防災は「備えの貯金」から 2022年3月14日

NHK福岡放送局 記者 西潟茜子
2022年4月4日 午前11:03 公開

今回は福岡の地震について考えたいと思います。
福岡では、17年前に起きたあの地震を皆さん、思い起こすかと思います。  

2005年3月20日に発生した西方沖地震です。福岡市などで震度6弱を観測して天神などでも被害が出たほか、西区の玄界島では家屋のほとんどが損壊する甚大な被害が出ました。  

こちらは福岡で確認されている活断層。

複数ありますが、今回注目するのがこちらの警固断層帯です。

警固断層帯は、県内の断層で唯一、大きな地震がいつ起きてもおかしくないと予測されていて、取材を進めると、17年前の西方沖地震の影響を受け続けていることが分かりました。

長崎県島原市にある九州大学地震火山観測研究センター。

センター長を務める松本聡教授を訪ねました。ここでは九州を中心に体に感じない微小地震の観測などを行い、巨大地震の前兆が見られないか分析を進めています。  

松本教授が注目するのが、西方沖地震の震源の延長にある警固断層帯の南東部です。

下の図は、警固断層帯で観測したすべての揺れを示した図です。断層の南東部を示しているのが赤く色をつけたところ。

こちらを見てみると、西方沖地震があった2005年を境に、体に感じない微小地震が増えているのです。一見するとわかりにくくも感じますが、専門家が見ると増加傾向にあるのがわかると言います。

さらにその震源は深いところが多く、地表の大きな揺れにつながるエネルギーがたまっている可能性があるといいます。

つまり、警固断層帯の南東部には、西方沖地震をきっかけに、この17年間、断層の活動を引きおこす力が少しずつかかり続けていたのです。

(九州大学地震火山観測研究センター 松本聡教授)
「警固断層帯の大きい地震を起こすための力はより増した状態にある。起こり得るということははっきりしているのでそれは怖がるのではなくて備えていただくと。それがもし地震が起こった時に命を救うことになると思っています」  

では、警固断層帯の南東部で大きな地震があるといったいどの程度の揺れが予想されるのでしょうか?

こちらは国が設置した地震本部が2年前に示したマグニチュード7点2の地震が起きた場合の揺れやすさを示した地図。

斜めの線が警固断層帯で、オレンジ色の部分が震度6強かそれ以上の揺れが予想される地域です。断層の北側に多く見られ、中央区や博多区が含まれています。黄色の震度6弱でもかなり広範囲に及んでいることがわかります。

そうは言っても、福岡では、地震の揺れを感じることがそれほど多いわけではないので、つい備えを後回しにしてしまいがち。しかしこれは、実は誰にでもある心理なんです。

それは、「正常性バイアス」という心理状態で、自分は大丈夫と思う気持ちです。ちょっとした変化に心と体が消耗しないように備わっているものなんですが、防災意識という点では仇となることがあるのです。

私たちはいったいどうすればいいのか、防災心理学の専門家に聞きました。

(兵庫県立大学 木村玲欧教授)
「日常を生き抜くための正常性バイアスという機能が かえって災害時や防災活動を
狭めてしまう阻害してしまう、これが大きな問題として考えられています」と正常性バイアスについて説明した上で、「できるところから一歩ずつ進めていく必要があると思っています。事前にたくさんのことを一気にやっても残念ながらすぐに忘れてしまいます。いつ起こるかわからない災害に対しては少しずつでもいいので『備えの貯金』をしておくことが大切です」と話しました。  

では、「備えの貯金」とはいったいどういうものなのか。西方沖地震で被災した玄界島を訪ねると、まさに「備えの貯金」が役立ったという人がいました。

玄界島で生まれ育った松田ゆかりさんです。
17年前、自宅にいる時に被災しました。  

(松田ゆかりさん)
「爆弾か何か落ちたっていう、地震とか全然経験したことなかったので、何事!?っていうのが一番でしたね。小屋が倒れて落ちていたりとか。古い築の家だったんですけど瓦から全部落ちて骨組みだけになっていたりとか」。  

実は、松田さん、地震が起きた時、冷静に対処できていたといいます。
事前に確認していたルートを使ってがれきの中をけがもせず無事に避難しました。  

(松田ゆかりさん)
「子ども2人と犬2匹抱えてここをかき分けて下まで降りた記憶がありますね」。  

ではなぜ、松田さんは冷静に行動できたのか・・?

実は、保育園の園長を務め、大事な子どもたちを預かっている松田さん。
その立場が「備えの貯金」につながる心を生み、避難ルートの確認や訓練を繰り返していたのです。  

(松田ゆかりさん)
「訓練って人を裏切らないと思ったんですね。日頃やっていること、自分が教えてもらったこと、身につけていることをちゃんと反復すればいいなと思いながらやったからだと思います」  

防災心理学の専門家が指摘する「備えの貯金」の具体例がこちら。

それぞれ、それほど難しいものではありません。このうち1つでもやり始めると、ほかにもできそうな気持ちになるかもしれません。

私は、この取材を終えて、改めて自宅の備えが大丈夫か確認しました。また、家族とも緊急時の連絡手段をどうするか話し合いました。「そういえば、あれ、大丈夫だったかな?」という気づきを大事にぜひ、「備えの貯金」を始めてみるのはどうでしょうか?

NHKでは今後も防災・減災に向けて取材を進めていきます。
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