もうすぐ梅雨 避難を考える

福岡放送局 ディレクター 後藤紀美香
2022年6月8日 午後0:33 公開

6/3(金)放送のバリサーチを担当したディレクターの後藤です。

梅雨入りも近づいてきました。水害のときの「避難」についてお伝えします。

この山間に住んでいるAさん、高齢で、足も不自由なため、動きも制限される中、大雨が降って避難しなければいけなくなったら、どうしますか?自分ごととして考えてみてください。

1人で身動きもできないとなると助けがないと難しいですよね。

そうしたとき、例えば、近所に住むBさんが、迎えにきてくれて、この避難所まで、安全なルートを通って、避難所まで行くて手伝いをしてくれる。事前にこうした計画があったらどうでしょうか?

このような計画は、高齢者や障害者、妊婦など、自力での避難が難しい、いわゆる災害弱者のための『個別避難計画』というもの。

去年、国は法律を改正し、自治体はこの計画を作るよう努めなければならない、と定めました。

でもひとりひとりに詳細な避難計画を作るのは大変なのでは?ということで、いったいどれくらい進んでいるのか、福岡の実態を取材しました。

わたしたちは県内全60市町村に個別避難計画の進捗状況を確認しました。

すると、およそ8割の自治体が「思うように進んでいない」などと答えたのです。

  • 助けに行く人や避難ルートを決めるのに時間がかかる
  • マンパワーが足りない

などが理由です。

さらに取材を進めると、ほとんどの自治体で妊婦についての計画がないことが明らかになりました。

なぜ妊婦の計画作りが進んでいないのか、防災情報に詳しい九州大学の杉本めぐみ准教授はこう言います。

「災害弱者といわれる中のカテゴリーはもう完全に高齢者とハンディキャップのある方、その方々を中心に考えるのは妥当だとは思いますが、やはり(妊婦は)1人犠牲になると2人分の命が亡くなる、要配慮者(妊婦)を何もしていない状況に放置してしまっているということにおいては非常に大きな問題」。

どうして災害弱者である妊婦の個別避難計画がないのか。その理由は大きく2つあります。

災害弱者の中でも、寝たきりの高齢者や障害者など、自力での避難が困難な人を優先して計画を作っています。

例えば、福岡市では、こうした人たちはおよそ2万3千人いるとされていて、ひとりひとりの計画を作るには時間もかかります。

さらにもう1つの理由は、里帰り出産などで妊婦の所在が把握しにくいということもあるそうです。

だからといって、放ってはおけない問題です。

九州北部豪雨では、1歳の子どもとともに自宅で亡くなった妊婦の方が、熊本地震では、妊婦を受け入れられる避難所の場所がわからず、車中避難を続けた結果、 胎児が細菌に感染し、出産後に亡くなったケースなどが報告されています。

九州大学の杉本さんは、「妊婦に目を向けた計画があれば、救えた命があったのでは」と指摘していました。

こうした中で、妊婦の避難計画にとらわれずに、柔軟な形で対応しようとする自治体がありました。

宮崎県木城町は、人口およそ5000。山に囲まれ、一級河川の小丸川(おまるがわ)が町の中心を流れます。

防災担当の泥谷昌尚(ひじや・まさなお)さんです。

日頃から子育てや高齢者を支援する福祉部門と連携し、災害時に備えています。

泥谷さんに、妊婦の避難計画について聞いてみると・・・。

「妊婦さんについてはそもそもリスト化していない。 出産後はまた動ける方に戻るというのもありますし、 常に更新されていく情報ではあるので」。

それでも、妊婦への支援は欠かせないと考えています。

すぐに計画を作ろうとするのではなく、避難所の受け入れ体制を整えることにしたのです。

「体育館、講堂に避難された方の中で、妊婦さんだったりとか、お子様連れだったりとか、高齢者の方で、より細かいケアが必要な方について、また別室で対応した方がいいという判断の下でこちらのほうに誘導しています」。

これまでは体育館が主な避難所でしたが、教室を活用することで、妊婦に特化したよりきめ細かな対応ができるようにしました。

併設のシャワーを自由に使え、衛生面のケアも可能です。乳児用のミルクも準備しています。

こうした備えによって、去年は、実際に妊婦の避難にスムーズに対応することができました。

自治体もいろいろと模索しながらやってくれてはいますが、自治体に任せるのではなく、私たちにも何かできることはあるのでしょうか。

取材を通じて、日ごろから家庭や地域で災害弱者の人たちにどう安全に避難してもらうのか、話し合って備えを進めていくことが大切だと感じました。

福岡放送局 ディレクター 後藤紀美香