選挙ミニ知識③

NHK
2023年3月17日 午後5:42 公開

ことし4月に行われる統一地方選挙。

奈良県内では4月9日に知事選挙と県議会議員選挙、23日には市町村長選挙や議会議員選挙が行われます。今回は「期日前投票」をめぐる豆知識をお伝えします。

期日前投票、導入から20年

告示日の翌日からスタートする「期日前投票」。

ちょうど20年前の2003年、選挙当日に投票に行くことができない人にも1票を投じる機会を確保しようと、始まりました。

この制度、どの程度、みなさんに利用されているかと言うと…

奈良県内では、去年夏の参議院選挙で、投票者全体の35.20%、実に3人に1人が利用していたんです。

この割合・・・高いの?低いの?

全国的に見ると、高い方からだと33番目。ちょっと微妙な位置づけですね。

それでは、どこが最も高いのかというと・・・「なまはげ」で有名なこの県。

秋田県の56.64%。なんと、投票日よりも、期日前で投票する人の方が多いんです。

なぜなのか、その理由を探ってみると・・・

高校にバスを使った移動式の期日前投票所がやってきたり、スーパーなどの利便性が高い場所に期日前投票所が設けられたり・・・

投票率の向上につなげようと、とにかく人が集まる場所に期日前投票所を設置しているんですね。

あなたは“期日前派”?“当日派”?

奈良県全体では“3人に1人”が利用した期日前投票。でも、お住まいの自治体では、どれだけ利用されていたのか、気になりませんか?そこで、まとめてみました。

こちらの表、2年前の衆議院選挙と去年の参議院選挙で、それぞれ、自治体ごとに期日前投票の割合がどの程度だったのか、高い順に並べたものです。

この表を眺めていると・・・なんか、傾向が見えて来ませんか?

上位を見ると、黒滝村や川上村など、比較的人口の少ない自治体が並んでいます。

一方、野迫川村は“期日前派”よりも“当日派”が多いんですね。同じように、生駒市や大和高田市など、人口規模の大きいところも“当日派”が多くなっています。

“期日前派”の多い自治体と“当日派”の多い自治体、何が違いにつながっているんでしょうか?気になって、ある都市部の自治体の担当者に聞いて見ると・・・

都市部の自治体担当者

「平日の日中に県外に仕事に出かけるなど不在にしている人は、限られた週末の機会か投票日当日に投票に出かける傾向が強くなるのではないか」

一方、去年の参議院選挙で、投票者全体の“3人に2人”以上が期日前投票を利用したという黒滝村。村の人たち6人に話を聞いてみると。

グラウンドゴルフ仲間!村在住の女性たち

「選挙の前から投票先は決めていますよ。早く投票を済ませておいたほうがラクだから」

「村唯一の期日前投票所が村役場にあって、その近くのお医者さんや歯医者さんに行く用事があるので、そのついでに行きます」

庭仕事中の60代男性

「当日の投票所では、誰が投票に行ったとかいうことが周囲にわかってしまう。だからわからないうちに投票に行ったほうがラクなのよ。憶測されずに済むから」

やはり、多いのには、いろいろな理由がありそうですね。

今回から手続きが簡素化

ところで、今回の選挙から、期日前投票のしかたが少しだけ簡単になるって知っていましたか?

これまでは、「なぜ選挙当日には投票に行けないのか」という理由を、選択肢のなかから選ぶ必要がありました。旅行なのか、仕事なのか、病気なのか・・・

しかし、理由をひとつひとつ読んだ上で、どれが当てはまるのかを選択するのは、意外にも手間がかかるそうで、自治体側からは手続きの簡素化を求める声があがっていました。

今回からは、その手続きが簡略化。どれかひとつの理由に該当していることさえ申告すれば済むスタイルに変更されました。総務省によりますと、こうしたルールの変更で、投票率の更なる向上につなげたい、というねらいもあるということです。

各自治体は、投票率向上へ、大型商業施設や大学などさまざまな場所に期日前投票所を設置するようになっています。

去年の参議院選挙の場合、全国で設けられた期日前投票所は6100か所以上。3年前の選挙と比べると、400か所以上も増えたということです。

期日前投票に出かけたら

最後に、期日前投票のしかたを、改めておさらいしましょう。

告示日のころに、皆さんの自宅には、選挙通知書や入場整理券という、案内状のような書類が届きます。

これを持って出かけた場合は、投票用紙の発行はスムーズに行われますが、実際にはこうした書類を持っていなくても、投票することができます。

その場合、会場で、住所や生年月日、名前を記入し、まだ投票を済ませていないことや選挙人名簿に登録されていることの確認が行われ、その上で投票用紙の発行を受けられるということです。

4年に一度、奈良県の未来を占う選挙が集中して行われるこの4月。

県や、お住まいの地域の未来を決める1票を、期日前投票なども利用して、ぜひ投じてください。

及川佑子 記者

2007年入局

これまでに〝永田町〟と〝登大路〟で政治取材を経験