奈良のJリーガー ピッチの外でも〝子どもたちのために〟

NHK
2023年11月30日 午後4:29 公開

サッカーのJ3、奈良クラブの浅川隼人選手。チームのエースストライカーとして活躍する一方でことしの夏から奈良の子どもたちのために始めた活動とは・・・。

(清田りな リポーター)

【奈良クラブのエースが始めた活動とは】

去年、奈良県初のJリーグチームとなった奈良クラブ。J3に挑んだ今シーズンは1年目ながら最終盤まで上位争いに加わる健闘を見せました。チームのエースストライカーでフォワードの浅川隼人選手(28)は4月には月間MVPに選ばれたほかJ3の得点ランキングで2位につける活躍でチームを引っ張ってきました。

そんな浅川選手がことしの夏から奈良の子どもたちのために始めた活動があります。

それがキッチントレーラーを使ってみずから必要な場所に出向く“移動式”の子ども食堂です。

【移動式の子ども食堂 そのきっかけは】

なぜ、子ども食堂を?しかも移動式? その原点は「子どもたちに夢や希望を与えたい」。浅川選手がプロを目指した理由です。2年前に熊本のチームから奈良クラブに移籍した浅川選手。そこで出会ったのが、お寺のお供え物をひとり親や経済面など困りごとを抱える家庭に贈る取り組みをしている団体でした。自分も何か役に立てないかと考えついたのが、みずから出向いて無料で食事や居場所を提供する〝移動式の〟子ども食堂でした。

浅川隼人選手:

「奈良県には実際に周りに子ども食堂がない子どもたちもいる。そういったところに僕たちが実際に行って届けることができれば、本当に届けたいところに届けられるのかなと思う。こういう活動を通じて食事もそうだし夢を持ってもらうようなきっかけを作れたらなと」。

【〝移動式〟の子ども食堂】

〝移動式〟に欠かせないキッチントレーラーはクラウドファンディングで資金を集めて調達。そのトレーラーを活用して試合会場やイベントで地元産の食料品や弁当などを販売。その収益を子ども食堂の運営費に充てています。

ことし8月に続いて2回目の開催となった11月、浅川選手の移動式子ども食堂は橿原市の寺を訪れ、協力する団体の呼びかけで子どもたちやその親、あわせて19人が集まりました。この日提供するお弁当のメニューは野菜たっぷりのハンバーグに、小松菜とひじきを使ったサラダなど。メニューはアスリートの食事についての資格を持つ浅川選手の妻などが考えます。奈良県産の野菜を多く使用し栄養のバランスも考慮。もちろん浅川選手も試食してアドバイスするといいます。

トレーラーの中ではスタッフが弁当の準備

トレーラーの中で完成したお弁当は子どもたちに配られ、寺の本堂で「いただきます」。  子どもたちはできたてのお弁当をおいしそうにほおばり、にんじんが苦手な子も全部たべられたと笑顔を見せました。

【食べるだけではない子ども食堂】

浅川選手の子ども食堂は食べるだけではありません。浅川選手との交流も大きな魅力です。この日はあいにくの雨だったため本堂の中で一緒に体を動かしながらゲームを楽しみました。天気のよいときはサッカーをすることもあるということです。保護者からも「子どもがすごく楽しそうにしていたので参加してよかった」と評判は上々でした。

こうして交流を深めた子どもたちが奈良クラブやサッカーに関心を持ち、スタジアムに応援に来てくれるようになることも浅川選手は楽しみにしています。

〝移動式〟の子ども食堂は、まだ始まったばかりの取り組みですが、今後、月に2回ほどのペースで県内各地を回っていく計画です。

浅川隼人選手:

「子どもたちの表情が変わっていく姿を目の当たりにしたのですごくうれしかった。子ども食堂で出会った子どもたちが大人になった時にまたほかの子どもたちにこのように何かしてあげられるように、次世代の子どもたちに紡いでいけるような原体験として残ったら、すごく僕はやっている意義があるなと思う」

【末永く続く活動に】

浅川選手は熊本時代にも地域の人たちと交流を深める食堂を開いたり、地元産の食材を使った補助食品を開発したりとピッチを離れての活動も行ってきました。奈良に来てからもSNSでの発信やイベントなどを開いて積極的にサポーターとの交流を続けるなど、みずからのプレーを高めるとともに地域とのつながりを大事にしてきました。

そんな浅川選手ですが、「サッカー選手は移籍などで一つの地域にとどまり続けるのは難しい」と言います。それだけに、浅川選手は自分が奈良にいなくなっても子ども食堂を続けられるよう会社組織を作って活動を行っています。トレーラーを使って運営費を生み出す仕組み作りもそのためです。そして今後は、ほかの選手にも参加を呼びかけていくことにしています。アイデア満載のエースストライカーのピッチ内外の活躍に今後も注目です。

清田りな 

サッカーファン歴12年。

サッカー審判員4級の資格も持っています!