奈良を愛する人たちが、奈良県内の歴史や文化の魅力をホリ下げる『ならホリ!』
今回のテーマは「伎楽」です。秋の正倉院展で、宝物の「伎楽面」を目にする機会はありますが、そもそも「伎楽」ってどんな内容なのか、ご存じですか?今回は楽しむコツをホリさげていきます。
「伎楽」って何?
一緒にホリさげていくのは、天理大学名誉教授・佐藤浩司さん。実は40年以上前に行われた「伎楽」に関する大プロジェクトの主要メンバーだったんです。
東大寺大仏殿で「昭和の大修理」が行われたあとの昭和55年。まぼろしとなっていた「伎楽」を、奈良時代の大仏開眼会の時のように奉納する催しが行われました。佐藤さんは、そのメンバーのひとりで、音楽の指揮を任されていたんです。
その後、ずっと「伎楽」に関わり続けている佐藤さんに「伎楽」とは何か、尋ねてみると・・・
天理大学名誉教授 佐藤浩司さん
「無言で人々に内容を分からせるための劇です」
日本書紀には、百済からの渡来人・味摩之(みまし)が飛鳥時代に「伎楽」を伝えたと記されています。
笛や太鼓に合わせて演じられますが、セリフはなく、登場するキャラクターは、鳥のような顔をした「迦楼羅(かるら)」や、高貴な女性「呉女(ごじょ)」など、基本的に14種類。
東大寺大仏開眼会の場面以外でも、寺や外交使節をもてなす場などで披露されていました。仏教の教えを深く伝える、そんな役目もあったそうです。
“個性派”たちがおりなす物語
それでは、どのような内容のものなのか?佐藤さんが総監督を務める天理大学雅楽部に特別に協力してもらいながら、見ていきましょう!
まず、登場するのは、赤い顔に鋭い牙が特徴の「崑崙」。どういうキャラクターなのかというと・・・
天理大学名誉教授 佐藤浩司さん
「崑崙」は田舎の方で育ち、都会に出てきた人物です。見るもの、聞くもの全部が物珍しい、そういう人物になります。
そんな「崑崙」の前に現れたのは高貴な女性「呉女(ごじょ)」。従者とゆったり散歩を楽しむ「呉女」に気付いた「崑崙」は、言いよって、何とかしようと考えて近づこうとしますが、「呉女」はそれをはねのけようとします。
両者のいざこざを見ていた「金剛」と「力士」は、「崑崙」を取り押さえますが、「崑崙」はなぜ、自分がそのような目に遭わなければならないのか、理解ができません。
そこに、知識があるお年寄り、「太孤父・太孤児」が現れ、崑崙に、なぜこのような目にあったのか、諭すというストーリーです。
物語はとてもわかりやすいですね。私自身、伎楽を見るのは、今回が初めてだったのですが、セリフがなくても、お面や動作に特徴があるので、どのような場面なのか、おおむね想像できました。
実は見ている!?伎楽由来の芸
飛鳥時代に日本に伝わり、奈良時代に盛んに演じられた「伎楽」は、その後、文化の国風化の影響もあって、廃れてしまいました。でも、伎楽の「とあるキャラクター」は、「お祭りなどで、皆さんよく見ているのではないか」と佐藤さんは言うんです。なんだかわかりますか?
それがこちら。
もう、お分かりですよね?答えは、「師子」。
いまの「獅子舞」の源流は「伎楽」にあると言うんです。どうして「伎楽」が廃れてしまったのに、「獅子舞」は広がり、いまも残っているのかというと・・・
天理大学名誉教授 佐藤浩司さん
「簡単だからです。簡単だから各地に広がっていったんですよ」
え!? 簡単だったから?そういった理由なんですね。
復活した「伎楽」 次のステージに
東大寺大仏殿の「昭和の大修理」で復活を遂げた「伎楽」ですが、いま、新たなステージに進もうとしています。明日香村では「伎楽」が伝来した飛鳥時代のように、子どもたちによる「伎楽」を復活させようとしているのです。
ことし2月、練習の成果が発表されましたが、その場にいたのは、佐藤さん。このプロジェクトで子どもたちの指導も担当しています。明日香村などで今後、「伎楽」を目にしてもらえる機会が増えていく中、佐藤さんは、まずは構えずに楽しんで欲しいと考えているようです。
天理大学名誉教授 佐藤浩司さん
仮面をつけて演じるので、仮面の特徴を見てもらうと、どんなキャラクターなのか、わかると思います。場面にあうような音楽に合わせるかたちで踊られるので、目の前で繰り広げられることを、そのまま受け止める。それが一番簡単な楽しみ方だと思いますよ。
秋田 紗千加
クラシックバレエ歴10年。
動きで気持ちを伝えるのは伎楽もバレエも同じです!