恋せぬふたり制作日誌特別版 アロマンティック・アセクシュアルの当事者に聞く!後編

スタッフ
2022年3月30日 午後0:00 公開

企画演出の押田です。 前編に続き、特別企画としまして、「恋せぬふたり」を当事者の皆さんがどうご覧になったのか。座談会形式で振り返ってみようと思います。このドラマの考証に入っていただいている中村健さんを司会に、その様子をお送りします。

前編はこちら

〇座談会参加者の紹介(順不同)

中村健さん【なかむら・けんさん】(20代) 
本会では、司会を担当。17歳で「アセクシュアル」という言葉を知り、自認。普段は「なかけん」として活動
「恋せぬふたり」のアロマンティック・アセクシュアル考証。
 

大熊菜央さん【おおくま・なおさん】(33歳) 
ノンバイナリー。シスヘテロ男性のパートナー、ハムスター、デグーと楽しく暮らすアセクシャル家族。出会って1ヶ月、驚異的なシンクロ具合に意気投合し「家族になりませんか」とアプローチ。家族生活は今年8年目を迎える。
「恋せぬふたり」では取材協力として、意見をもらっている。
 

火丁さん【あかりさん】(30代) 
関東在住の会社員。29歳の時に「アロマンティック・アセクシュアル」を自認。同人誌で自分の体験談を発信中。
 

れいすいきさん(20代後半) 
男性。関東在住の会社員。3年ほど前に「アセクシュアル」を自認。
Twitter、noteなどで体験談を発信中。
 

トリさん(40代) 
関東在住の会社員。
5~6年ほど前に「アロマンティック・アセクシュアル」を自認。趣味はトルコ手芸のイーネオヤ。
 

藤彌葵実さん【ふじや・あみさん】(30歳) 
島根県の町役場勤務。ノンバイナリー(Aジェンダー)・アロマンティック・アセクシュアルのクエスチョニングとして、中山間地域で生活中。

※当ブログは参加者の皆さんに文面等、全て許可を得た上で掲載しております。

〇他の人との関係性や距離感での難しさ

なかけんさん…次は、他者と関わる中で「アロマンティック・アセクシュアル」であることで難しかったことについて。とか。それこそシーンでいうと5回のところ。咲子と千鶴との関係性とか、カズくんとの関係とか、そういう他者との関係においてこれまで何か感じることがあったか、お聞きしたいなと思ってます。

れいすいきさん…それでいうと思い浮かんだのは、一緒にデート、というか当時は、自分はデートだと思ってなかったんですけど、食事に誘われて、食事をしてそのまま楽しかったですねと、自分は終わってたつもりが、相手のことも知っている共通の知人からはもう一歩、なんで踏み込まなかったんだ、みたいな感じで言われて。「何で恋愛関係に行かなかったのか」っていうふうに責められたり。どんなに説明しても、相手としては「自分に魅力がない」みたいな捉え方をされてしまうことがありました。

あとは、男性だと童貞みたいな言われ方をしますけど、特に会社に入ってから性体験を盛んに話題にされるということが多くなったかなというふうに思います。気にしなければいいという考えもあるとは思うんですけど、言葉のかけられ方としても、何かあるべき状態に達してない未満というか。達していないみたいな形の扱われ方をするので、もどかしさみたいのはすごいありました。それってすごく平易にいったら「モテてない」みたいな話にもなるので、単純に自分がモテてないみたいなふうにしか説明できない。そういうもどかしさは今もあります。

なかけんさん…お話を聞いて思い出したんですけど何か「相手にされない負け惜しみじゃない?」とかって言われたこともありましたね。

れいすいきさん…理想が高過ぎるみたいな言い方も。

トリさん…私は、つきあった人とは全然うまくいかなかったんです。劇中の高橋羽さんみたいに、手つなぎとかそういうのに嫌悪があるんですよ。あの触れたりするの苦手で、結局、そういうのが大丈夫な時とすごくダメなときとかが何かユラユラしていて。つきあってはいたんですけど、やっぱりうまくいかないみたいなことになっちゃうんですよね。だから、つきあってた人とは、やっぱり何かうまくいかないって言って、別れることになりました。

最近なんですけれども、「あれ俺とつきあってるんじゃなかったの」みたいなエピソードが最近あって。気を付けなきゃいけないなと思っていました。思わせるようなことやっぱりやってたんだなって。私は友だちだって思ってたんですけど、向こうは全然、友だちだと思っていなかったっていうところが、それで相手を傷つけちゃったなっていうのはありました。

なおさん…私は概念も全く知らなかった学生時代には、バイト先でもサークルでも、認識違いの関係性…ゴタゴタはすごくありました。高校生ぐらいのとき、会えばずっと話してて毎日夜中まで電話したりする子がいたんですけど、周りから「付き合ってるの?」って聞かれた時に、お互いが「俺ら恋愛感情とか小学校2年生ぐらいで止まってるんだよね」みたいな言い方してたんですよ。相手も似たような感覚なんだって思って、すごくうれしくて。それで仲良くしてたんですけど、それ(夜中の電話)が何か月か続いた時に、相手からのめちゃめちゃ熱のこもった「好きだよ」っていう言葉を聞いて、その時はすごくショックだったんですよね。同じと思ってたのに、違っちゃったんだっていうのがショックで。

「私は恋愛感情を抱いてません」って伝えたことによって、メチャメチャ仲よくても離れていっちゃう方もいるので、その度に恋愛感情以外でそばにいてもらえなかったってことは何か自分の人柄が問題なのかと思ったり、自己嫌悪になったり自分を責めたりしてました。

でもお互いの関係性で、相手に何を求めてるか、優先順位の違いがあるだけだったんですよね。「接触」だったり「恋愛的な気持ちのやり取り」の優先順位が高い上で私と関わってた人は、離れていって当たり前だし、決して私が私を責めることではなかったんだなってことを何年も経ってから、思いました。

すごい仲いいだけなのに、絶対に周りからは恋愛にこじつけられちゃう環境でした。混乱しながら、その中で自分は限りなく少数派だから、自分が悪いんだ、自分が変わらなきゃいけないんだって思ってしまった。仲よくしたら、必ずトラブルみたいになっちゃうことで、何をどうしたらいいか分からなくなって誰とも話せなくなりました。今もまだ(距離感への戸惑いが)あります。

〇咲子の距離の取り方について

トリさん…咲子の距離の詰め方はすごいなと思います。私はそんなに人なつっこい方じゃないんで、咲子は人が好きなんだなって、純粋に思ったし、その距離の詰め方はちょっと危険だよっていうときもありました。

なおさん…私は、咲子がアセクシュアルだから、っていうふうには見てなかったです。咲子のキャラクターとして、自分の感情が昂って嬉しくなっちゃったら、すごい距離感近くなっちゃうんだなって見方をしてはみた一方で、過去のエピソード(第3回)、学生時代に付き合ってることになっちゃってたとか、サークルのメンバーにそのことで自分が悪く言われちゃってたとか。私も同じような出来事が何度かあるんですけど、そんな経験をしていながらも、咲子はよく人のことを苦手にならず健やかに育ちましたねとびっくりしました。

藤彌さん…距離の詰め方としては、私もどっちかっていうと詰める方なので、自分の性格的にわかるなと思いましたし、特に変だなとは思いませんでした。けど、それを理由に、周りから、あなたが距離詰めすぎなんでしょとか、あなたの態度が悪いんでしょって言われるんだろうなっていうのはすごく感じましたね。

振る舞い方を変えなさいって言われても、その先の「ここまできたら離れなきゃ」みたいなラインが、咲子も私も分からない方なので。それをやろうとすると、自分としては人と仲良くしたいのに、めちゃくちゃ誰とも仲よくしないか、めちゃくちゃ仲よくしてトラブルが起きるかっていう、何かこう極端な二択になっちゃいますね。

仲良くしたら恋愛関係でトラブルになって、何か、座談会というか、このトラブルを解決しよう会みたいなのが開かれたことがあったんですけど。「いや好きなんでしょ、藤彌さん」みたいな。恋愛前提の人たちの中でひとり、「いや別に恋愛感情じゃないと思ってるし」っていう話をしたり・・・。

〇嫌悪について

トリさん…性嫌悪とか接触嫌悪とか、恋愛嫌悪とかがものすごく揺れてる時があって、性嫌悪がひどい時は、もう本当にスマホの広告で、何かちょっとエッチそうなゲームのあれができただけで画面たたき壊したくなるような時があるんですよ。なんでもないときは、広告が見えないんですよね。スルーしちゃう。

そういう何かブレがあって、異性とつきあってた時は、あんまり人と触れるとか、触られるっていうのが、昔から本当に嫌で。そういうところも、高橋さんの「あんまり触んないでください」っていうのはものすごく共感できるんですよ。

藤彌さん…私は、嫌悪がない方で、何か喜んでもらえるなら、やろうかなみたいな、
例えば、オムライス作ったらすごい喜んでたから、次も作ろうみたいな気持ちと同じ感じで。どっちかっていうと積極的にやってもいいっていうタイプです。

私は相手のことが、人として好きとか、親密さを感じるっていうのはあるんですけど、どんだけ好きな相手でも、その相手がほかの人と何してようが全然嫉妬しない。楽しかったらいいんじゃないって思うんですね。

誰に対しても同じような気持ちが同時に向くので、これは恋愛感情じゃなくて、ライクの好きだなっていうふうに思ってます。

れいすいきさん…たまにこう「恋愛作品を見ているから恋愛も興味あるんじゃないか」とかって言われたりしますけど、BLを好きな女性の方いるじゃないですか。ボーイズラブ作品が好きって、今でこそ結構すごい市民権を得ていて、皆さんの周りにももちろんいらっしゃるかなと思うんですけど、その女性の方に「あなた男性になって男性のことを好きになったら?」みたいなふうに言えますか。たぶん言わないですよね。そんなふうに、僕も見ている分には嫌ではないけど、自分もそうなりたいとは思わないんですよね。

嫌悪はないけど、自分がするということに関しては違和感というか。何かちょっと別にしたくないなっていう思いがあるというような感じですね。性嫌悪については、男子に限られるかもしれないですけど、下ネタで盛り上がるみたいな雰囲気があると思うんですが、自分は「それで盛り上がってるの、これ意味あんのかな」と思って。社会人になっても、そういった話が出ることがあった時は、心を殺して、自分は助演男優賞を取るんだっていう役者の気持ちでその場を過ごしています。

火丁(あかりさん)…私の場合は、性嫌悪あるかないかって言われると、自分でも△かなっていう感じです。

漫画の中の世界で、性的描写は全然平気なんです。自分より遠い人とかは、それこそ本当に芸能人が結婚しちゃった。ふーんみたいな、どうでもいいみたいな感じなんです。けど、現実世界で自分がキスやセックスをするのは絶対嫌。なんか地味に反対に近い人とか。「結婚しましたけど、子どもが産まれます」っていう時は、「ウッ」てなった時があるので、何かよく分かんないんですね。

就職したてのころ、会社の歓迎会とか飲み会とかで男性陣で、お酒が入ると下ネタゾーンにはいることがありました。男性陣が私とかいるのに、思い切り風俗に行った話をし始めて、もう本当「オエー」って感じだったんですよ。

配慮はちょっと欲しかったなっていう、そのアセクとか女性とかじゃなくって、人間としてちょっと、こう配慮はして欲しかったなっていうのはあります。

なおさん…絶対したくないけど嫌悪はないみたいな感覚なんですよね。

気持ち悪いとかではなく、絶対にいらないみたいな、何かそういう感じに近いというか。自分に向くものには嫌悪あるのかな…難しいですね言葉にするのが。

〇未来にむけて

なかけんさん:最後にこんなこういう社会になったらいいなみたいなのがあれば、ぜひ、聞かせてほしいなと思います。逆にこういう社会にはなってほしくないとかでも勿論大丈夫です。

藤彌さん…性別とかセクシャリティーとかっていっぱいあるよね、みたいなことをわかってもらう機会があれば、いいなと思っていて。私はノンバイナリーでアロマンティック・アセクシュアルですけど、「藤彌さんは女性に見えるので、男性に見える人と恋愛感情になるはず」っていう前提があり、それがいろんな誤解につながっている気がします。だから、そもそも性別二元論とか異性恋愛至上主義っていうのがなくなれば、多くの問題は解決するなと思うんですよね。

こういうことについて学校とかで話をすると、先生も生徒も「初めて知ったことがいっぱいありました」とか、「社会に出る前に1回でもこういう授業ができて本当によかったです」みたいなことを言われるんですけど、そもそも、全ての子どもが、1回だけじゃなくて、こういう考え方というか、正しい知識っていうのを得られる社会になれば、ほとんどの困難がなくなるんじゃないかなって思ったりします。

例えば、性別二元論のもと、少女マンガ、少年マンガっていう言い方があったり、男性が女性に恋愛感情とか性的欲求を抱いてるっていう前提で、ヒロインと必ず付き合うみたいなのとか、男子は女湯のぞきに行くっていう、そういう描写があったりとかして。あらゆるところでそれが正しいとされてしまっているから、そうなっちゃうんじゃないかなと思います。

火丁(あかり)さん…あなたはあなたのまま存在していいんだよ、みたいなそういう教育っていうのは何か必要かなと思います。私もなんかアセクシュアルってことはもうちょっと早く気付けてたら、結構もやもやの時期も短く済んだかな~なんて思うんですけど。本当にいろんな形があっていいんだよってことはやっぱり多くの人に知ってもらいたいなっていうのはありますね。

あと、いきなり説明から入るんじゃなくって、アニメとか親しみやすいもので、本当に正しい知識は必要ですけど、何かヌルっとこう、アニメとかで親しみやすく本当に短い時間でもいいんで。そういうのがあったら、すごくいいなと思います。

なおさん…ドラマとかのエンタメやコンテンツって、例えば、セクシュアルマイノリティとされる方が出てくるとか、アセクシュアルが出てくるっていうとまだまだ意図を求められちゃうと思うんですよ。なんでこの人出してきたの、みたいな。何かそういう意図が求められなくなるような、意図を勘案するまでもなく、当たり前にいるよねって描き方のドラマがきっといっぱいあれば、自然とそういう人いるよねとか、そういうのも素敵だねって、なってくんじゃないかな、なるといいなって思いました。

藤彌さん…例えば8%は、LGBTQ+の人が出ているんですかとか。何割は車いすの人が出てて、何割は身体障がいのある方が出てて、何割は精神障がいのある方が出ててっていうのを、もっと現実社会と同じ割合にしていくと、ドラマの作り方って全然違ってくると思うんですよね。たとえそれが1%だとしても、100人いたら1人出てるって結構な割合じゃないですか。今ってシスヘテロで健常者といわれる人ばっかり出てるから、逆にそれが現実とミスマッチになってると思います。

トリさん…私は、あんまり、創作とかそういうドラマとかそういうのはあんまりよく分からないんですけれども、パラリンピックの前に小さいアニメを、3本ぐらい作ってやってるのを見たんですけど、あんな感じで、世界にはいろいろな人はいるよ。車いす乗ってる人もいるし、足がない人もいるし、恋愛しない人もいるし、同性が好きな人もいる。そういうのを何か、ちょっと示していけるような、アニメだったら何か目に留まることが多いと思うんですよ。そんな感じで、啓もうしてもらえたら。

れいすいきさん…1人で住んでるから別に不幸というわけではもちろんないですし、何かひとりの描き方についても、さみしいみたいなものとは違ったものもあるのかな。その中で1人、2人、3人以上での暮らし方みたいな、関係性の描かれ方もあってもいいのかなと思ってます。

なかけんさん…今回のドラマでもね。カズくんと3人で家族になっちゃえばいいのにみたいな意見とかがあって、それはすごい新鮮で、むしろ今までのドラマではそういう意見って出なかった気がするので。2人に限らなくていいんじゃないかって思ったりしました。
皆さん本日は様々なお話を聞かせていただき本当にありがとうございました!自分では考えたこともない視点をいただけたりして、司会というより一参加者として笑、楽しんでおりました笑

アロマンティックやアセクシュアルにも多様性があり、一人一人違うことを知っていただきたいですね。

改めて、皆さんありがとうございました。

    なかけんさん、参加いただいたみなさん本当にありがとうございました。放送開始から掲載させていただいた「恋せぬふたり」制作日誌ですが、この特別版をもって終了させていただきます。ドラマ本編だけでなく、制作ブログを最後までご覧いただいて誠にありがとうございました。普段はあまり知ることのできない制作の裏側やスタッフの思いなどをできる限りお伝えさせていただきました。少しでも「恋せぬふたり」を楽しむきっかけになっていたのなら…、思いが深く届いていたのなら…幸甚に思います。

最終回の再放送もぜひご覧ください。またお会いできる日まで。本当にありがとうございました!

よるドラ「恋せぬふたり」 総合 (月)よる10時45分<全8回>※本放送は終了しています NHKオンデマンドでも配信中

最終回「再放送」 4月1日(金)午前1時44分から <木曜深夜>

NHKオンデマンド