ファンを増やしたい! サッカーJ1 アビスパ福岡

NHK
2023年5月2日 午後3:42 公開

今回は、「アビスパ福岡のファンを増やす方法」についてバリサーチしました。

始まりは、ロクいち!福岡、スポーツコーナーキャスターの私、岡野唯へのアビスパからの依頼でした。

観客を増やすことに注力しておりますがまだまだ伸び悩んでいる状況です。もっとファンを増やしたいので一緒に協力していただきたいです(アビスパ福岡マーケティング部)

福岡市をホームタウンとするプロサッカーチーム・アビスパ福岡ですが、実は昨シーズンにJ1リーグに所属していたチームの中で最も観客数が少なかったんです。

J1 2022シーズン観客動員数グラフ

1試合平均およそ7000人はトップの浦和レッズの1/3にも足りません…。

どうすればこの現状を打開できるのか。

福岡の人はアビスパをどう思っているのでしょうか?まずは街の声からバリサーチ!

100人に聞いた!アビスパ福岡知っていますか?

ほとんどの人がアビスパを知っていると答えるものの…。

男性二人組「j2?違うか…」

J1チームと認識されていない…。

男性「試合を見に行ったことはないですね」

試合を見に行ったことはない。あっても数年前に一度きり…と言う声が。

福岡の人100人に聞いた調査結果「アビスパ福岡を知っている?」「試合を見に行ったことは?」

100人中、8割以上がアビスパを知っていると答えたものの、試合を見に行ったことがある人は2割程度。昨シーズン見に行った人に限ってはたったの3人でした。

この結果をアビスパの社長、川森敬史さんに報告しました。

川森さん「J1であること自体も皆さん知らない。この現実は非常に厳しく受けとめています」

実は、これまで観客数はJ2からJ1に上がるたびに大幅に増え、1万人を超えていました。ところが、2021年のシーズンからJ1に復帰したものの、3年目になっても伸び悩んでいるのです。

アビスパ1試合平均の観客数(年別)2016年およそ1万2千人、2022,2023年およそ7千人

コロナ禍の影響があるとはいえ、アビスパは危機感を高めています。

そこでアビスパは統計学の専門家を招き、観客を増やすための手がかりを探りました。

山口大学下川元継教授の分析により、ある手がかりが見えてきたのです。

下川教授「親子無料招待キャンペーンが昨シーズンあったんですけど、招待した人の7割近くがリピートしているんですよね」

川森さん「子どもたちがサッカーをした後に、保護者も含めて、やっぱり次も応援しようと思う確率が高いっていうことですね」

分析画面

分析の結果を受け、“リピーターの獲得”を目指すことにしたアビスパ。

それまでは“とにかくばらまいていた”という無料券を、配るターゲットを小学生に絞りました。スタジアムの魅力を高めようと、飲食店を9店舗増やしました。家族連れのリピーターを増やそうという狙いです。

飲食店の数 24店舗から33店舗に

選手の間からも“できることはしたい!”という声が上がり、商店街を練り歩いてスタジアムへ来て欲しいと訴えました。

「満員のベススタでともに」という横断幕を広げて商店街を歩く男性4人

さらに、クラブや選手だけでなく、サポーターも動き出していると聞き、SNSを検索してみると…。

Twitter画面

見つけたのは「#(ハッシュタグ)アビスパ福岡観客動員を考える会」という投稿。立ち上げたのは、関東在住の熱烈アビスパサポーター・實松一洋さんです。

實松さん「今季の開幕戦の動員数が1万人いきませんでした。 J1で1万人も入らないのは選手たちに申し訳ないなと。サポーターとしては、たくさんの満員のスタジアムで選手たちにはプレーしてほしいっていう気持ちがある」

「#アビスパ福岡観客動員を考える会」には、むちゃぶり(!)から現実的なものまでさまざまな意見が飛び交っていました。

「リーグ優勝もしくはルヴァンカップか天皇杯取らないと注目されない」「大谷翔平を補強」「個人的にはBN.BS自由席はもっと値段を下げて」「ビラ配り開催されるのであれば全力で参加します」

そのなかで岡野の目にとまった提案がありました。

「初めて応援する人のために応援歌を印刷して配ってほしい」という提案です。

「アビスパもYoutubaだけでなくこういうのやらないかな?公式も応援ハリセンの裏とかマッチデーに印刷して初めての人たちにわかるようにしてあげてほしいなー」

この投稿をしたサポーターの山崎莉沙さん。始めてスタジアムに行ったときに応援できなかった、自身の経験から生まれたアイデアだと言います。

山崎さん「サポーターを始めた時に、応援歌の歌詞が全く聞き取れなくて手拍子ぐらいしかできないなって思ったのがまずきっかけです。応援歌を歌ってスタジアムで一体感を楽しめるっていうのは2回目、3回目、4回目って来たときに楽しさが増えてくる」

このアイデア、川森社長に直接伝えてみました!

川森社長の反応は…。

川森さん「いいね、そうすると歌えるのかもね。いま全席声出しOKだからね。やれますね」

川森社長に提案したあと、最初のホームゲーム。

入場の際に配られるチラシを見ると…。

「一緒に歌おう」という言葉とともに、QRコードが。

つながる先は新しく作った応援歌のサイト。サポーターがスタジアムで歌う28曲の歌詞が見られます。山崎さんのアイデアに、アビスパが一工夫加えたというわけです。

(画像左から中村さん、赤﨑さん、アビスパ大ファンの先輩)

試合前、初めて観戦するという人たちと出会いました。

アビスパが大好きな先輩に〝連れて来られた〟という2人です。

岡野  「先輩から言われたから、しかたがなく来た?」

赤﨑さん「まぁしぶしぶ・・・」

先輩  「新しくできた歌詞サイトのアドレス、事前に送ったんです」

岡野  「じゃあ初観戦の2人は歌詞サイトをちょっとのぞいてみたとか?」

赤﨑さん「……ちょっと…」

しぶしぶ来たからか、「ちょっと」テンション低い様子の2人。

果たして、応援で盛り上がれるでしょうか?

試合はアビスパが先制される、苦しい展開。

懸命に声援を送るアビスパサポーター!

初観戦のあの2人は?

応援歌を歌う赤崎さん

なんとばっちり歌えていました! しかも、かなりノリノリの様です!

喜ぶ観客たち

アビスパは後半33分ペナルティーキックで同点に!

その後も得点し、逆転勝利をおさめました!

笑顔の赤崎さんと中村さん

赤﨑さん「めっちゃ楽しかったです。同点においついたPKの緊張感がたまんなかった」

中村さん「激アツでした。特にサポーターの周りの熱気の感じとか現地ならでは、非常におもしろかったです」

赤﨑さんまた来たいと思いました

この“また来たい”を一人でも増やすことができるのか?

アビスパ福岡、正念場となる、J1・3年目のシーズンです。

川森さん「地道ですけれども、皆さんに関心をもっていただいて、最終的には愛していただく。段階を踏んで継続的にやっていければいいかなと思っています」

今回、サポーターの提案を川森社長に伝えたところ、すぐに実施され、初観戦の赤﨑さんたちの試合後の笑顔と〝また来たい〟という気持ちが生まれました。小さいけれど、一歩を踏み出した瞬間だったと感じました。 一方で忘れてはいけないのは、先制されながらも逆転勝ちした、内容が濃い見応えのある試合だったことです。選手のみなさんには、ファンがドキドキワクワクしながら声援を送り続け、たとえ負けたとしても、是非次も応援したい!と思う試合を見せ続けてほしいと思います。

すぐに観客が押しかける特効薬的なものは存在しません。さまざまな積み重ねから、地域のサポーターとの信頼関係を築いていくことは大事なことだと改めて感じました。

2023年5月14日(日)は、ホームにおとなり佐賀のサガン鳥栖を迎える九州ダービー!

NHK福岡では、試合の模様を生中継します! (総合テレビ 午後1時30分~)

「スタンドのサポーターの皆さんが応援する姿もどんどん映します!」と、担当プロデューサーが言っていましたので、ぜひみなさん、スタジアムに応援に行っていただければと思います。満員のスタンドから、熱い試合をお伝えしたいと思います!

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