防災や産業振興など、府県をまたぐ課題に取り組む関西広域連合。奈良県はこれまで部分的に参加してきましたが、今月(5月)山下知事は「全面参加」する意向を関西広域連合の会合で表明しました。どのようなメリットがあるのか?知事の発言などから探ります。
(奈良県政取材班)
奈良県 山下真知事
「これまで奈良県は防災と観光に対しての部分参加でしたが、私は選挙で全面参加ということを公約に掲げ、5月8日の初登庁の日に全面参加すると表明させていただいたところでございます。今後、各構成府県のみなさまがたには、議会の議決でお手をわずらわせますが、どうぞよろしくお願いします」。
5月25日、鳥取市で開かれた関西広域連合の委員会。就任後、初めて参加した会合で発言を求められた山下知事は、挨拶のあと、早速、公約として掲げてきた関西広域連合への「全面参加」を表明しました。
関西広域連合って何?
そもそも、山下知事が「全面参加」を表明した関西広域連合とは、どのような組織なのでしょうか?
結成されたのは、いまから10年以上前の平成22年。防災や産業振興など、7つの分野の広域的な行政課題などに連携して取り組む目的で作られました。ただ、結成当初、参加していたのは、大阪、兵庫、徳島などの2府5県。奈良県の荒井元知事は「メリットがない」として、関西2府4県で唯一、参加を見送っていました。
結成から2年後には、大阪市や京都市など、4つの政令指定都市も参加しますが、この時点でも奈良県が参加していない状況はかわりません。
ところが、平成27年3月、状況が変わります。荒井元知事が、「広域防災」と「広域観光・文化・スポーツ振興」の2つの分野に限って参加することを発表したのです。
知事選挙の告示まで3週間を切った時期で、関西広域連合への参加を訴える山下真氏などが知事選挙への立候補表明を済ませていたタイミングでした。
それから8年がたちましたが、府県では、奈良県(2分野)と鳥取県(3分野)だけ「部分参加」となっています。
そうした中、ことし4月。関西広域連合への全面的な参加を公約に掲げた山下氏が、2度目となる知事選挙で、初めての当選を果たしました。長年の”公約実現”に向けた発言が冒頭の場面だったのです。
「全面参加」どんなメリット?
ただ、「全面参加」するとどのようなメリットがあるのでしょうか?参加していない5分野について、参加のメリットを知事本人に尋ねると・・・
《広域産業振興》
「(関西広域連合は)関西にすでに立地している企業をバックアップするとか、そうした企業の強みを生かしてさらに関西に企業を誘致するといった取り組みをしています。参画することで、いろんな有益な情報が得られるのではないか」。
《広域医療》
「災害時の医療連携は大変重要な課題と認識しております。奈良にも大きなメリットがあると思っています」。
《広域環境保全》
「地球温暖化対策の推進は我が国にとっても、全世界にとっても本当に喫緊の課題です。鳥獣被害対策も、(鳥獣は)府県境をこえて飛び回るので、奈良県単独でやるよりも広域でやったほうが良い」。
《資格試験・免許等》
「試験問題の作成とかは、広域で取り組む方が効率的にできるのではないか」。
《広域職員研修》
「奈良県の職員も参加することで他府県の先進的な取り組みについて、職員が知見を得ることができます。他府県はこんな頑張っているんだという刺激を、県職員が受けることで、大きな意欲をもって県に戻って頑張ってくれるのではないか」。
正式な全面参加への道のりは?
ただ、今回の山下知事の発言は、現時点では、あくまで「知事個人の意向」という位置づけです。今後、知事自ら県議会に説明して、「意向」を、「県としてのもの」にする必要があります。
そうした上で、知事が関西広域連合の連合長に、規約の改正を正式に依頼すると、ようやく「全面参加」にむけて、物事が動き始めます。
関西広域連合内の規約の改正案の確認や、参加府県・政令指定都市での改正案などの審議や議決・・・最終的には総務大臣の許可が下りないと、奈良県の「全面参加」は認められないのです。
手続きに向けた”第一歩”議会への説明はいつ行うのか。
記者会見で尋ねられた山下知事は、「6月議会での提案は予定していない。9月以降になると思います」と述べ、準備に少し時間がかかることを明らかにしました。
一部の自民党の県議会議員は、知事選挙の際には、関西広域連合への「全面参加」を公約に掲げる別の候補者を応援していました。
今後行われる知事の「説明」に、議会側がどう対応するのか、注目が集まります。