恋せぬふたり制作日誌⑩ 「衣装」で魅せる!「恋せぬふたり」

スタッフ
2022年3月1日 午後1:00 公開

初めまして。恋せぬふたりの衣装を担当した高橋さやかです。
ドラマにおける衣装(スタイリング)の役割は、登場人物の設定にリアリティーを持たせるといった基本的な要素以外にも、セリフやストーリーでは語りきれない“背景の部分“を表現して視聴者の皆さんが人物を掘り下げて想像するきっかけ作りをすることが大切だと考えています。

今回は特にその点を心がけてのスタイリングでした。
私も今回のドラマではじめて“アロマンティックやアセクシュアル”の方々の存在を知りました。感覚的には新たな発見も多かったのですが、脚本を通してキャラクターを紐解いていく中で、登場人物全てがとても魅力的な人々だと感じ、受けた印象をそのまま膨らませていく作業になりました。

強烈な個性を持ちながらも親しみやすくどこか繊細。この感じを表現する手段の1つとして、徹底して多彩な色使いで全体を構成。街歩きなどロケが多い中でカラフルな印象を与えるには、衣装の比重がとても大きくなりますが、型にはめすぎず自由な感覚で色を付けました。

具体的に、咲子、高橋、カズの衣装のポイントについてお伝えします。

●咲子(さくこ)の衣装のポイント

第一印象で明るく人に好かれるキャラクターに映るようスタイリングでも表現しました。
はじめは「パステルカラー」や「くすみトーン」でふんわり柔らかく、フリル、シースルー、パフスリーブ、などわかりやすいトレンド要素を盛り込み、仕事もオシャレも楽しくやれる働き女子というイメージに。

ジャケットの色使いやリュックとのバランスで元気で人懐っこい雰囲気も表現しています。しかし高橋との出会いを経て、実は周囲が求める人物像に無意識に合わせてしまっていたことを自覚していきます。

【第1回】パフスリーブブラウス
 

【第1回】シースルーニット
 

【第2回】薄緑ジャケット+黄色ニット
 

自覚から自認に至る過程で、咲子の視界が鮮やかに彩られていく描写がありますが、その頃から洋服やアクセサリーなど選ぶ物が徐々に変化します。イヤリングに関しては自認前からわりと存在感ある物が好みという設定で、リュックと同様に咲子の個性を表すポイントでもあります。

高橋家初訪問時の衣装は通勤着でありながら、他人と共感できた喜びや高揚感、無邪気に家に上がり込んでしまう勢いなどを、色柄バランスで表現した咲子のメインルックの1つです。

【第1回】黄色ジャケット+チェックスカート
 

【第4回】咲子のイヤリング
 

そして、第3回のポイントカード集めの最中に出会う、咲子の新たな感性の目覚めとなる重要なコート。大きなインパクトがあり、何よりも「一番似合うモノを」と探しました。岸井さんは、ビビットな色がとても似合い、中でも赤とは本当に相性が良く、衣装合わせでは、満場一致でこの真っ赤なコートに決まりました。このコートがきっかけで、咲子は自分の新たな一面を知り、今までは選ばなかった類いのアイテムにも挑戦していくようになります。

【第3回】赤コート
 

実際には、第6回以降にハッキリ印象が変わりますが、そこには高橋の祖母の影響が感じられます。ヴィンテージ物の良さやブローチなどの小物使いを覚え、また、メンズライクな要素も取り入れて着こなしの幅がどんどん拡がります。具体的には古着、デニム、原色、黒、大ぶりなイヤリングなど、第5回までは使用を避けていたアイテムを織り混ぜました。

自分に似合うモノを知っていき、周りのウケを気にせず好きなモノ・コトを直感的に選んでも良いのだという開放感が、自由でカジュアルなコーディネートからも感じて頂けるかと思います。

【第6回】
 

【第6回】赤いカーディガン+デニム

●羽(さとる)の衣装のポイント

羽の洋服選びは着心地が良いことが大前提で、気に入ったものは何度もリピートするという設定です。

良いものをお手入れしながら長く使う習慣が根付づいている、祖母譲りのオシャレ感覚が備わっていて物を見極める目を持つということなので『作り手の意匠が感じられるこだわりの一着』を、メインの秋物アウターとして探すところから始めました。ワークテイストで色落ち感などは無骨な風合いですが清潔感があり、ボタンやステッチの細部にわたってこだわり抜かれていて、かつ小洒落た雰囲気のアウターは、羽のイメージにピッタリでした。

【第1回】青色のアウター
 

ですので、しばらくずっと同じアウターを着ている羽に、すっかりこの青の印象がついたのではないでしょうか。他の服装でも、ハイネックや長袖を多用して肌の露出を極力抑える、身体のラインが出にくい、ゆとりあるシルエットを選ぶ、といったルールの中で似た感じのアイテムでマイナーチェンジをしています。あまり印象を変えないねらいがあり、それが羽の「頑固さ」、羽が背負っている「決意の大きさ」を物語っています。

【第3回】
 

【第5回】
 

それから羽を語る上ではずせないのが、「朝食うどん」を踏むときのエプロンルックと肌寒い日に羽織る半纏(はんてん)です。味のある日本家屋で毎日丁寧に暮らしている様子がより伝わったかと思います。

【第3回】
 

【第6回】

●一(カズ)の衣装のポイント

明るく真っ直ぐ迷わずに生きてきたようなキャラクターのカズくんに、ふたりの横で思う存分に「陽気パワー」を発揮して欲しくて、暖色系中心のコーディネートでまとめました。分からないながらも、ふたりを理解しようと学ぶ素直さが、育ちの良さ、王子様感にも繋がっていると解釈し、スーツの着こなしや白いスウェットパンツ、キャメルのチェスターコートなどを使って、その部分を表現しています。

【第4回】オレンジニット+白スウェット
 

【第5回】
 

【第3回】グレージャケット+ギンガムチェックシャツ、オレンジタイ
 

【第6回】ピンクのパーカー+キャメルコート
 

衣装は、物語の設定に捉われ過ぎると少々物足りないルックになってしまうことがあるので、役を演じられる俳優を更に活かしながらのドラマオリジナルの提案が重要となります。お芝居+提案要素で人物の側面も描き、誰一人として単純ではないという『恋せぬふたり』における私なりのメッセージを込めました。
オリジナル脚本である本作は、オンエアで提供される内容が全て。先入観なくダイレクトに受け取れるので、衣装からの視覚情報によって、より多面的な解釈をしながらご覧頂けたら、更にこのドラマを楽しめると思います。

次回は1週間空いて、3月14日の放送になります。羽の過去に果たして何があったのか。次回もお楽しみに!

 
高橋さやか
衣裳/デザイン/スタイリスト。近年の主な映画公開作に「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017)、「去年の冬、きみと別れ」「ハナレイ・ベイ」(2018)、「蜜蜂と遠雷」「凪待ち」(2019)、「青くて痛くて脆い」(2020)、「Arcアーク」(2021)、他にNetflix「火花」など。NHKでは「舞え!KAGURA姫」(2016)、「真夜中のスーパーカー」(2018)、「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵」(2020)、「ドリームチーム」(2021)ほか。

 
 
よるドラ「恋せぬふたり」 総合 (月)よる10時45分<全8回>  NHKプラス&NHKオンデマンドでも配信中 第7回  3月14日(月)放送

NHKプラスでは放送後1週間見逃し配信しています

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