「17才の帝国」世界観設定について(6)物語の境界を定義するEDタイトル

NHK
2022年5月28日 午後11:05 公開

アクセスありがとうございます。ビジュアルディレクションを担当したプロダクションデザイナーの服部です。今回はEDタイトルに関して、企画演出した服部と撮影監督を担当した神藤剛さん、オフ/オンライン編集を担当した岡田太一さんの3名でお伝えします。

EDタイトルの主な役割は通常スタッフロールを流すことで番組の各領域の責任の所在を記すと同時に物語の余韻に浸って物語の時間を閉じていただくことです。しかし「17才の帝国」では、もうひとつ欲張った構造をEDタイトルに込めています。4話まで熱心に視聴いただいた方は既に気が付いていると思いますが。EDの世界を回遊する女の子は17才のユキ・AIスノウです。

■1話 UA閣議室

1話 UA閣議室

■2話 狸穴商店街

2話 狸穴商店街

■3話 青波高校

3話 青波高校

■4話 閣僚官舎屋上

4話 閣僚官舎屋上

謎の存在のスノウですが、物語が進むにつれてEDでも徐々に姿が明らかになっていきます。EDはスノウがデジタル上に構築した「メタバース」という世界観になっています。

スノウ部屋はオフラインのインターネット環境の設定で、情報は真木からのデータと対話からしか取得できません。スノウは地下室に来る真木やサチのスマートグラスからデータをハックしてこの世界を構築しています。スマートグラスが赤く点滅する描写がそれです。

2話ですぐりの「デートでもしてるつもり?とちおとめ」というセリフがありましたが、真木とサチ2人がUAを視察する映像をスノウはどういう気持ちで眺めていたのか?1話から4話まで閣議室、商店街、学校、官舎屋上、色々な出来事がありました。

スノウはテレビを見る我々視聴者と同じ目線で、真木やUAに住む人々「17才の帝国」を眺めていたことと想像します。真木とサチからハックした映像データをメタバースUAとして再構築し二人の軌跡を追体験する。そんなコンセプトとなっています。

テレビドラマの基本的な構造としてOPタイトルやEDタイトルは本編とは存在する軸が違うメタなレイヤとなります。このメタレイヤにAIスノウを「メタバース」という現実社会やドラマ本編にも存在する概念の「トンネル」で接続することで、虚実合わさった不思議な読後感を残せないか?というトライでもありました。

余談ですが、AIスノウを演じる山田杏奈さんには設定やコンセプトのみを簡単にお伝えして、あとは「自由演技で!」とお伝えしました。表情、身のこなし、しなやかな指先、全てアドリブです。山田杏奈さん流石です!

5話のEDタイトルにも物語を補完する最後の工夫を準備しています。筆者も聴くたびに新たな発見がある主題歌「声よ」。言わずもがな坂東祐大さんの巧みで繊細で大胆なメロディと岡田拓郎さんのアレンジもさることながら、塩塚モエカさんの歌詞にも注目です。主語の位置が絶妙で固有名詞が入っていないことにより、歌うシチュエーションで曲が持つメッセージがガラリと変わります。あまり書きすぎるとネタバレになってしまうので、、、

最後までお楽しみいただければ幸いです。

(文責:服部)

■神藤剛

神藤剛

EDタイトルの撮影を担当させて頂きました。神藤剛です。

今回お話を頂き、服部さんからコンセプトをお聞きし最初に感じたことは「からっぽ/empty」という言葉でした。

真木という誠実な人間の純粋な感情から生まれた感情を持たない人格AIスノウ。優しさから生まれた空虚な存在。スノウが『からっぽ』な自分を埋めようと感情を探す旅のようなイメージで撮影をさせて頂きました。

度々、手の寄りを撮影しているのですが、物に触れ、対象の感触を確かめているようにも見えますが『対象に触れることで自分の存在を確認するスノウ』を表現したいと思っていました。車内の窓に触れるシーンがありますが撮影日は外がまだ寒く、車内との気温差で窓が曇っていました。窓に触れた瞬間スノウの指の痕が窓ガラスに残ります。

実態のないデータの集合体であるスノウが、現実世界に痕跡を残した。

俳優の山田杏奈さんもカメラを握っている僕も予想していなかった出来事に思わず、『あっ。』と声がでたのですが、その僕達の感情の動きと同じような感情がスノウにも宿ったかもしれない。

そんな風に思わせてくれるとても印象に残るシーンになりました。

(文責:神藤)

■岡田太一

岡田太一

アバン、本篇の一部とEDのオフ/オンライン編集をいたしました、岡田太一と申します。

今回の作品には「実写 x アニメ x SF」という合言葉がありました。それに沿ったエンディングとして、服部さんの描く物語性と、神藤さんの撮影された美しいフッテージを前に、私は邪なことを考えました。「高度に発達した科学と現実の狭間には都市伝説が生まれる」と。

ここまで試聴されてきた方はお気づきの通り、エンディングでフォーカスされているのはスノウになります。スノウはソロンと同じくAIという現代科学の結晶ですが、その形成には論理では割り切れない情念が込められています。彼女がもし身体を持って生きていたら、UAを見てどう思うだろうか。どこに行きたいだろうか。どう呪うだろうか。

そうした想像から「実写 x アニメ x SFx “都市伝説≒ホラー”」という4つ目の裏テーマを勝手に想定し、編集を行いました。エンディングの楽曲「声よ」はBPM40前後と大変ゆっくりの楽曲になります。その中で、倍数としてのBPM80を概ね人間の平常時の心拍数と仮定し、楽曲の中で最も気持ちの良いリズムはどこか。そして最も気持ちの悪い、心の落ちつかなくなるブレイクはどこか。そんなことばかり考えておりました。

技術的なチャレンジとしては、今回の編集はオフ/オンライン共に全てDavinci Resolveで行いました。オフラインメディアを作らずに、全編撮影素材のまま編集、エフェクト、合成、グレーディングを行うことで、一貫したワークフローで仕上げることができました。通常のフローだとオンライン後のオフライン修正は結構大変なのですが、最後までフレーム単位で拘れたのは良かった点かと思います。(この文節だけ技術系メディアみたいになったなぁ)

また、ノンクレジット版を下記にアップ頂いております。映像設計上はクレジットが載ることを前提にレイアウト、編集していますので、ちょっと恥ずかしいという気持ちもありますが、大変嬉しく思っております。これは当初予定になかったので、試聴された皆さまから反響を頂けてのことかと思います。この場を借りて御礼申し上げます。

本篇に寄り添い補完しつつ、本篇だけでは成し得ない引っ掛かりを残せていたら幸いです。

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