ヤリイカがピンチ!?その背景は・・

NHK
2022年5月31日 午後1:30 公開

『追跡!バリサーチ』。今回のテーマはこちらの「イカ」。

ケンサキイカという種類で、県内ではヤリイカとも呼ばれ、呼子の名物としても知られています。

このヤリイカに異変が起きているということでバリサーチしました。

宗像市の道の駅

まず訪ねたのは、海産物が豊富な宗像市の道の駅。

多くの人のお目当てが、旬を迎えている「ヤリイカ」。この日も店頭に並びました。

しかし、話を聞いてみると、以前とは様子が違うというのです。

この日並んだのは150パック。3年前には1200パックが並ぶ日もあったといいます。

実に1割近くまで入荷が減っていました。

価格にも影響が。大きめのサイズで2500円と、3年前に比べ400円から500円値上がりしているといいます。

道の駅むなかた 営業水産・加工課 伊藤美幸係長

道の駅むなかた 営業水産・加工課 伊藤美幸係長
「ここ数年、イカの入荷が減っている。お客様もホームページでヤリイカが入っていたら早めに来てくださるが、1時間で完売してしまいます。
前みたいにたくさんの水揚げがあって、漁師さんたちと『きょうは1200(パック)売るよ』とか『1000売るよ』とかいったやりとりが出来る日を期待をしたい」。

漁場の現場はどうなっているのか?
イカの水揚げが多い、宗像市の鐘崎漁港を訪ねました。

この日、漁船が帰ってきたのは午後5時。
水揚げは毎日あり、以前は昼過ぎに帰ってきていましたが、
港に戻る時間が5時間も遅くなっていました。

その理由は、従来の漁場の沿岸部だけでは漁獲量が限られるため、
より北上して遠くまで行かなければならないからなんです。
しかし、そこまでしても漁獲量は減っているといいます。

地元の漁師さん

地元の漁師さん
  「きょう(の漁獲量)は半分くらいやね、いつもの。今は減ったよね。
 10月11月のブドウイカ(ケンサキイカ)がとれなくなったからね。3年前くらいから。
(影響は)大きいですよ、うちらも大きいし業者さん売る人もやし」。  

ヤリイカの漁獲量

福岡県のまとめによりますと、ヤリイカの漁獲量はここ20年で5分の1にまで減少。

地元の漁協の組合長も焦りを感じていました。

宗像漁業協同組合 桑村勝士代表理事組合長

宗像漁業協同組合 桑村勝士代表理事組合長
  「今までやってきた経験というのがなかなかその通りに生かしにくい。
自然に関係しますからもともと不安定ですけど、それがより取れることが予測しにくくなっている状況ですので経営的には非常に心配なところです」。  

日本周辺の海で何が起きているのか。
イカの研究をしている九州大学大学院の山口忠則さんは、海の潮の流れ、「海流」のデータをもとに、イカの移動がどう変化しているか分析しています。

山口さんによりますと、ヤリイカは台湾の北でふ化したあと、海流にのって北上してきます。

しかし、温暖化の影響でこの潮の流れが強くなり、その度合いも変化するため、イカの移動が大きく変化しているといいます。

この3枚の画像は去年までの3年間で日本海でイカがどう移動したかを分析したものです。

イカを表す赤い点の移動する先が、年によってばらばらであるのがわかります。

山口さんは温暖化の影響で漁場にばらつきが出ていて、その結果、福岡での漁獲量の減少につながっているとみています。  

「2020年の夏に青森県の日本海側の定置網で大量の『ケンサキイカ』が取れるということがありました。
近年では海流が変化すること、毎年変化することによって漁場探索自体が難しくなっている」。

さらに、異変はイカ以外にも起きていることが、取材を続けると見えてきました。

熱帯系の魚、クマノミです。

熱帯系の魚、クマノミです。

唐津市沖の玄界灘で撮影されました。

さらに、産卵した様子を撮影した写真も、現地のダイバーが寄せてくれました。

クマノミはこれまで夏場は潮の流れに乗って玄界灘でも見られましたが、

冬になると死んでいました。

しかし、卵があるということは冬を含めて年間を通してこの海域に生息していることを示し、それだけ海水温が高まっていることのあらわれだとみられています。

また取材で、河川でも影響が懸念されることがわかってきました。

福岡工業大学の河川の生態系に詳しい乾隆帝教授です。

福岡工業大学の河川の生態系に詳しい乾隆帝教授です。

河川の温暖化は、海に比べるとまだ研究が進んでいませんが、乾さんは水中の魚のDNAを抽出してその影響を調べる「環境DNA」を使って、川の生態系について研究しています。

山口市の川で水温が低い渓流域に生息するアマゴの分布を調べてみました。

その結果がこちらです。

赤い色がアマゴの生息域です。水温が冷たい上流域に多く生息していることがわかります。

仮に1度上昇するとその範囲はなんと半減。

そして水温が3度上がった場合には、赤い生息範囲が6%まで減り、消失の可能性すらあるという分析結果が出ています。

乾教授は、河川の水温も上昇傾向にあり、私たちがまだ予想できていない身近な生き物への影響が生じかねないと指摘しています。

福岡工業大学社会環境学部 乾隆帝教授

福岡工業大学社会環境学部 乾隆帝教授
「温暖化のスピードをできるだけ緩やかにするというのは、皆さん共通認識として持っていると思いますけれども、魚だったら上流に住んでいる魚の影響が出てくるというのは予想できますが、魚以外の生物、あまり知られていない生き物、水が冷たくないとダメとかこのぐらいの水温帯じゃないとダメとか、そういう生き物が知られていない間にいなくなっていることは十分に考えられるかなと思います」。

今回、暮らしに身近な「イカ」をめぐる変化をもとに取材を始めると、「地球温暖化」の具体的な影響が見えてきました。

このほかにも、「積雪の量が減少した」「豪雨災害が多発した」など、身近に感じる影響が多くあると思います。今後、温暖化が私たちの暮らしにどのような影響を及ぼし始めているのか、今後も追跡取材していきます。

温暖化の影響ではないかと気になることがあれば、ぜひご意見をお寄せください。

記者・宮本 陸也