“高校生は選挙をどう考える?”~若手記者が“ホンネ”を聞きました!~

NHK長野放送局 大谷紘毅
2022年7月28日 午前9:57 公開

NHKで記者2年目の大谷と申します。大学では主に政治学を専攻し、最近は政治家のSNSのチェックを日課にしています。そんな選挙好きの私、今月の参議院選挙も若干興奮気味に取材を進めました。しかし同世代の友人と話をしても、ほとんどが無関心…。

「どうして若い人は選挙に関心がないのだろう」

そんな疑問を解決すべく、世代の近い高校生たちに選挙についての“ホンネ”を聞いてきました。

(大谷紘毅)

あまりに低い若者投票率

高校生に話を聞く前に、若者の投票率を調べてみましたが、その結果にショックを受けました。去年の衆議院選挙の投票率は、▼18、19歳が42.62%、▼20代前半は35.44%。60代後半から70代後半までに比べて、半分程度しかありませんでした。

「シルバー民主主義」ということばが、改めて脳裏をよぎりました。

白馬高校の生徒との出会い

若者のあまりの投票率の低さに驚きつつ話を聞きに向かったのは白馬村にある白馬高校です。この高校で独自科目「時事問題」を選択している3年生7人が、選挙や政治について感じている“ホンネ”を語ってくれました。

なんで投票に行かないの?

そもそも、なぜ若者が投票に行かないのか。いきなり“直球”の質問をぶつけてみました。

「自分が投票しなくても選挙の結果はあまり変わらないと思う人は手を挙げて下さい」(大谷記者)

なんと生徒7人のうち6人が手を挙げました。うすうすは予想していましたが、投票へ行っても結果は変わらない思っている人の何と多いことか。そこで、なぜ投票しても意味がないと感じるのか聞いてみました。

(西村桔坪さん)    

(北村海翔さん)

一方で、投票に行くのは意味があるという意見も聞かれました。

(宮田琉翔さん)

(村越郁也さん)

高校生たちは自分の1票で大きく政治が変わることはないと感じつつも、政治に対する意思表示として投票に行くことは重要だと考えているようです。

どうすれば若者は投票へ?

では、どうすれば若者が投票に行くようになるのか。高校生たちに意見を出し合ってもらいました。

(西村桔坪さん) 

(村越郁也さん)

(宮田琉翔さん)

(西條ひとみさん)

高校生たちの目線でさまざまな意見が出されました。

政策や公約を分かりやすいことばで説明すること、さらに若者が多く利用するSNSを使って発信していくことが若者の投票率を上げるコツかもしれません。

政策を発表しよう

次に、若者にとって選挙に行こうと思える政策はどんなものなのか。みんなの前で発表してもらいました。

最初に発表してくれたのは「子育てしやすい環境作り」の実現を掲げてくれた生徒です。

「義務教育なら完全にお金がかからないようにして欲しい。義務教育なのに給食や制服が無償でないことに矛盾を感じる」(宮田琉翔さん)

宮田さんは「義務」教育と銘打つなら、誰もがタダで受けられるようにすべきで、お金がかかることはおかしいと疑問を投げかけました。一方、義務教育だけでなく、「大学の無償化」の必要性を訴える意見も飛び出しました。

「私は大学の無償化を最も訴えたい。今、高校で奨学金の話が進んでいるが働き始めてから返すのはきついと思う」(村越郁也さん)

(大谷記者)

(北村海翔さん)

また、かつて保育士を目指していたという生徒からは、保育所に子どもを預けたいのに預けられない「待機児童」の問題について、こんな意見も聞かれました。

「保育所をたくさん作っていくべきだと思う。ただ、建物だけがあっても意味がなくて、保育士の確保も必要だと感じる。私は保育士になろうと思ったこともあったけど年収が低くてなるのを諦めた。年収を高くして、保育士が報われるようになれば保育士のなり手も増えると思う」(西條ひとみさん)

これに対し、生徒からは次のような意見が出ました。

(村越郁也さん)

当たり前ですが、高校生も、大学進学や就職、さらに結婚・子育てなど将来のことで大いに考えたり悩んだりしています。そうした社会制度や暮らしのあり方1つ1つに政治が深く関わっています。政治に言いたいこと、言うべきことは若者にもたくさんあるのです。

対談を終えて

およそ1時間にわたってみんなで話しあったあと、生徒に感想を聞いてみました。

「実際、投票とか選挙とか政治についてみんなで語る機会がなかったので、自分とは違った視点や意見を聞けて勉強になった」(宮田琉翔さん)

「最初は選挙に行って自分の1票が入ったところで結果は変わらないと思ったが、自分の考えを政治家に伝えてみるいい機会だと思った」(西條ひとみさん)    

【取材後記】

「候補者が掲げる政策が高齢者向けのものばかりで投票する意味を感じられない。若者が投票に行きたいと思えるような政策を候補者がもっと打ち出すべき」

これは、長野県立大学のある学生が私に語ったことばです。今回高校生に取材してみても、全く政治に無関心な生徒はおらず、大学の無償化など多くの実現して欲しい政策を語ってくれました。

今の若者の投票率が低いのは、若者が政治への『無力感』を抱いていることもあると思いますが、政治家に若者向けの政策を実現しようという気持ちがないことも原因だと感じます。では、若者向けの政策を掲げる候補者を増やすには何が必要か。そういう政策が「票になる」ことを示す、つまり、若者の投票率を上げることが最も効果的だと思います。鶏と卵、どっちが先かという話にもなりますが、現状を少しでも変えたいなら、積極的に投票に行って若者の政治パワーを見せつける。そのことから始めましょう。