「前の知事の肝いり事業が満載の予算と認識している。そのまま執行するわけにはいかない」などと述べ、5月8日の初登庁のあと、21の項目に関する予算の執行をいったん停止するよう指示を出した奈良県の山下知事。5月13日、事業の可否を判断するために、関係先を視察しました。知事が現場を見て、述べたことは?
(奈良県政取材班)
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予算の執行がいったん停止された21項目の事業に関する視察のうち、今回、メディア関係者に公開されたのは、このうち5か所の一部です。
《AM09:30~》
山下知事がまず、訪れたのは県立橿原公苑と橿原運動公園。2031年に開催予定の国民スポーツ大会に向けて、県が新たに整備するとしてきた会場の予定地です。
県立橿原公苑では、外壁の応急的な修繕工事が行われている体育館の現状を確認。現在の陸上競技場では、競技の開催基準に満たないことなどを担当者から説明を受けました。
【視察後会見では】
「国体会場として使うのであれば、こういった形の改修は必要でしょうねという説明を受けました。もうちょっとこうすることも考えられるんじゃないかとか、こういうことは検討したのかっていうのは私から新たなアイデアを言ったものもございます」。
その後、橿原市が管理する橿原運動公園に移動。こちらは県が用地を取得して新たな陸上競技場を整備しようとしている場所です。
【視察後会見では】
「県が土地を買収して新たに第一種の陸上競技場を造るという予定地を見させて頂きました。これから買収する予定の橿原市の土地開発公社が持っている土地と、民有地を見せて頂いて、新たに陸上競技場を建てるのに用地買収費がいくら、施設整備費がいくらという説明を受けて、その過程でこういった課題や問題もありますという説明も受けました」。
《AM11:30~》
続いて桜井市に移動し、「なら食と農の魅力創造国際大学校」、通称「NAFIC」を視察。この大学校には、農家や料理人などを養成する学校のほか、ホテル機能も併設されています。
【視察後会見では】
「ハードを持つのは県ですから、当然稼働率を上げてもらわないと困ります。そのためには県としても今後どんどん提案していきたいと思いますので、提案をしていくための基礎的な情報を入手したということです。アグリマネージメントの部分は当然、農業大学校の後継ということで必要だと思っていたんですけど、料理学校とレストランとホテルは、そもそも県がやらなきゃいけない事業なのかと、大金をかけてやる必要性がどこまであるのかと8年前の選挙でも思っていたんです。施設運営にかなりのお金を県は使っていますので、それを低減できるような方策がないか、自分自身で考えるためにいまの運営状況を伺ったということです」。
《PM02:00~》
午後には、磯城郡3町を拠点にしたスポーツや健康づくりに重点を置いた新たなまちづくりの構想、「大和平野中央田園都市構想」に関係する予定地を視察しました。
【視察後会見では】
「立地、土地の全貌を見て、京奈和自動車道からのアクセス、近鉄の駅からのアクセス、あるいは土地利用にかかわるような法規制にどんなものがあるのか。雨が降ったときに、割と雨がたまりやすい土地柄かどうか、そういったことを職員から聞き取りをしたということです。予定にはなかったんですが、すぐ近くの『まほろば健康パーク』も新たに子どもの遊び場的なものを整備するという計画がありますので、ついでに見てきました」。
《PM04:00~》
そして、この日最後に視察したのは、大和郡山市にある県の中央卸売市場。老朽化に伴い、県が再整備を計画していますが、これまでの構想では、市場の機能だけでなく、ホテルやフードホールなどを併設することも検討されています。
【視察後会見では】
「今、市場での取り引き量自体が低減していて、仲卸業者さんは割とちっちゃい業者さん、家族だけでやっているような業者さんとかもいるんです。(取引先の)八百屋さんとか魚屋さん自体が、どんどん淘汰されていっていて、それにつれて仲卸業者さんも非常に厳しいという現状なんです。市場をリニューアルすれば施設利用料も変わってきますので、利用料が上がれば商売を続けることが難しくなるというようなことを言っておられる方もいるという話を職員から聞きました」。
視察の日程を終えたあと、山下新知事は報道陣の取材に応じ、予算の執行をいったん停止した事業がある自治体のトップとは、すでにやりとりを始めていることを明らかにしました。
「橿原市長、五條市長、磯城郡の三宅・田原本・川西の3町長とは、私は非常にバタバタしていて行けなかったので、いずれも副知事に行って頂きまして、すでにこんなことをおっしゃっていたというのはペーパーで報告は受けております。もともと現在の計画で来たので、やってもらえたらうれしいけれども公約を掲げて新しい知事が当選した以上、一定の見直しは仕方ないだろうなというふうにある程度腹はくくられている首長もいると、そういうふうに聞いています」。
今回の場所以外については、選挙期間中に行っている五條市の大規模広域防災拠点や、奈良市の平城宮跡の整備事業の現場は、改めて視察しないとした一方で、「奈良県コンベンションセンター」や「なら歴史芸術文化村」については、今後、公務にあわせて視察することを明らかにしました。
「イメージしていた通りというところもありますし、ちょっと修正した方がいいかなというところもありますし、最終的な判断をするために有益ないろいろな情報がきょうの視察で得られたなと思っています。中身はちょっとまだ言えませんのでそれは最終的に6月上旬に全部まとめて発表します」。