考証チームブログ 第8回

「恋せぬふたり」考証チーム
2022年3月21日 午後11:15 公開

このブログは、よるドラ「恋せぬふたり」のアロマンティック・アセクシュアル考証チームによるコラムです。

【最終回について】

(中村):第8回、お疲れ様でした!ついに最終回となりましたね…。皆さんはどのように結末を見届けましたでしょうか。この考証ブログも最後になると考えるとなんだか寂しく思いますね。(といいつつ、こちらのHPではないですが別の形式で継続する予定です。最後にお知らせを書いておりますのでぜひご覧ください。)

(三宅):そうですね…。これまでの登場人物の様々な変化が思い出されます。最終回はそれぞれの人物が描かれていたのが印象的でした。

(中村):まずは、咲子の母、さくらですかね。第6回の面会のシーンでも気まずい雰囲気だったため、心配ではありましたが、「私の知らない幸せを掴み取ってほしい」という咲子の背中を押す力強い言葉に希望を感じました。

(今徳):『さくら(母親)の知っている幸せ』と『咲子の知っている/知っていく幸せ』を一緒にしないところに覚悟と優しさを感じました。咲子の父、博美もほっとしている様子が目に浮かびますね。咲子が葛藤する中で、母と父が葛藤する姿も描かれていたのが印象的でした。

(三宅):また、カズくんと上司のシーンも印象的でしたよね。上司も変わっていくことで、職場が咲子やカズくんにとって働きやすい場所になっていけば良いですね。コラボ商品をきっかけに、今後も関係がありそうな咲子と遥さんのこれからのお仕事ぶりも楽しみですね。

(今徳):そういえば、千鶴さんのお客さんとお話している姿も見えましたね。あとは、「大人すごろく」に縛られていたみのりさんも、これからは自由に生きていければ良いなと思いました。

(中村):そうですね。自由といえば、咲子と高橋も最終的には意外な決断をしていましたね。ふたりにとって、一緒に住まなくても「味方」だし、そして全部「仮」で良いという話は印象的でした。

(三宅):今振り返ると、最初は「家族」っていう逆に言葉に縛られていたのだなと思いました。でも、一方で「家族」という言葉を(仮)でも引き受けたからここまで来られたとも言えるので、セクシュアリティの話もそうですけど、はじめから言葉がなければ良いというわけでもないというストーリー展開が個人的に好きでした。

(中村):それから、全体を通して、これまでは咲子が高橋から何かを教わるという様子が多く見受けられた印象でしたが、後半ではその高橋も咲子からいろんな気づきを得て、教わっていくという様子が素敵だなと感じました。

(今徳):咲子はアロマアセクを自認し、生き方について考え、変化を重ねているように伺えましたし、高橋も周囲の人からの影響を受けて、自身の殻を少しずつ飛び出していくような変化を感じましたよね。

(中村):陽気レベルの高いカズくんの素直な姿勢に影響を受けた部分も大きそうですよね。そして、カズくん自身の変化も目を見張るものがあり、第1回から最終回にかけてここまで印象が変わるとは思っていませんでした。

(三宅):アロマアセクとそうではない人の分断のようにも見えてしまう前半と比べて、後半ではそれぞれが影響し合いながら違いを受け止めていくというプロセスを見られてよかったです。最後が一人ひとりの幸せを探していくという結びになっているところも印象的でした。

(今徳):今回の振り返りだけでだいぶ長くなってしまいましたが笑、最終回ということもあるので、続いて全体を通しての振り返りと皆さまへのメッセージを持って、この考証ブログを終えたいと思います。


【全体を通して】

(中村):まずは皆さま、約3ヶ月間本当にお疲れ様でした!考証チームとしては、取材を受けた頃から数えるとおよそ1年半以上に渡り関わってきたわけですが、放送を終えてお二人はどのような気持ちですか?

(今徳):最初は不安でしたが、様々な話し合いを通して少しずつ安心していけてよかったですよね。そもそもこういう作品が作られること自体に意義があったような気がします。今後にも期待したいです。

(三宅):アロマアセクではないと思っている人がドラマを見てこれまでの自分の言動を振り返るきっかけになったこと、カズくんが変化していく過程を見せることで相互理解の可能性を提示できたことは大きいと思います。

(中村):そもそもアロマアセクの知名度が低い中で放映できたことが大きいですよね。このドラマで知ったという人も多くいらっしゃると思うので、これから少しずつ社会が生きやすくなったら良いなと思います。本作をきっかけに性愛や恋愛、関係性について改めて考えるきっかけになることを願います。

(今徳):ただ、当然ではありますが、本作でアロマンティックやアセクシュアルの全てが描けたわけではありませんし、不十分だったと感じているところもあります。

(三宅):良いところも批判すべきところもあったと思いますので、今後もぜひ皆さんの率直な意見を聞いていきたいですね。

(今徳):ドラマ掲示板やSNSなどを見ていて「私のこれまでのモヤモヤを言葉にしてくれてありがとう」といったような声を多く見かけました。本作の放送枠でもある『よるドラ』のテーマは「これは自分のことを描いている・自分のドラマだと思ってもらえるもの」、「刺さる人には深く刺さるもの」だと聞いたので、それは達成できたのではないかと思います。

(中村):内部会議の際も、この物語が本当に誰かに刺さるのか、常に悩んでいましたもんね…(笑)。演出の方ともお昼から日が沈むくらいまでの打ち合わせを何度もしたのが懐かしいです。今思うとあれだけ深く相談し合いながら進められたことにとても感謝しています。

(今徳):脚本家の吉田さんも、そういった様々な相談がある中で、悩みながらも物語の流れを作ってくださり、ありがとうございました。

(三宅):また、当事者役を演じるにあたった岸井さんや高橋さんも当事者として不自然じゃないか、誤解が生まれないかを考えて下さり、その姿や姿勢を見ることができてとてもありがたいと思いましたし、希望がもてました。もちろん、当事者役ではない皆さんも真摯にこのテーマと向き合ってくださっていました。

(中村):関わられたすべての皆さまに深く感謝いたします!そして視聴者の皆さま、最後まで見届けて下さり、本当にありがとうございました!


【調査とドラマ】

これまで考証チームブログでは、「恋せぬふたり」の振り返りをしながら、本編と関連する調査として『アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020』(Aro/Ace調査実行委員会 2021)を紹介するというスタイルでお送りしてきました。ドラマのブログとしては少し珍しい形式だったかもしれませんが、「勉強になった」、「もっと知りたい」という声もいただくことがあり、考証チーム一同、とても光栄に思います。

このブログで調査結果を紹介するようになったのは、ドラマの制作中に私たちが何か意見を述べる際の資料として引用していたことがきっかけです。これには、制作に関わる人たちに「アロマンティック・アセクシュアルは●●だろう」ではなく、「色々な人がいるけれど、今回はこういうキャラクターにしよう」というように多様性を意識しながら制作してもらいたいという思いがありました。しかし、多様性を意識しても描かれるキャラクターの数には限界があります。そんな時に、思いついたのがブログでした。高橋がブログでアロマンティック・アセクシュアルに関する情報を発信しているように、私たちも本編では描ききれなかった部分を解説するブログを書きたいと思いました。NHKでは、以前から制作スタッフなどによるブログが作られていたこともあり、晴れて「恋せぬふたり」の公式サイト上で「考証チームブログ」がスタートしました。

以上のような経緯で、ドラマの内容と関連する調査結果を紹介するスタイルが確立したわけですが、今回は最後に私たちが調査結果を初めて発表した際に述べたメッセージをご紹介したいと思います。

以下は、その際に使用したスライド資料です。

*アロマンティックやアセクシュアルをはじめとする多様なセクシュアリティを、スライドでは「Aro/Ace」と表現しています

これまで本ブログを読んでくださった皆さんに、考証チームとして伝えたいことは調査結果を発表した時と変わりません。アロマンティックやアセクシュアルをはじめとする多様なセクシュアリティの人がいること、同じセクシュアリティでも多様性があること、恋愛や性愛を前提にしないことなどです。これらのメッセージは本編でも繰り返し提示されていることでもあります。ドラマは最終回を迎えましたが、これらのメッセージをどうか忘れないでいただければ幸いです。

「恋せぬふたり」をきっかけに、「すべての人が笑顔になれる」社会が訪れることを願います。

【今後の考証チーム(As Loop)の活動について】

以上で、「恋せぬふたり」考証チームブログは終了となります。

今後は私たちが普段活動している、As Loop(アズループ)のサイトにて不定期でアロマンティックやアセクシュアル、その周辺セクシュアリティについての質問にお答えするブログを続けてまいります。ぜひそちらもご覧いただけたら幸いです。

そして、本ブログで紹介した調査の最新版、「アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2022」を今年の6月前後に実施することが決まりました。定期的な調査のため内容や対象は大きく変わりませんが、ご興味がある方はAs Loopサイトで発表しますので続報をお待ちください。

本作が皆さまにとって、「私の人生は私が決める」ための何かのヒントになれば嬉しい限りです。

これまで、本当にありがとうございました!

As Loopサイト (※NHKサイトを離れます)

 
【参考文献】

Aro/Ace調査実行委員会(2021)『アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020調査結果報告書』(2022年2月22日取得) (※NHKサイトを離れます)

Aro/Ace調査実行委員会(2021)『アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020概要報告資料(210425修正版)』2022/2/22取得 (※NHKサイトを離れます)

【調査概要】

  • 調査方法:ウェブ上のアンケートフォームを利用(Googleフォーム)

  • 回収期間:2020年6月1日12:00~2020年6月30日12:00

  • 調査対象:以下の1.~3.全てに該当する方

  1.   アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム
    (アロマンティック、アセクシュアル、ノンセクシュアル、デミセクシュアル、デミロマンティック、リスセクシュアル、リスロマンティックなどその他周辺のセクシュアリティ)を自認している、またはそれに近い、そうかもしれないと思っている方  

  2. 日本語の読み書きをする方(国籍、居住地は問わない)

  3. 年齢が回答時13歳以上の方

  • 総回答数:1693回答(有効回答:1685)

  • 最大設問数:98問(内5問が必須項目)

  • ウェブサイト、Twitter、LINEグループ等で周知