エスカレーター「2列乗り」実現への道 ―見えてきた壁、交通局が目をつけたのは

NHK福岡放送局・エスカレーター取材班
2022年4月4日 午前11:03 公開

【この記事は2022年3月25日に公開しました】

エスカレーター2列乗りの実現を、福岡で目指す今テーマ。

これまでの放送では、歩行中に事故が発生していることや、「空いた右側にしか立てない人がいる」ということ、そしてどうすれば「2列乗り」が実現するのか、視聴者の皆さんに意見やアイデアを募集しました。

そして前回の放送では、集まったアイデアを今後の取り組みの参考にしてもらおうと、福岡市交通局に持って行きました。放送後、「早速検討進んでいる」と聞いた私たちは、交通局に向かいました。

【検討進む交通局】

2月下旬、交通局では次なる取り組みについての検討が進んでいました。

これまでにない取り組みを、どうすれば効果的に広められるか、意見が交わされるのを見ていると、その本気度が伝わってきました。

【立ちはだかる壁】

一方で、実際に何かを始めようとするときには、壁が立ちはだかります。今回も例外ではありませんでした。

例えば、視聴者のアイデアで最も多かった「ステップに足形をプリントする」というもの。コロナ禍で足形になじみがあることや、実際に立ち止まる人が増えたというデータもあり、私たちも期待を込めていました。

しかし、調べてみるとこのプリントには多額の費用を要することが分かりました。
その理由を、今回私たちは全国でエスカレーターの装飾などを手掛ける企業に話を聞きました。すると・・・  

  1. 終電後から始発までの短時間で仕上げなければならない
  2. 機械の故障を避ける加工をしなければならない

といったことから特殊な技術が必要だという回答が返ってきました。

また、ステップの表面はこのような凹凸になっていて滑り止め加工が施されているため、単純な塗装も難しいといいます。

こうした理由から、この企業では機械に干渉しないステップの溝の部分にだけフィルムを貼り付けるという特殊な技術を用いています。  

(アサイマーキング・浅井大輔社長)
「塗装だと大工事になってしまうし、非常に短時間しか止まっている時間がない。その時間できれいに仕上げないといけない。エスカレーターのメーカーや機種によってピッチ(幅)や凹凸の深さが違う。そういったノウハウをわかった上でフィルムの材料を作って、専用の道具で貼っていく」。  

【踏み出す第一歩】

「足形のプリント」については限られた予算で費用をまかなうのは難しいという
判断に至った交通局ですが、決して諦めたわけではありません。  

「2列乗りマナーを実現させるために何としても行動を起こしたい」と知恵を絞らせた結果、目をつけたのがエスカレーターの手すりの横の部分です。ここにPOPを置き、呼びかけることにしました。また、その呼びかけ内容を駅員から募集し、それをもとにデザインを考えることにしたのです。

【駅員の思い詰まったアイデア】

先日、駅員から集まったアイデアをもとにデザインを検討する交通局を取材しました。

寄せられたアイデアは1週間あまりで30以上。その一つ一つには一番近くでエスカレーターの利用実態を目にしている駅員たちの思いが詰まっていました。

ある駅員は、
「エスカレーターは立ち止まって。ゆとりのある1日を」とストレートなメッセージを。  

別の駅員は、SNS上でのやりとりからヒントを得て、イラスト付きのアイデアを考案。

このアイデアについては議論も盛り上がりました。

(職員)
「一つずつ交互に出せば会話しているように見えるじゃないですか。
うまいこと4つのPOPが連続性というか、その順番で読んでくれると思う」。
「どうせやるならスマホっぽくやりたいですね」。  

また今回、メッセージを寄せた1人に話を聞くことができました。

福岡市地下鉄に30年以上勤務する松本さんです。
駅での業務に携わる中で、エスカレーターを歩くことへの危機感を感じていました。  

(松本さん)
「天神南駅でも朝のラッシュ時は駆け上がる人が多い。実際に転倒事故も起きているので 歩行での利用はよくないと思います」  

その松本さんが寄せたアイデアです。前の人に習うというペンギンの習性を意識し、
イラストを使ったデザインに仕上げました。一番初めに右側に立つ人が現れることで、2列乗りが実現してほしいという願いを込めました。  

寄せられた駅員たちのメッセージに、担当者も手応えを感じています。

福岡市交通局営業課・宮﨑課長

(福岡市交通局営業課・宮﨑課長)。
「現場が日々感じていることが言葉になって出てきているものもありましたし、
効果が出てくることを期待しています」。  

【アンケートにご協力を】

「福岡の街からマナーを変えたい」。

その一心でNHK福岡放送局ではこのテーマについて取材を進めていますが、駅での取材や日常生活の中で、片側開けマナーの根深さを実感しています。  

「分かっているけれど、右側に立つ勇気が持てない」
「みんな左側に立っているのに、右側に立つ理由が分からない」  
その背景には様々な理由があると思います。

そこで今回、エスカレーター利用に関するアンケートを実施し、改めてその理由を探ります。
それを知った上で、これからの取材や展開に生かしていきたいと考えています。  

ご家族や友人などにも広めていただくなど、
多くの方のご協力をよろしくお願いいたします。  

アンケートはこちら

記者・福原健
ディレクター・斉藤仁美