数学ノート BSD予想(シーズン2)

NHK
2023年12月11日 午後10:24 公開

こんにちは!笑わない数学のスタッフがお届けするブログ、数学ノートです。

シーズン2の最終回「BSD予想」、いかがでしたか?

「むずかしかった!」「途中から(?)ついていけなくなった!」という声が、いつもの回以上に多かったかも・・。

BSD予想は、現代数学の7つの難問に挙げられるだけあって、何が問われているのかを感じ取るだけでも、数学の専門家以外には難しい内容だと本来はおもいます。スタッフ自身も、じつは準備を始めた頃、BSD予想にはガクガクブルブルでした。

でもシーズン2ですごく難しい回をやりたい、という気持ちもあって、ミレニアム賞問題でまだ取り上げていなかった問題は聞いたことがない単語がどれも混じっていて話の見当もつかないけれど、でも、BSD予想は、ほんのすこしは食らいつけそうな雰囲気がちょっとだけあって、もうこれしかないと覚悟を決めて勉強してみました。

スタッフは毎回、脳の糖分が空っぽになる感覚で勉強しています(お腹もすきます)。なんですが、今回のテーマは入門書が極めて少なくて困りました。代わりに助けになったのが、ネットでさまざまな方が公開していた解説記事です。どの回でも参考にさせてもらっていますが、今回は本当にお世話になりました。この場を借りて勝手ながらお礼を申し上げたいです。

ちょっと脱線しますが、ネットにさまざまな日本語の数学解説が存在していることは、日本の文化の厚みを示していると感じます。そんな土壌から栄養分をおすそ分けいただいてるこの番組も、いつか何かの苗床になると嬉しいともおもっています。

さあ今回のブログも、内容をすこし掘り下げる話題をお届けします。

BSD予想を今回のような順序で解説しているのは、前例がないんじゃないかとおもいます。

通常の解説だったら「そもそも難問に興味をもつのは、数学に馴染んでいる人なんだから難しい数学の言葉をつかって大丈夫だろう」とか「数学なんだから厳密な表現が望ましい」とか考えちゃうでしょうし、「BSD予想の周辺にはいろんな数学的に興味深い話題があるから、それも紹介したい」みたいな欲も出てしまって、盛りだくさんになりがちな状況があります。

だけど、わらすうのモットーは、誰でもアートを楽しめたり思わず感動できるのと同じように、数学だって楽しんで感動できるはずだ、だって天才たちが人生を賭けてしまうほどの魅力があるんだから、っていうものです。だからスタッフは、(自分たちのように)予備知識がない数学ファンにむけて、30分という時間の制約をいわば逆手に取って、BSD予想とは何か?に絞って展開を考えることにしました。

とはいえ、楕円曲線の専門書を開くと「代数曲線の種数(しゅすう)」「有理点の群構造」「L関数(エル関数)」みたいな、数学を専攻しないと出会わない言葉が最初から出てきます。脳の糖分が空っぽになるまで勉強したスタッフとしても、その成果を番組に入れたくなる気持ちもあるんですが、そこは我慢…。

番組のゴールに意識を集中させて、どの話題が不可欠で、どこは諦めても大丈夫か、よりみち的な要素が理解を妨げていないか、ホワイトボードで議論して台本を書いては直す工程を何回も繰り返して生まれたのが今回の展開です。

ではここからは数学の話もすこし。なるべく高校数学の範囲で書いてみます。

有理点は数学の一大テーマ

番組では楕円曲線の話に入る前に、ウォーミングアップとして、円の場合を考えてみました。最初に、座標が「整数」で表される点がいくつあるのかを探しましたよね。それは簡単です。方眼紙に円を書いて、マス目の角を円が通るかを見ればいいですね。その角を完璧にズレなく通っているかきちんと確かめるには、x座標とy座標の値を円の方程式に代入して両辺が等しくなるかを調べればOKです。尾形さんもそう説明していました。

円がウォーミングアップとして分かりやすい理由は他にもあります。「円という図形は大きさが限られている」からです。たとえば上の円を囲む正方形を考えると、一辺の長さが4であれば、すっぽり収まります。すると、円の座標が整数になる点の「候補」は、その正方形の内側にあるマス目の角に絞られます。それを1つずつ確かめていけば点の個数を割り出すことができます。

ところが、円ではなく、たとえば中学校で習う「2次関数(放物線)」のグラフの場合はそうはいきません。だって放物線のグラフはどこまでも伸びていきますから、すごーく遠い先で、いろんなマス目の角を、その放物線が通る可能性はありそうです。そのような無限の可能性を調べないといけないグラフの場合は、整数の点があるのかどうかは慎重に考える(証明する)必要が出てきます。

楕円曲線も、番組で紹介したように、どこまでも伸びていくグラフです。この場合も「整数」の点が幾つあるのかは、そう簡単には結論は出ず、慎重に考える(証明する)必要が出てきます。さて楕円曲線の話はまた戻ってくることにして…。


本題は、整数の点ではなく、有理点(おおざっぱに言えば座標が分数で書ける点)を探すのでした。ふたたび円の場合で考えてみましょう。

座標が分数なら点の位置を細かく指定できるから、整数の点とちがって有理点は幾らでも見つかりそう…とおもいきや、意外にそうでもないんです。例として尾形さんが最初にチャレンジしたこの円でいうと、

たとえばx軸から45度のところの座標は(1,1)です。そこは整数の点ですし、つまり有理数の点でもあります。じゃあ別の点、たとえば円がx軸と交わる点の座標は、

(x,y)=(ルート2,0)

です。ルート2は有理数ではありませんから、この点は有理点ではありません。ほかの点でも調べてみましょう。たとえばx座標が2分の1になる点はどうでしょう? 円の方程式のxに2分の1を代入して、yの値を計算すると…

(x,y)=(2分の1,2分のルート7)

です。残念ながら有理点ではありませんでした。こんな風に当てずっぽうで有理点を探していくと、案外みつからず、「ん?この円は有理点がほとんど無い?」「むしろルートが出てくるのが当たり前だ」って気もしてきます。

でもでも、番組では、こんな説明も出てきましたよね。

これが何を言っていたかというと、もし円の上に整数の点(有理点でもいい)が1つでも見つかっているならば、じつはそれ以外にも無限個の有理点が存在する、ってことなんです。(円の方程式の右辺が整数なら必ずそうなります)

もうちょっと詳しく言うと、見つかっている点を出発点にして、その点を通る好きな直線を引くと(ただし傾きは有理数で!)、その直線が円と交わるもう一つの点も必ず有理点になります。

つまり、円に有理点があるなら必ず無限個あるし、しかも当てずっぽうで探す必要はなく、確実な探し方だってあるよ、っていう魔法のような話なんです。

こうなる理由は、円の方程式と直線の方程式の2つを連立方程式にして計算すれば、割とすぐに納得できます。よかったら計算を試してみてください。

円の有理点の個数は無限かゼロのどちらか

上の話を知ると「有理点って当てずっぽうでは見つかりにくいけど、やっぱり無限個あるんだよなー」とおもいたいところですが、面白いのは、円の大きさが変わると話がぜんぜん違ってくる、ということでした。

たとえば円の方程式の右辺が3の場合は、尾形さんが番組の中で証明したとおり、有理点がなんと1つもありません。

実はスタッフは、有理点が無いことを最初に知ったとき、うそっ!そんなバカな!とおもいました。

だって有理点はどれだけ狭い領域にも無限に存在しているし、平面は有理点でびっしり詰まっています。なのに、そこに円を書いたときに、有理点を1つも通らないなんて信じられないじゃないですか。

でも、真実は尾形さんが証明した通りなんです。円のグラフはびっしり詰まっている有理点を1つ残らず完璧によけているんです。

番組では(本題のBSD予想まで先が長いこともあり)円の話題はテンポよくお届けしましたが、円の話もじっくり追っていけば「有理点の問題って退屈そうな話だなーなんて思ったけど、なんかすごいかも」と感じがしませんか? おまけに「円の方程式の場合、右辺がどんな整数だったら有理点が(無限に)あるんだろう…」とか「そういえば放物線の場合はどうなんだろう…」とか気になりはじめたら、みなさんが数論という魅惑的な分野に興味を持ち始めた証拠です。

きっと、手を動かして計算したり、証明を考えてみると、この感覚が分かるんじゃないかとおもいます!

尾形さんの背理法で2つの分母が同じだった理由

さて放送後のお問合せで多かったのが、このシーンでした。

お問合せの内容は「なんでxとyの分数は、分母を同じ数にしてるの? 有理点があると仮定しているんだから、xとyが分数で書けることまでは分かるけれど、だからといって分母が共通しているとは限らないでしょ」というわけです。

確かにおっしゃっている通りなんですが、このやり方が間違っているわけでもありません。ちょっと説明します。分かりやすくするため、具体的な数で書いてみます。たとえばxが3分の2,yが5分の1だとします。番組のやり方は、それを通分して、xが15分の10,yが15分の3という書き方に直して証明に突入していく、ということに相当します。だからxとyの分母が共通の整数Cになっていたんです。

「でも、そんなことすると証明の後半で困ったりしないの?」という声も聞こえてきそうです。なるほど、この手の背理法の問題では、有理数を既約分数で書き表して、あとで矛盾を導くのが鉄則なので、その心配は分からなくもありません。ただ、番組の証明ではA,B,Cが同時に同じ数では割り切れないことが鍵で(=A,B,Cの最大公約数が1。このことを「A,B,Cは互いに素」という)、A/CやB/Cが既約分数である必要はありません。

一方、最初に分母を揃えておくと証明がラクになります。ぜひお手元で証明を追いかけてみてください。

局所-大域原理

スタッフが上の証明でもう1つ面白いとおもうのは、無限に存在する有理点を通るかどうか1つずつ順に調べていく(いつまでも終わらない!)代わりに、「素数3で割ったあまり」で場合分けすることで、調べるべき「候補」が3つに絞り込まれ(これならすべて確められる!)、問題が解けてしまうということでした。

番組では3のあまりを使った場合分けをちゃんとは紹介していないのですが…とにかく、素数を経由することで、本来、無限の可能性を調べなくてはいけなかった元の問題を、候補が絞り込まれた有限の問題に焼き直せる、ということです。

こういう考え方を発展させたのが、難しい言葉でいうと、数論という分野の「局所-大域原理」と呼ばれる、とても深ーいものなんだそうです。

そしてこの「原理」は、BSDの2人がやったコンピューター計算ともつながっているんだそうです。そのことはまたあとで触れることにします。

楕円曲線をビジュアル化するために必要なことは?

ここからは楕円曲線について。説明が難しくなりすぎないよう、おもに番組の裏話的なことを紹介しましょう。

今回のCGでは、楕円曲線の有理点を探していくアニメーションを作成しました。有理点の座標はいい加減なものではなく、直線と楕円曲線の交点を調べるまじめな計算を繰り返して、数百個を正しくプロットしています。

たくさんの有理点を見つけていく正確なアニメーションは珍しいです。数学の専門家もはじめて見たかもしれません。スタッフも、有理点が稠密にプロットされていく様子が完成したとき、理論通りになるのは当たり前だけど本当にそういうことなんだなあーと感慨深いものがありました。

数学のビジュアル化は、オーダーメイドな手法が必要です。たとえば今回の有理点でいうと、次々に探していくやり方自体はとてもわかり易いのですが、でも実際の計算は、1回の計算のたびに有理点の分数の桁数がえげつなく増えていくため、普通のコンピュータープログラムではすぐに手が負えなくなります。そのため、ものすごく長い桁数の計算ができる特別な仕組みが必要でした。

なにせ、下のようなややこしい分数を2乗したり3乗したりしていきますからね。

必要なのはプログラムの専門家だけではありません。テレビ番組の動画として表現するには、わかりやすいデザイン、色遣い、テンポ、アニメーションの付け方、キャプションの出るタイミングなど、高度な人間的センスが要求されます。

CG制作に最適なソフトウエアもテーマごとに異なります(結び目理論と楕円曲線のCGではぜんぜん異なります。わらすうのCGチームは毎回、この無理難題の解決策を見つけてきました!)

そもそも楕円曲線を正確に描く手法も、手探りでした。円であればどんなCGソフトでも書けますが、それ以外の曲線はなかなかそうはいかないんです。今回はGeogebraというオンライン上のグラフ描画ソフトに準備段階で大変助けられました。

音も重要な要素です。デザイナーは内容をわかったうえで音の雰囲気を考え、並べ方を組み立てる必要があります。CGにつく効果音は直感的に物事を分かるようにする鍵です。

わらすうという番組は、さまざまなピースが奇跡のように組み合わさって何とか完成しています!

余談ですが、こうしてできた上の画像をよく見ると、有理点は楕円曲線に一様に分布しているわけではないようにも見えます。これはスタッフが計算を数百回で止めたからなのか、それとも計算をこの先も続けても分布に偏りが残るのか? どっちなのか答えは分かりませんが、動きのあるCGを制作したことで、こういう新しい疑問や好奇心も浮かんできます。(数学的に興味深い問題なのかはどうかまではスタッフには分かりませんが…)

BSDのコンピューター実験を追う

このシーンの話題もお届けしましょう。

バーチとスウィンナートン=ダイアーの2人が、1960年頃に大型コンピューターで計算実験したプロット(グラフ)です。

当時の論文には研究概要は書いてあったのですが、結果の表やグラフはありませんでした。でも番組ではこういうビジュアルがあったほうが手触りが感じられますから、スタッフは2人の計算を再現してグラフを作成することにしました。

計算は2段階に分かれます。前半は、さっき出てきた「局所-大域原理」の考え方をつかって、楕円曲線の方程式ごとに、解の個数をコンピューターで数えていく、というものです。ん、いきなり難しい? できるだけ易しく説明してみます。

いまから、ある楕円曲線に有理点が幾つあるか、という問題を考える代わりに、その楕円曲線を、“素数p=3で割ったあまりで計算を考える世界”に持っていきます。しかも有理数ではなく、整数の解(x,y)の個数を考えます。するとxとyのあまりはそれぞれ0,1,2の3通りだけですから、解かどうかを確かめるべき候補は3✕3=9つ。

(x,y)=(0,0),(0,1),(0,2),(1,0),(1,1),(1,2),(2,0),(2,1),(2,2)

この9通りの(x,y)を1組ずつ楕円曲線の方程式に代入して、左辺と右辺が等しくなるかどうかを調べます。

こうして両辺が等しくなるケースが幾つあったかを「解の個数」と呼び、Npと書きます(pは添字で、N✕pという掛け算ではありません。いまの場合はN3となります)。

p=3の場合を確かめ終わったら、次は“素数p=5の世界”で25通りの候補についてそれが解になるかどうか1つずつ確かめます。その次はp=7,11,13…と、どんどん調べていきます(p=2でも調べます)。なお両辺が等しいかどうかを判断するときも、“pで割ったあまりの世界”で考えるのがルールです。

さっきの「局所-大域原理」というのは、こういう“素数pの世界”で数え上げた「解の個数」の情報と、“もとの世界”の有理点の個数の情報が密接に繋がっている、という数学者の自然な感覚なんだそうです。数論という分野では、この考え方がめちゃくちゃ重要なんだそうです。

ただ厄介なのは「解の候補数」が、pが大きくなるとpの2乗の勢いで増えていくこと。1つの組が解かどうかを確かめる計算は一瞬で終わりますが、pの2乗個の候補をしらみつぶしに確かめる計算時間はどんどん膨れ上がります。スタッフは表計算ソフトで一晩以上計算させて、p=2000近くまでNpを求めました。

その計算結果が、番組に登場した、テープ状の紙に記載されている数字の列です。先頭の数がp=2の場合のNp(つまりN2)で、そのあと素数pごとの解の個数Npがずらーっと並んでいます。テープ1枚につき1つの楕円曲線を指しています(バーチたちは数百の楕円曲線についてp=500くらいまでNpを計算したようです)。

さてグラフに至る計算には2段階ある、と書きました。ここからは後半の段階です(ついてきてますか?)。

まずNpをpで割り算します。N3なら3で割り、N5は5で割る、という具合です。割った結果は不思議なことにほとんどのpで、ほぼ1に近い値になるのですが、しかし楕円曲線によっては微妙な傾向の差が出てきます。次に、その傾向をあぶり出すため、N2割る2✕N3割る3✕N5割る5✕…=?という大量の掛け算をしていきます。

すると、ある楕円曲線では、Np割るpをたくさん掛け算していっても結果の値はほとんど変わらないため(なぜならほとんどのpでほぼ1なので)、下の黄色のプロットのように横ばい気味になります(横軸は、掛け算をどこまで続けるかに相当します)。

一方、別の楕円曲線では、Np割るpの値が、1よりすこし大きくなることがそれなりの頻度で起きるため、掛け算していくと結果の値は右肩上がりになります。上のプロットの緑やオレンジ、青になります。

BSDの2人が発見したのは、掛け算した結果の増え方を示す直線の傾きと、その楕円曲線の性質をあらわす「ランク」と呼ばれる整数が、なぜかいつも一致しているようだ、ということでした。ランク(日本語では「階数」)とは、尾形さんが「?(はてな)」と呼んでいた、無限個の有理点が何セットあるか?のことです。

いまのことを数学の言葉で書いたのが、これ。

む、むずかしい…。スタッフはここにたどり着くまで相当時間がかかりました!でもこの難しい山を乗り越えた感動を分かち合いたいです!

ちなみに前半の計算は「フェルマーの最終定理」の回でも登場しました。あのときは「時計を使って解く」という説明でした。

上のシーンがまさにpとNpの表です。この楕円曲線でも、Np割るpがほぼ1になっていることも読み取れますね。BSD予想の回では、この2段目の情報だけをテープ状の紙に表示していました。

じつはフェルマーの最終定理は、ある曲線に有理点が1つでも存在するか?を問うものです。そしてワイルズ博士がたどり着いた世紀の証明には、楕円曲線が不思議な形で登場します。興味が湧いた方はぜひNHKオンデマンドなどでご覧ください。

余白が足りません

あまりに長くなった今回のスタッフブログはこのくらいで終わります。実はこのブログの文字数制限が迫っていて、もう1文字も無駄にできない状況です。

脳の糖分を空っぽにしながらも、こうしてシーズン2をお届けすることが出来ました。楽しかったし、お腹がすいたし、いただいた声援が力になりました。またどこかで!

※ミレニアム賞問題は番組ページのトップに掲載しています。

※深リーマン予想については、このブログ末尾の小山先生の紹介文を!

今回のキーワードと数学者たち

ブライアン・バーチ(イギリス)

ピーター・スウィンナートン=ダイアー(イギリス)

クレイ数学研究所のミレニアム賞問題

100万ドルの懸賞金

円の方程式があったとき(定数項は整数)、座標が整数になる点はあるか?

円の方程式があったとき(定数項は整数)、座標が有理数になる点はあるか?

座標が有理数になる点=有理点

ある直線が、円の有理点を通り、傾きが有理数であれば、円と交わるもう1つの点も、かならず有理点になる

有理点が1つでも見つかれば、ほかにも有理点は無限個みつかる

有理点を求める問題は古代ギリシャ以来、数学史上の一大テーマ

マーカス・デュ・ソートイ教授(イギリス)

「数学の発展に有理点の研究は欠かせない」

有理点が1つも見つからない円もある

有理点が1つも存在しないことの証明

18世紀ごろまでに円や円錐曲線の有理点の法則は明らかに

有理点の問題ってやっぱ地味でパッとしない?

クロード・バシェ(フランス)

ピエール・ド・フェルマー(フランス)

アイザック・ニュートン(イギリス)

レオンハルト・オイラー(この番組の超常連)

カール・フリードリッヒ・ガウス(ドイツ)

アンリ・ポアンカレ(フランス)

ルイス・モーデル(イギリス)

数学者はさらに難しい曲線の有理点の問題へ

楕円曲線 yの2乗とxの3乗の方程式で表されるぐにゃりとしたグラフ(係数と定数項はすべて整数)

楕円曲線の上の有理点の個数は、現代数学の一大テーマ

楕円曲線の有理点を、「いわば自動的に(芋づる式に)」見つける方法

わかっている有理点を出発点に、見つかっていない有理点を求める

ややこしい分数で表される座標の有理点が見つかっていく

有限個の有理点しか持たない楕円曲線

無限個の有理点が1セットある楕円曲線

無限個の有理点が2セットある楕円曲線

※正確には「有理点の群の自由部分が2元生成である」という

無限個の有理点が何セットあるのか?を調べるのはメチャクチャ難しい

1960年代

ケンブリッジ大学(イギリス)

コンピューター研究室

最先端コンピューター EDSAC2

まず、さまざまな楕円曲線の整数解の個数Npを、素数pを法として調べる

つぎに、Np/pの無限積の挙動をビジュアル化

漸近直線の傾きは、楕円曲線の有理点の「?」セットとぴったり一致するようだ

21世紀、新たにわかったことが

BSD予想は、リーマン予想を上回る「深リーマン予想」につながっている

BSD予想が解決されれば、素数の並び方・数とは何か?・宇宙の自然法則の真の姿を、より深く解明できる可能性が

「数学っていうのは、とてつもない深い世界につながっているもんなんですよ」

数学にサンキューーーー

数学者が語る「BSD予想」の魅力 小山信也

1965年,バーチとスィンナートン・ダイヤーは,論文で2つの予想を提起しました.予想1はオイラー積の中心点における収束性(解析的予想),予想2は中心点における零点の位数と楕円曲線の階数の関係(代数幾何的予想)でした.その後,予想2に対し多数の後継研究がなされましたが,予想1に対する進展はほとんど得られず,予想1は忘れ去られた感がありました.

そんな中,2012年頃に東京工業大学名誉教授の黒川信重氏により予想1の重要性が再発見され,予想1は「深リーマン予想」として新たに定式化されました.これによってBSD予想は,リーマン予想をも含む壮大な問題であることがわかりました.今後の数学の発展はBSD予想を中心になされるであろうとすら考えられます.

これまで,2シーズンを通し番組監修に当たり,私は黒川信重先生に個人的に幾度となく助言を仰ぎ,お世話になってきました.本編の最終回を,先生が提起された「深リーマン予想」で締めくくれることを,誇りに思います.

読書案内

● 「数論入門事典」(朝倉書店)の「楕円曲線」の項目(pp. 347-361)

●  黒川信重「超リーマン予想 ~ ゼータ関数の最終予想」

パンサー尾形、BSD予想に挑む!