室見川の川底が上がっている!? 2021年10月18日

NHK福岡放送局記者 野依環介
2022年4月4日 午前11:03 公開

今回は視聴者の方から届いたお便りをもとに取材しました。

「川底が上がっている」とはどういうことなのか。

室見川といえば、週末の散策などで多くの人の憩いの場となっています。
その川で、いったい何が。取材班は早速、住宅地に近い川の下流に向かいました。  

この日も釣りやウォーキングを楽しむ人たちが多くいて、いつもと変わらないように見えましたが、川に近づいてみると・・・。  

確かに川底が上がり、水面の上に出ているところがあちこちにありました。

近くに住む人に話を聞いてみました。

「砂がとにかく多くなりました」。
「またかというくらいしょっちゅう砂がたまっているよ、ここは」。  

室見川で何が起きているのか、その原因を探るため、川の治水について研究している九州大学工科研究院の林博徳准教授を訪ねました。  

林准教授は川底の上昇は、川の上流から流れてきた土砂がたまったものだといいます。

「地質的な特徴としては、砂分が多い地質になるので
昔からすごくたくさん砂が出てくる川であることは間違いない」。  

その上で、川に砂がたまる現象は、決して特別なことではなく、上流から流れてくる土砂の量も以前と特に変わっていないと指摘しました。  

「自然現象ですね。主に川の勾配で決まっていますけど
大雨の時とかあるいはふだんの流れで下流の方に輸送されて
それが河床に堆積するという仕組みは自然の現象ですので、
室見川でももちろん起こっていますし、
ほかの川でも同じように起こっている現象になると思います」。  

自然現象とはいえこのまま放っておいて大丈夫なのでしょうか。

室見川を管理する福岡県を取材すると、川底の砂を取り除く工事を行っていました。

工事前と工事後の写真を比較すると、川の中に土砂がたまり植物が生い茂っていた場所が実は川だったことがわかります。  

この写真は3年前の工事で、4か月にわたって1.6キロの区間で土砂を取り除いたということです。
県はこうした工事を、場所を変えて毎年行っていて、ことしも今月13日から始まっています。  

県も対策を取り始めているにもかかわらず、それでも住民の中から川の土砂に不安の声が出ているのはなぜなのでしょうか。  

さらに取材を進めると、ある変化に気づいている専門家がいました。

室見川の生態系を研究している福岡大学の伊豫岡宏樹助教です。
地元の人向けに環境教室を開いていますが、ここ最近、住民からよく聞かれる質問があるといいます。  

「『うちは大丈夫なんだろうか』とか、
『この間の雨ですごく室見川の水位が上がっていたんだけど大丈夫でしょうか』とか
そういう質問です。
九州の色んなところで災害なんかが起きていて、
『自分の家の近くの川は大丈夫だろうか』という気持ちが
多くの方に芽生えているというか、
そういう目で川を見る人が増えたような気がします」。  

室見川の近くに住む毛利博義さんも、その1人です。
子どもの頃から慣れ親しんだ室見川の、3年前の光景が忘れられないといいます。  

毛利さんは平成30年7月の西日本豪雨のことが脳裏に焼き付いているといいます。

当時は県内も豪雨に見舞われ、室見川ははん濫危険水位を超えました。

毛利さんは次のように振り返ります。

「あの時が一番、怖いという感じですよね。
ただその後も毎年1回程度はそれに近いような状況を
多くの住民が目の当たりにしていて、
非常に心配するという状況は増えましたね。特にここ数年はそうですね」。  

この経験を踏まえて、毛利さんたちは住民どうしで防災情報を交換するグループを作成しました。  

大雨が予想される時は、室見川の状況を撮影してお互いに注意を呼びかけるようにしたのです。  

毛利さんはこうした活動をさらに進めていきたいと考えています。

「災害が起きそうな時は見るべきポイントはあるんですよね。
そこがどうなっているか情報を集約して、
LINEなどでみなさんに告知できる仕組みは早急に作りたいですよね」。  

川底にたまる砂に対して不安の声が上がったのは、記録的な豪雨が続く中で住民の防災意識が高まったことが背景にありました。

福岡大学の伊豫岡助教は、こうした住民の意識の変化が重要だと指摘します。

「河川管理者の方とかは
そういう大きな雨が降った時はすごく心配して川を見ていると思いますけど
地域の人たちもそういう気持ちが身近になったというか、
身近に感じられるようになったということがあるんじゃないかと思います。
身近な防災について自分たちで考え始めるのはすごく大事なことだと思います」。  

こうした中、行政も防災面で新たな意識を持ち始めています。

こちらは県内の主な河川を示したものです。

青色で示したものは国が管理する一級河川、赤色で示したものは県が管理する二級級河川です。  

今回、取材した室見川のように福岡県では、人口が多い福岡市と北九州市の近辺を二級河川が流れていることがわかります。  

このため県では二級河川の防災対策を強化しようと動き出しています。

福岡県の担当者は次のように話しています。

「想像さえしない大規模で甚大な被害を及ぼす災害が全国各地で
頻発するようになってきていることが1つの転換の起点になっています。
実は二級河川の流域の方が、人口が多いのが福岡県の特徴かなと思っています。
ということは、県が管理する二級河川も
国が管理する一級河川と同等の対策をとることが
重要ではないかなと考えているところです」。  

今回の取材を通して感じたのは、ここ数年、記録的な豪雨が続く中で、多くの人が災害への危機感を募らせているという現実でした。  

背景にあるのは「気候変動」という待ったなしの課題です。

この課題を一歩でも改善に導けるよう取材を続けなくてはならないと強く思いました。

バリサーチでは今後も気候変動や防災対策について取り上げていきます。
お気づきのことがあればぜひご意見をお寄せください。  

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