前回はクモの脚や毒にスポットを当てましたが、今回はクモの巣に注目!
クモの糸から地球を救う新素材が生まれる!?
前回のクモ特集はこちらから
もくじ ●毎日張り替え⁉クモの巣の作り方 ●クモの糸にも種類がある!? ●クモが巣を張って感謝される場所とは!? ●新素材が開発!?とても強いクモの糸の秘密
毎日張り替え⁉クモの巣の作り方
アンチの言い分「巣がジャマ!形も不気味!」 クモの言い分「大変な思いをして巣を作っている!」
クモが”大変な思い”をしているという巣の作り方を見てみましょう。
■枝の間に最初の糸を風に乗せて飛ばす
■最初の糸を足がかりに糸をつたいYの字に足場を作る
■周りを囲いながら放射状に糸を張る
■渦巻き状に足場を作る
■足場を頼りに横に糸を張る
■完成
自分の体の数百倍〜数千倍の長さの糸を出し、完成までわずか30分から1時間。
ほぼ毎日、巣を張り替えます。
クモの糸にも種類がある⁉
大変な思いをして作っているクモの巣ですが、
アンチの言い分「糸がベタベタして気持ち悪い!」
クモの言い分「クモの巣の全部がベタベタしていると思わないで」
なぜクモ自身はベタベタの巣に引っかからないのか?
クモは「ベタベタしていないところを歩いているから」だといいます。
一体どういうことなのか?
わかりやすく解説してくれるのは、イラストレーターのお文具さん。
糸と巣の秘密を解説したゆるアニメはこちら
クモのお腹の中には糸の元になるたんぱく質の液体があります。この液体がクモのお腹の先にある「糸イボ」と呼ばれる突起から外に出ると、固まって糸になります。
クモの巣は、次のような糸で構成されています。
【枠糸】巣を囲い外側から支える
【縦糸(放射状にのびる糸)】巣を中から支え、クモが巣の上を移動するときの足場になる
【横糸(渦巻状の糸)】粘球(球状のベタベタ成分)が付いていて獲物の捕獲に役立つ
クモの糸でベタベタするのは横糸のみ。クモは、基本は横糸ではなく、ベタベタしない縦糸の上を移動するからくっつかないのです。
横糸に触れてしまっても、クモの脚先には小さい毛が生えていて、くっつかずにすみます。
またクモは、巣をつくるときに使う糸のほかに、
突風などで飛ばされたときの命綱になる「牽引糸(けんいんし)」
獲物をぐるぐる巻きにして動きを止める「捕獲糸(捕獲帯)」
など、さまざまな糸を使い分けているのです。
クモが巣が“防護ネット”!?
アンチの言い分「家でもどこでも巣を張られてジャマ!」 クモの言い分「クモが巣を張って大感謝している人もいる」
クモが巣に感謝する人とは、一体誰なのか?
解説してくれるのは、農薬や化学肥料を使わず、さまざまな生き物と共生する農業を研究する川俣文人さん。
川俣さんは「クモは害虫ではありません。害虫から稲を守る防護ネットになっています」とコメント。実際、稲が実ってくると、田んぼ一面にクモの防護ネットが出現します。
稲に被害を与えるウンカやカメムシを、クモが巣でキャッチして食べてくれるので、無農薬で元気な稲を育てることができています。嫌がられることの多いクモの巣ですが、田んぼでは、害虫から稲を守る防護ネットとして、感謝される存在だったのです。
新素材が開発⁉とても強いクモの糸の秘密
アンチの言い分「糸がなかなか切れない!」 クモの言い分「糸が切れにくい!は褒め言葉」
クモの糸の特徴はなんといっても切れない丈夫さ。その強さについて解説してくれるのは、クモの糸を40年以上研究する、奈良県立医科大学名誉教授の大崎茂芳さん。
大崎さんによると、「クモの糸の特徴はただ単に強いのではなく、伸びもあって切れにくいところ。この特徴には、クモの糸を構成するたんぱく質に秘密がある」そうです。
クモの糸は主に「フィブロイン」というたんぱく質がいくつもより合わさってできています。
このたんぱく質には、壊れにくい硬い部分とバネのように伸びる性質がある柔らかい部分があり、2つが強く結びつくことで強度としなやかさを併せ持つ糸になっているのです。
この糸の特性に着目した大崎さんは、およそ3万本のクモの糸を束ねて、1.5mmの太さのひもを作りました。
ひもの強さを調べてみると…
体重は62キロの大崎さんがぶら下がっても切れません!クモの糸って強い!
この強くてしなやかな糸について、現在、クモの糸と同じ構造を持つ新素材の開発が進んでいます。
解説してくれるのは、世界中のクモとその糸から新素材の開発・研究をしている、京都大学大学院教授の沼田圭司さん。
沼田さんによると「まったく同じ糸を作るクモは2つと存在しません。クモは一つひとつ特殊な糸を作っているということで、我々はその理由を明らかにすべく研究をしている」とのこと。
例えば、ジョロウグモ。日本では公園などで見られるクモですが、その糸はあまり伸びないが、比較的強いという傾向があるそうです。
クモによっては、よく伸びる糸を出すもの、水に強い糸を出すものなどがあるそうです。
そこで沼田さんたちは世界各国に生息する1000種類以上のクモを分析し、その設計図のデータベース化に成功しました。
そして沼田さんがいろいろなクモの糸のいいところを活かして開発した新素材がこちらの繊維。
二酸化炭素と窒素を原料として、微生物を使ってクモの糸に似た糸を作り出すことに成功したそうです。
現在は洋服などアパレルなどへの応用を進めています。沼田さん曰く「素材ができると、石油を使わないで物を作ったり、使用後は分解されて水と二酸化炭素に戻るすばらしい素材になると考えています」とのこと。
将来的には、プラスチックやゴム製品に代わるエコな素材になるかもしれません。
例えば車のシートやボディに、この繊維素材が使えないか、可能性が期待されています。
沼田さんによると、洋服や車だけでなく、レジ袋や保存容器などのプラスチック製品、タイヤなどのゴム製品、化粧品を使いやすくする増粘剤など、将来、私たちの身の回りのものに活用されるかもしれないそうです。
クモの糸は、強くて環境にも優しい素材なのです!
まとめ
いかがでしたか?
クモの糸や巣には数々の秘密が隠されていました。
今後、私たちの暮らしに切っても切れない存在になるかもしれません!
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