) (番組ディレクター 伊勢 朋矢) (番組プロデューサー 牧野 望)
担当ディレクターから:「ETV特集 マスクが消えた日々」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? 医療の現場にマスクが足りないということは、すでに報道されていたことですが、なぜ無いのかを検証することで、感染症への物理的な備えが万全では無かった理由を知りたいと思いました。 新型コロナが流行する以前は、誰もが容易に手に入れることができた、「マスク」がこんなにも必要になる世界が来ると誰が予想したでしょうか。最前線で頑張って下さっている医療従事者のためにも、なぜ、こうしたことが起きてしまったのかを検証し、第2波、第3波に備えることがメディアの役割の一つだと思いましたが、我々の取材活動自体が、感染を広げてしまうリスクがありました。そこで感染対策のため、取材者が極力動かないままに、PCひとつでどこまで事実を探り追求することができるのかやってみることにしました。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? 中国でのマスク買い付けに実際に奔走された方々にリモート取材したシーンです。当時マスク生産国の中国の対応が強く批判されていました。しかし現場にいた方の話を聞くと、そのころ中国に世界各国からマスクのバイヤーが押し寄せ、マスクの奪い合いともいえる激しい買い付け競争が起きていました。その中で資金力の弱い日本が「買い負け」していたというのです。全く知らない現実を知り、驚きました。 Q.3 苦労したところ、難しかったことは? オンラインでの取材は制限もありましたが、東北の方にお話を聞いた数分後に、今度は九州の方にお話をお伺いすることが出来るという、つまり物理的に取材を進めるスピードが平時ではあり得ないほど速くなることは実感しました。また、「リモート」でなら、と取材を受けて下さる方もいて、あるひとつの疑問を追っていくための取材の方法としてはあり得る方法なのではないかと思いました。 Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? 余談ですが、実家に住む母親から、私の部屋が散らかっていることについて極めて厳しい指摘がありました。片付けに行きたいと迫られましたが、感染拡大防止を理由にお断りしました。 (番組ディレクター 川 恵実) ※この番組はノミネートされましたが、NHKプラスの配信はございません。本文をクリックいただくと、「NHKオンデマンド」の有料配信をご案内しています。ご了承ください。
担当ディレクターから:「目撃にっぽん 泣き寝入りはしない」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? 制作のきっかけは、新型コロナの感染が徐々に拡大しはじめ、医療現場の切迫が報じられていた3月、以前取材でお世話になった、労働組合「ユニオンみえ」から、「すでに“コロナ切り”が始まっている」と聞きつけたことです。「雇用の現場では、何が起きているのか?“今”を記録したい」という思いに駆られ、デジカメ1台を持って現場に向かいました。 そんな中、「どうしたら面白く“見せられる”か?」「どうロケを“仕掛ければいいか”?」ということに引っ張られず、(考える余裕もなく笑)、「なぜこんなことに?」という“疑問”や、理不尽な現実への“怒り”に毎日向き合い、デジカメを回し続けたことが、“こだわり”になったと思います。 社会的に立場の弱い方々を取材したいと思い、NHKに入りましたが、これまでは、「論」を先に考えて、企画を提案していました。現場では、「仕事を失った」「家を追い出される」と、切迫した人たちが、会社や行政の窓口に助けを求めても見放されていく“瞬間”を目の当たりにして、身体感覚として、「おかしい」と刻まれていきました。それが、カメラを回す原動力でした。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? 派遣会社から解雇され、生活が窮地に追いやられる中尾カオリさんが、解雇の撤回を求めて、組合と共に会社に交渉を求めに行くシーンです。 <理由> 取材中、「生活が逼迫する中、会社とそこまで闘わなくても、行政の支援で生活をつなぎ、また仕事を探すのも一つの手ではないか」と思ったことがありました。その考えを「ユニオンみえ」の神部さんに伝えると、はっきりと言われました。「泣き寝入りすることは簡単。でも、どこかでクサビは打たなければ、同じことがずっと繰り返されていく」。この言葉を聞いて、私は、“コロナ切り”を受けた人たちを「被害者」としてではなく、“生きる権利”を求めて立ち上がる人たち、としても伝えたいと思うようになりました。 いまなお、コロナによる解雇・雇い止めの数は増え続ける中、理不尽な扱いを受けても、諦めたり、耐え忍んでいる人たちに、「声を上げていいんだ」と思えるきかっけになれば、うれしいです。 Q.3 苦労したところ、難しかったことは? 組合にほぼ毎日通わせていただき、取材先との「距離」が近かった一方で、「俯瞰」した目線を持つことがなかなか難しく、取材者として、そのバランスに悩みました。とりわけ、企業側の取材をするときは、「組合の密着」であることを相手が知った瞬間に、顔色を変えられてしまい、何度も取材拒否にあいました。“100面相”でうまく交渉したり、距離感を保てる人もいると思いますが、私にはそのスキルはまだありません・・・。とにかく「体当たり」精神で、正直に、気持ちや考えを、話し続けましたが、もっと会社側の取材にも迫りたかった・・というのが苦労した点です。 Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? 「目撃にっぽん」で放送する前、NHKスペシャルの「雇用崩壊」をテーマにした番組の中でも、一部の内容を伝えていました。その時は尺も短く、中尾カオリさんの状況について「解雇されて生活が苦しい」ことについて、ツイッター上で「なんで外国人?私たちも大変なのに」という批判の声がやや強い印象がありました。一方、「目撃にっぽん」では、彼女の家族が、日本の社会で生活していることを丁寧に描けたことで、「外国人」としてではなく「ひとりの母親」として、共感される声の方が多かったのです。ツイッターの声が“全て”ではないですが、同じ現実を伝えていても、「切り取り方」や「伝え方」によって、番組を見てくださる方々の受け取る印象がここまで変わるのか、と制作者として考えさせられました。 (番組ディレクター 中村幸代)
担当ディレクターから:「ハートネットTV Our Family~3人の子育て~」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? 決して「LGBTQ」の特別な人たちの話ではなく、誰にでも通ずる普遍的なこととして見てもらえるようにする、というのが、取材チーム全員の合意でした。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? 「命名会議」のシーン。3人の関係性とウィットに富んだ会話がこのシーンに凝縮されています。 新しい命が生まれた未来へのワクワク感と、親になる責任感と、誰もが自分がこの世に生を受けたことを重ねてしまうシーンになりました。 Q.3 苦労したところ、難しかったことは? 実は映像素材が様々でディレクターも3人がかりで、取材しています。 映像だけでも、・本人たちの自撮り ・私が当事者として友人として撮影したもの ・インタビュー映像 ・イメージ映像(NHKのアーカイブから拾ったものもたくさん)があります。また、どうしても撮影時のいわゆる「時制」が発生してしまうので、それをいかにひとつの味(ミルフィーユのような?マーブルケーキのような?)に仕上げるのか。編集さんがいちばん大変だったと思います。 Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? 同じような意見、感想がほとんどなかったこと、でしょうか。それぞれの生育環境からくる家族観や今の人間関係など、さまざまな状況を重ねて見てもらっているんだ、と感じました。 (番組ディレクター 山口美紀)
担当ディレクターから:「ノーナレ 新型コロナと音の風景」
【制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? 】 この番組は、ふだん“ドキュメント72時間”を作っているチームで制作しました。ドキュメント72時間が大切にしているのは、ニュースやTVドキュメンタリーが制作するの“じゃない方(オルタナティブな視点)”で世の中を見ることです。 今回のノーナレでも、出来るだけ番組制作者の思い込みを排除し、ロケチームが現場で発見した「音」と「風景」にこだわって“ルポルタージュ”を編んでいきました。なので、事前の構成はありません。次どこにロケに行くかは撮影をしながら考えていきました。現場のロケチームには大きな負担をかけましたが、他の番組にはない珍奇な「映像記録」になったのかなと思います。 【ぜひ見てもらいたいシーンは?】 編集を担当したディレクターとしては、番組最後の浅草のおみくじのシーンです。それまで番組は時系列をかたくなに守っているのですが、このシーンだけ唯一時系列を崩して入れさせてもらいました。崩してまで入れる?と編集室では議論になったのですが、ここだけわがままを言わしてもらったというか、硬質なルポルタージュに徹しきることにどこか作り手としてためらいを持ったというか。自分も含めて「当事者」なのに最後突き放しちゃっていいのかなぁと思って、はみ出たシーンを付け加えさせて頂きました。 【苦労したところ、難しかったことは? 】 「時系列にこだわる」ということでした。日々状況が変わっていく中で、どの現場をどのように描くのか事前に見通しを立てることは不可能。なので、今回の番組では徹底的に時系列にこだわりました。取材にあたる私たちも、未経験のウイルス禍に巻き込まれた当事者として、現場で発見し、現場で気付いたことに真摯でいること。TVドキュメンタリーは結論ありきと言われることがあります。取材者が神の目線を持って徹頭徹尾設計することで、過去さまざまな名作が産まれてきましたが、その方法論を捨て、今現在まで続く混乱の渦中を描き切り取るというミッションは非常にタフな作業でした。 【放送後の反響で印象的なことはありますか? 】 制作者でありながら私自身、放送当日まで目の前の番組がどんな番組か分かっていなかったのですが、意外とポジティブな反応が多くて驚きました笑。 時々、この番組は「豪華なフィラー番組(深夜帯によく流れるキレイな映像集)」で、制作者の意図はどこにある?という指摘をいただくこともあるのですが、意図を感じさせない“余白”が多かったことで、かえって視聴者それぞれの思いを投影できたのかな、と。未曾有のコロナ禍、皆が当事者だからこそ実現可能な視聴体験なのだと思います。 (番組ディレクター 占部稜)
担当ディレクターから:「NHKスペシャル 渡辺恒雄 戦争と政治」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? 「戦後政治の表も裏も知る最後の人物」と呼ばれる渡辺恒雄さんの証言を通じて、戦後政治がどのように形作られ、私たちに何をもたらたしたのかを考えられる番組にしたいと思いました。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? ① 戦後政治を常に第一線で見続けてきた渡辺さんならではの、語り口の「迫力」と「生々しさ」。 こうした「風圧」と「凄味」を持つ人物は、今はほとんどいないのではと思っています。 ② 主筆室で護身用に置いているという模造刀を抜こうとするが、なかなか抜けないシーン。 強面なだけではない、渡辺さんの愛嬌ある一面がふと垣間見えた瞬間でした。 ③ 保守論客のイメージが強い渡辺さんと同居する「反戦」「反軍」などのリベラルな思想。 一言で表せない思想の複雑さや重層性を感じています。 Q.3 放送後の反響で印象的なことはありますか? ツイッターでも渡辺さんの名前が上位一桁にトレンド入りするなど、ネット上でも大きな話題となったこと。多くの著名人も様々な媒体で番組内容に言及していて、改めて渡辺さんの肉声の迫力の強さを感じました。 (番組ディレクター 安井浩一郎)
担当ディレクターから:「ノーナレ みんな先に行っちゃう。」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? これまでにひきこもりの番組をハートネットTV(Eテレの福祉番組)でいくつか制作し、ひきこもりの子と親の会話は普通に暮らしていると起こることが難しいことを感じていました。第三者が介入することで初めて、説得や正論、言い争いから抜け出した「対話」になることがあることを学び、実際に現場で感じる場面もありました。我々は介入の専門家ではないし、当然この対談は”治療”を目指したものではありませんでした。でもまず本人と「対話」をしようとすること、それを試すこと、そこで起きることを伝えること、は誰かのヒントになるかもしれないと思いました。対話の舞台は対面に置いた椅子2つと、少し離れたところに水差しを置く机のみにして極力他のものを排し、1対1の対話に集中できるよう、こだわって撮影をしました。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは?(理由もお願いします) お父さんと対面して話すシーンです。理由は、お父さん、学さん、2人の本音が最もよく表れ、伝い合えたシーンとなったと感じたからです。 Q.3 苦労したところ、難しかったことは? 「ひきこもり」という言葉だけで「人間失格」と叩かれるのはこれまでにもよく目にしてきました。この層に番組を届けるのはとても難しいです。本人の葛藤、試行錯誤の姿を丁寧に描くこと。そしてお父さんと学さんのどちらの気持ちにも背景があり、時代があり、それ故の理由があったことを伝えられるよう心を砕いたつもりです。 Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? お父さんの年代の人、学さんの年代の人、ひきこもりの当事者、ひきこもりの親の立場、それぞれに感じ方が違ったことです。お父さんの年代の方からはその時代の社会の要請、「普通」を自分も強いられてきたから息子にも求めてしまう気持ちが分かるという声が印象的でした。 (番組ディレクター 三輪祥子)
担当ディレクターから:「ETV特集 “ワケあり”りんご」
Q.1 制作するうえで、どんなことにこだわりましたか? とにかく「分かりにくさを排除しない」ことにこだわりました。制作チームは、カメラマンも音声マンも編集マンも、これまで何本、何十本とNHKでドキュメンタリー制作に携わってきたベテランぞろい。そんなチームだからこそ、あえて従来の話法からの脱却を目指し、“NHKスタンダード”とは異なる演出に挑戦したいと伝えました。 NHKにおけるこれまでのドキュメンタリー制作の現場で、私たちが意識的・無意識的に選択してきたオーソドックスな取材手法や映像表現を自己検証し、自らをしばる“足かせ”としました(映画をはじめ他の映像メディアで活動している方々にとっては特段珍しい演出ではないかもしれませんが・・・)。 テーマとしても、ハンセン病をめぐる差別の歴史、ネグレクト、養子縁組、血のつながらない家族、発達障害、コロナ禍における子育て・・・などなど、これまでNHKが個別に取り上げてきた様々な要素がひとつの番組の中にごちゃごちゃと“同居”していますが、番組上は極力説明を廃し、あえて「○○問題」とラベルを貼らずに、ご覧いただいた方がそれぞれの気分で自由に受け止めて何かを考えるキッカケにしてもらえるような形を目指しました。 Q.2 ぜひ見てもらいたいシーンは? 運動会を見に行くことをためらう祖母・きみ江さんを気遣う、レオン君のインタビューです。 母・真由美さんに、レオン君にも個別にインタビューをお願いしたいと申し出ると、「やれるもんならやってみてください(笑)」と笑顔で返されました。「落ち着きのない子なので、私が下の子を連れて買い物に出かける間に、おもちゃでも渡して一緒に遊びながら話を聞いてみてください。たぶん真面目にお話するのは難しいですよ・・・」 これまでも子どものインタビューは何度か経験がありますが、ほとんどうまくいった試しがありません。なので今回も、インタビューなどと気張らずに、なんとなくカメラを回しながら、雰囲気の中でちょっと気持ちを話してもらえたらいいかな、くらいに考えていました。ところが、実際に真由美さんたちが外出し、ひとり部屋に取り残されたレオン君は堂々としたものでした。 「ちょっとカメラの前でお話聞いてもいいかな?」と声をかけると、「インタビューでしょ?いいよ」と言って、なんと、カメラの前に正座(!)したのです。思わず私も座り直し、「ちゃんと聞かねば」と、レオン君とまっすぐ向き合いました。「きみ江さんがね、運動会見に行きたいんだけど、ちょっと心配なこともあるみたいでね・・・」と切り出すと、彼は自分の言葉できっぱりと言い放ちました。 「・・・怒る」。 Q.3 苦労したところ、難しかったことは? 今回の撮影中に、物語を大きく展開させるような劇的な出来事が起こったわけではないので、これで1本のドキュメンタリーを構成できるものなのか、常に不安がありました。運動会というささやかなイベントがありましたが、それ以外は、真由美さんたち家族にとっては“いつも通り”の日常が続いているだけです。私たちにできることは、食事の準備や、洗濯物を干す様子を淡々と撮らせていただくだけ。そして、それぞれの登場人物が語ってくれる、自らの生い立ちや心境にひたすら耳を傾けるだけ。こうして記録された「事情説明」を重ねていくだけでドキュメンタリーと呼べるものになりうるのか? はたしてひとつの家族の形を描いたことになるのか? しかしあまり難しく考えずに、これはこれでひとつの「実験」と捉え、あるところから完全に割り切りって撮影を続けました。 Q.4 放送後の反響で印象的なことはありますか? 「台風被害に遭ったりんご農家の話かと思ったら、家族の物語で驚いた」とか、「ハンセン病がテーマなのかと思いきや、次々といろんな要素が入ってきて考えさせられた」など、反響としては意図したところが届いた手応えがあり、ホッとしました。 ひとつ意外だったのは、放送後、ある大学院のゼミに招かれて番組についてお話をしに行った際、中国からの留学生だという女子学生から、「てっきり女性ディレクターが作った番組だと思ってました」と言われたこと。自分でも理由は分かりませんが、なぜだか少し嬉しかったです。 (番組ディレクター 梅内庸平)
紹介された中で、NHKプラスで配信対象の番組を知りたいです。
▼BS1「あのとき、タクシーに乗って ~新型コロナ・緊急事態宣言の東京~」 放送日:2020年12月25日(金)午前2:40~3:29(総合) ※木曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月1日(金)午前3:29まで ▼Zの選択「#恋愛って必要ですか?」 放送日:2020年12月25日(金)午前3:30~4:00(総合) ※木曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月1日(金)午前4:00まで ▼ETV特集「人知れず表現し続ける者たちⅢ」 放送日:2020年12月26日(土)午前1:05~2:04(Eテレ)※金曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月2日(土)午前5:59まで ▼ETV特集「7人の小さき探究者~変わりゆく世界の真ん中で~」 放送日:2020年12月27日(日)午前1:55~2:54(総合) ※土曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月3日(日)午前2:54まで ▼目撃!にっぽん「負けてたまるか~叔父と甥 港町の震災9年~」 放送日:2020年12月27日(日)午前2:55~3:29(総合)※土曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月3日(日)午前3:29まで ▼ETV特集「“ワケあり”りんご」 放送日:2020年12月28日(月)午前0:45~1:44(Eテレ)※日曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月4日(月)午前1:44まで ▼目撃!にっぽん「泣き寝入りはしない~密着“コロナ切り”との闘い~」 放送日:2020年12月28日(月)午前3:11~3:45(総合) ※日曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月4日(月)午前3:45まで ▼NHKスペシャル「認知症の第一人者が認知症になった」 放送日:2020年12月28日(月)午前5:10~5:59(総合) NHKプラス配信期限:2021年1月4日(月)午前5:59まで ▼ノーナレ 「新型コロナと音の風景」 放送日:2020年12月28日(月)午前6:10~6:39(総合) NHKプラス配信期限:2021年1月4日(月)午前6:39まで ▼ハートネットTV「Our Family ~3人の子育て~」(前編・後編) 放送日:2020年12月29日(火)午前0:55~1:53(Eテレ) ※月曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月5日(火)午前1:53まで ▼NHKスペシャル「渡辺恒雄 戦争と政治~戦後日本の自画像~」 放送日:2020年12月29日(火)午前2:00~3:13(総合) ※月曜深夜 NHKプラス配信期限:2021年1月5日(火)午前3:13まで ▼NHKスペシャル「ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる~」 放送日:2020年12月29日(火)午前5:10~5:59(総合) NHKプラス配信期限:2021年1月5日(火)午前5:59まで ▼ノーナレ「校長は反逆児」 放送日:2020年12月29日(火)午後3:05~3:35(総合) NHKプラス配信期限:2021年1月5日(火)午後3:35まで ※「このドキュメンタリーがヤバい!2020」放送直後の放送です