「17才の帝国」世界観設定について(1)

NHK
2022年5月7日 午後11:05 公開

ドラマ「17才の帝国」を視聴してこんなマニアックなスタッフブログまでアクセスありがとうございます。ビジュアルディレクションを担当したプロダクションデザイナーの服部です。私の監督領域で工夫したポイントに注目していただき、作品をさらに楽しんで頂けるような豆情報をお伝えできればと思います。

■真木亜蘭設計の閣議室

ウーア閣議室

物語の中心となるのは、UAの閣僚達による執務が行われる閣議室。この空間は総理大臣「真木亜蘭」が設計したという設定です。この空間デザインには真木のキャラクターを作り上げるうえで幾つか工夫をしています。真木は劇中で3つの政治を標榜します。

真木が掲げた3つの政治

「Visible Politics 癒着やしがらみを排した透明な政治」

「Listening Politics 人々の声を聞き、受け止める謙虚な政治」

「Helping  Politics 助けを求める人々に手を差し伸べ救う政治」

ここに真木のキャラクターは凝縮されています。

2022年現在でも少子高齢化、SDGsが叫ばれる中、202X年はさらに資源は無い、経済も衰退、人口減少。想像すればするほど絶望的ですが、誰も切り捨てない真木はきっと「今あるものをうまく使う」「解釈を再定義して成立させる」そんな考え方の持ち主ではないかと想像しました。

長崎県佐世保針尾島にある無線送信所でのロケハン風景

写真を見て頂くとご理解いただけるように閣議室は実在する無線送信所内の電信室をモデルにスケルトンリノベーションしました。真木にとって経年変化したコンクリート剥き出しの躯体は「渋い」「味があってかっこいい」。透明な議会、リアルを住民にそのまま見せる。ラディカルな思想の真木はインテリアもマテリアルをそのまま活用する。そんな考え方をする人物という価値観をデザインで定義しています。

■AIソロンと透明な議会

閣議室には大きなコンクリートのテーブルがあり、真木はその端のセンターに座っています。背景にはソロンを呼び出す巨大モニターを背負い守護霊やスタンドのようにAIソロンを従えます。

真木が閣僚会議を配信する様子

顔は前を向いたまま背後にいるソロンに語り掛ける真木。基本的にUA住民への生配信はこの画となります。筆者は映画「トゥルーマン・ショー」や恋愛リアリティ番組が好きなのですが、箱庭を観察するということで発生する愛着を作品に注入したいと考え、プロデューサーや脚本の吉田玲子さんと議論してこのような表現となっています。

閣僚の中で一番若い真木はUAの総理大臣、一番責任のあるポストです。自信があるように、虚勢を張らなければなりません。自信の無いトップの判断に支持は集まりません。AIソロンを誰よりも使いこなしている、そんな印象を作り上げるために、自分の背後にソロンを背負います。したたかな真木、そんな印象を設計しています。

配信するカメラとスマートグラスとリング

住民たちは配布されたスマートグラス、スマートリング、イヤーデバイスからソロンにアクセスします。スマートデバイスを通じて情報はすべてソロンに転送されています。

■UAという都市のブランディング

劇中に登場する実験都市Utopi-Ai、通称UA(ウーア)、この都市にはデザインガイドラインが設定されていて、閣僚である林完を中心に作成したという設定です。グラフィックデザイン、UIデザインは実際に北九州市の都市ブランディングを手掛けられたアートディレクターの下川大助さんを中心に複数のクリエイターが参画して作り上げています。

ウーアのデザインガイドライン

■AIソロン

UAの意思決定を補助する政治AIソロンは、

トリ(経済成長) ヘキサ(ウェルビーイング) ノナ(持続可能性)

の3つのAIで構成されています。それぞれ独立した量子コンピューターが割り当てられていて優先順位が違う提案をします。この3つのAIは塔の中に格納されています。

このソロンのデザインもアートディレクター・下川大助さんや映像作家・田島太雄さんらとアイデアを交換しながら制作しています。

ソロンを構成する3つの量子コンピューター

3つのAIの政策提案は閣議室の壁面に設置されている3つのディスプレイに表示されますが、2話目以降は、NFT設定のデジタルアート作品も表示されます。映像作家のOTPさん・寺尾かなさんの映像作品にも注目です。