深刻な「空き家」問題 どうする?

NHK
2022年4月25日 午後4:50 公開

追跡!バリサーチ、今回は『空き家』問題です。

大牟田市の方からこのような投稿が寄せられました。

この切実な訴え、どんな現状なのかバリサーチしました。

福岡県南部の大牟田市。

取材班が訪ねると、駅前の中心部はシャッターを閉めたままの店がずらり。

住宅街に行ってみると、草木が覆いしげり、奥が見えなくなった『空き家』も。

こうした『空き家』は放置されることで、不審者の侵入や倒壊によって通行人がけがをする危険などが指摘されています。田舎の物件だと土地の値段も安く、解体費用の方が高くつくことも多く、それが放置の原因にもなっています。

問題の深刻さを実感しました。

不動産業を営む平湯聡さん

投稿者してくれたのは、不動産業を営む平湯聡さんです。

平湯聡さん「入居者募集とか売り家とかの看板を出しに行ったら周りを見るとあそこも空き家ここも空き家だなみたいな」。

仕事で家の売り買いに携わる中で、放置されている『空き家』が増えていることを日々実感するといいます。

炭鉱で栄えた大牟田市。

炭鉱の閉山もあってこの60年で人口は10万人近く減少。

空き家問題の背景に、この人口減少が影響しているのです。

大牟田で生まれ育った平湯さんは空き家が増えることで、景観が損なわれ、住民がますます離れるのではないかと心を痛めています。

平湯聡さん「このまま手をこまねいてたらさらに空き家が多くなってどんどん魅力がない街になる」。

大牟田市には、市民から『空き家』についての苦情が数多く寄せられています。

市が現在、確認している空き家の数はおよそ3000。

それらについて「危険だから行政に対応してほしい」などの要望が相次いでいるのです。

この日問題となっていたのは、老朽化が激しく、屋根が崩れるなどしている危険な長屋です。

調べると、土地の所有者が27人いました。

入居している人がいる上に、解体の資金が出せないという人もいて、解決策はすぐには見つかりませんでした。

行政が『放置すると危険だ』と判断した場合、法律上、空き家に対し行政がとれる手立ても用意されています。

それが、行政が所有者に代わって空き家を取り壊す『行政代執行』です。

しかし、解体費用を所有者が払わない場合、税金でその費用を負担するリスクもあるため、大牟田で実施したケースは1件もありません。

大牟田市 空き家対策担当 須﨑雄文さん

大牟田市 空き家対策担当 須﨑雄文さん
「行政代執行については大牟田市としては最終手段と思っております。老朽化して古くなってしまってからでは手遅れになります。空き家になる前の予防が大事だと」。

『空き家』問題に直面した大牟田出身の女性です。

母親が介護施設に入ったことから実家は10年近く空き家に。

草木が生い茂り、シロアリも発生していました。

女性「母とこの家にそのまま住むこと はもう100パーセントないし困ったもんだなということで頭痛めてたんですけど」。

大牟田市とその周辺の不動産会社の人たちが4年前から取り組む空き家の相談窓口

そんな時、頼ったのが、大牟田市とその周辺の不動産会社の人たちが4年前から取り組む空き家の相談窓口でした。

ここでは、宅地建物取引士などの資格をもつコーディネーターが無料で相談を受け付けています。

空き家の売却やリフォーム、相続などの内容に応じて専門家を紹介しています。

リフォームして、賃貸を考える人には建築士が対応。

売却で名義変更などが必要な際には司法書士が相談にのります。

解体業者やお払いのための宮司も紹介。

窓口に相談すれば、空き家に関する問題に『ワンストップ』で対応する仕組みです。

ありあけ不動産ネット協同組合 川添健一理事長

ありあけ不動産ネット協同組合 川添健一理事長
「何から手につけていいか分からないという方が多いですね。いろいろな専門家が連携しておりますのでここだけで相談が完了すると」。

窓口に相談した女性は無事、実家を売却。

いまその家はリフォームされ、賃貸として貸し出されています。

大牟田市で進む、もう一つの市民の取り組みが『福祉との連携』です。

この日、不動産会社の人たちが話し合いをしていたのは、お年寄りと日常的に接する地域包括支援センターの人たちです。

空き家になると対応が難しくなるため、その前に、自宅をどうするのか相談相手になってほしいと不動産会社の人たちが持ちかけました。しかし、担当者からは不安の声も。

吉野地区地域包括支援センター 工藤信恵さん

吉野地区地域包括支援センター 工藤信恵さん。
「まだ頑張って生活している方に対して「亡くなったあととか住めなくなったらどうしますか」みたい話をストレートになかなか言えない自分がいて」。

会議で不安を口にしていた吉野地区地域包括支援センターの工藤信恵さんですが、定期的に訪れているお宅で、勇気を出し、家の将来について家族と相談することを提案しました。

工藤さんが「ゆくゆくですよ、このお家をどうなさるのかというのを、今はまだまだ住めるけど早めに考えとったほうがいいのではないか」と話をすると、訪問先の女性は「(息子に)聞いてみたことないけど、聞いてみましょう」と、前向きに受け止めていました。

大事な問題として受け止めてもらえると感触を得た工藤さんは民生委員の集まりでも、空き家になる前にお年寄りと将来家をどうするのか相談を始めてほしいと訴えました。

大牟田市 吉野地区地域包括支援センター 工藤信恵さん
「不動産とかってちょっと敷居が高いというか、「相談窓口とか事前にそういうのあると知らなかった」と言われるんですけど、周知をしていくことでまず「気軽に相談できるんですよ」というところは思っていたより皆さんの中で受け入れはいいのかな」。

所有者が認知症になった場合、相続などの手続きが難しくなります。

一度、空き家になってしまうと、資産価値がどんどん下がっていきます。

そういう点でも家族で早めに話し合っておくのが大事だと、取材を通して実感しました。

番組では、HPに加え、LINEからも皆さんからのご意見を募集しています。

空き家問題について、こんな取り組みをしているという事例などもお寄せください。