どうする?忘年会2021 2021年12月13日

NHK福岡放送局ディレクター 清田翔太郎
2022年4月4日 午前11:03 公開

12/10(金)放送のバリサーチを担当したディレクターの清田です。

年の瀬を迎えた福岡の街。
道行く人に、“今年は忘年会どうしますか?”と聞いたところ・・・。  

「今年はやらないですね。会社的に(30代男性)」 「飲みたいなって思いはあるけど、感染対策しっかりしないといけない気持ちもあるし、半々な部分(20代女性)」 「いろんな人と飲みたいので、あったら嬉しかったかな(20代男性)」 さらに・・。 「今、若い人が飲み会を好まない人多いから、私もそっち側の人なので、(しなくても)大丈夫かなと(40代男性)」  

比較的感染状況が落ち着いているようにみえますが、コロナ前にはほど遠いように感じます。

実際、調査会社によると、忘年会や新年会を「やらない」と答えた企業は全国で70.47%、福岡では62.96%とコロナへの不安がまだまだ根強いとみられます。

一方、「若い人は飲み会を好まない」との声もありましたが、コミュニケーション不足に悩む企業も出てきています。

福岡市のwebサービス会社につとめる五十川慈(いそがわ・めぐみ)さん。

夫の輝夫(てるお)さんも同じ会社で、コロナ対策のため、去年2月から在宅での勤務が続いています。福岡市の本社で働く70人の同僚とも、まったく顔を合わせていないといいます。

でも今、ちょっと驚く忘年会を企画しているんです。
それが、半年前からランチタイムで活用しているという“あるもの” ---  

VRシステムです・・・!

このゴーグルをつけると---、

ネット上にある仮想空間で、ほかの同僚たちとコミュニケーションがとれるんです。

見えているのは「アバター」と呼ばれる、ネット上のキャラクター。人の手の動きや、表情なども反映しています。仮想空間上で近くにいる人の声が大きくなるなど、距離感が感じられたり、アバターの見た目も似せて設定できるため、本人とその場でしゃべっているかのような感覚です。

また、ゴーグルについた外部カメラを使って、本人のみ、リアルの手元も同時に見えるため、慣れれば食事もスムーズに行えるといいます。

五十川さんの会社では、それぞれが食べているものは相手には見えないVRの特性を活かして、「今食べているものはなに?」といったゲームが流行しています。

一見、たわいない話であっても、VRで体験すると新鮮に感じることも多く、若手たちからは大好評。コミュニケーションの広がりを実感しているといいます。

五十川さんは、「本当普通にその辺で話している感じ。チームが楽しく働くことができたり、雑談しやすいような環境を作ることが、結果として仕事のパフォーマンスにつながる」と話していました。

同じ形で、ぜひ、忘年会でお酒を飲みながらやろうと声があがっているようです。

そもそも忘年会の本来の目的は何なのか・・・。

上智大学言語教育センターの清水崇文教授に聞いたところ、一番大切にしなければならないのは “雑談”だということです。

そもそも雑談とは“自己開示をしあうこと”で、互いに興味のあることや、もっている知識を知ることで、“共感する機会が増える”ことにつながります。職場の人間同士、共感する機会が増えれば、上司や同僚に報告しやすかったり、アドバイスを受けやすい環境が築かれ、自分が所属している組織の同僚に仲間意識が芽生えて、社員ひとりひとりの生産性向上につながると指摘しています。

さて、一方で忘年会をどうするか?というテーマは飲食店にとって死活問題でもあります。
福岡のグルメライターであり、市の感染対策アドバイザーもつとめる栗田真二郎さんに話を聞きました。

栗田さんによると、いま飲食店が直面しているのは、ことし夏の感染拡大による、思わぬ影響、“人材不足”です。

比較的感染状況が落ち着いた年末。せっかくお客さんが出てきたのにスタッフがいない。夏場の感染拡大時、お客さんを笑顔にしてサービスするのが楽しくて勤めていたものの、休業が相次ぎ、他のサービスへ移っていったといいます。

さらに現在、お客さんがお店にたくさん入っているように見えても、実際は感染対策で席数を2分の1や3分の1に減らしているところが多いそうです。

苦境の最中ではありますが、栗田さんは「ここからが勝負。自分たちのブランド力を高めていって、お客さんとファン、なおかつスタッフを確保していく」ことが重要だと指摘しました。

栗田さんの紹介で、中央区にある、こちらの魚料理を売りにした居酒屋を訪ねました。このお店では“ファンを増やす”ための取り組みに力を入れています。

突如、音楽が鳴り響き、店にやってきたのは--

プロのダンサーたち!

このお店でしか味わえない独自の演出として力を入れ始めました。
このほか、お客さんの目の前で卵焼きを作ったりと、お客さんを楽しませることを大切にしています。
パフォーマンスを見たお客さんは、「ダンサー来るのは知らなかった。新鮮ですね」と微笑んでいました。  

お客さんを楽しませることで、もう一つ波及効果があります。
どの演出も思わず写真を撮ってしまうようなものばかり。
SNSで共有してもらうことも、狙いです。  

従業員もSNS活用に力を入れています。名物メニューの紹介や、新しいスタッフの募集など、創意工夫をこらして発信しています。

店長の行武知美さんは、「お客さんに楽しんでいただくことを一番に考えていて、動画見てきましたという方も少しずつ増えてきている」と手応えを感じていました。

グルメライターの栗田さんは、この居酒屋をはじめ、コロナ禍で多くの飲食店でイノベーションが起きていると指摘しています。
そのうえで、「どんな店が選ばれるのか。原点である人を大切にすること」が重要だと言います。

取材を終えて、栗田さんの仰ったように、どれだけお客さんひとりひとりを大切にできるか・・・、そして一緒にやっていく仲間をどれくらい作れるか・・・苦境の中でも前を向く活力を感じました。これからも、皆さんが気になることや困っていること、調べていきたいと思っています。

最後に、この場をお借りして、撮影にご協力いただいた皆さまにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。