【脂肪の言い分】太らないように働く!? 細菌と闘う!?再生医療に大活躍!?

NHK
2023年5月13日 午前10:30 公開

脂肪が食欲を抑えている?
人間の体を守る「真の姿」も明らかに!

もくじ
●お腹の脂肪はどうやってできる? ●人間が太らないように働いている 脂肪が作り出す「レプチン」とは? ●新事実!脂肪には細菌と戦う能力がある!? ●脂肪は再生医療で大活躍!

お腹の脂肪はどうやってできる?

アンチの言い分「太る原因だから嫌!」 脂肪の言い分「脂肪は体のピンチヒッター!」

そもそも体の脂肪はどのようにできるのか? お肉などの脂肪を食べると、そのまま体の脂肪になってしまうのでしょうか?

食べ物に含まれる脂肪は、口から体に入ると細胞膜など体を形作るものの材料になります。細胞膜は、人間の体内にある60兆個の細胞を守る重要な役割をしていて、その主な材料になっているのが脂肪なのです。

さらに、脂肪は体を動かす「エネルギー」の材料にもなっています。脂肪は、体にとって大切な役割を果たしているのです。
しかし、必要以上に脂肪を摂ってしまうと、お腹など体の脂肪として蓄えられてしまいます。お肉などの脂肪を食べることは、体にとってとても大切で、必要以上に食べてしまうと余った材料やエネルギーが脂肪になる、ということです。

また、ごはんなどの炭水化物もエネルギーの材料になりますが、必要以上に摂ってしまうと脂肪として蓄えられてしまいます。つまり、脂肪はお肉の脂肪だけでなく、白ごはんなどの炭水化物からもできているのです!

ここまで聞くと、脂肪は余分なものと思ってしまうかもしれませんが、実はそうではありません。エネルギーがなくなってしまったとき、体内の脂肪が分解されてエネルギーとして使われています。いわば脂肪は体のピンチヒッターなのです!

人間が太らないように働いている脂肪の中の「レプチン」とは?

アンチの言い分「脂肪に太らされている!」 脂肪の言い分「脂肪は人間が太らないように働いている!」

一体どういうことなのか?
解説してくれるのは、日本肥満学会で脂肪から出る物質を研究している箕越靖彦さん

箕越さんによると… 脂肪から出る「レプチン」というホルモンが関係しているそうです。

栄養として余ったものが脂肪になりますが、レプチンはこの脂肪の中で作り出されます。
脂肪に栄養が溜まってくると、レプチンは血管を通って脳内で食欲を司る“視床下部”に向かいます。レプチンが脳の神経細胞にたどり着くと、脳は十分な栄養が溜まったことを知ります。その結果、私たちのごはんを食べたいという気持ちがなくなり、食べ過ぎを防いでくれているのです!

箕越さん曰く
「レプチンは食欲をコントロールしている重要なホルモン」 「私たちが太りすぎないように働いてくれているのは脂肪なのです」

脂肪は「レプチン」を出して、食欲をコントロールしているのです!

しかし、レプチンの満腹を知らせるメッセージを”既読スルー"して、食べすぎを繰り返すと、ある問題が起こります。脂肪から出たレプチンがメッセージを伝えても、脳がメッセージを受け取らなくなってしまい、食欲が抑えられなくなります。これが肥満の正体です。

なぜ脂肪からのメッセージが脳に届かなくなってしまうのでしょうか。
箕越さんによると、これは「肥満の人にレプチン抵抗性が起こっているから」。
実は、肥満の人でもレプチンは脳にメッセージを届けに行っています。むしろ脂肪がつけばつくほどレプチンの量は増えています。

しかし、肥満になると、脳の血管内であふれた脂が邪魔をして、レプチンが脳内に入っていくことができなくなってしまうと考えられています。
箕越さんは
「レプチンを無視し続けると、レプチンそのものが無効化してしまう」と解説。

さらに、なんとか脳の中に入れたとしても、肥満の人はレプチンを受け取る機能が低下してしまうので、「栄養は十分です!」というメッセージに反応できにくくなっている、とも言われています。

箕越さん曰く
「レプチンそのものが無効化してしまうので、ますます食欲が湧いてきて、 たくさん食べてしまう (肥満の)負のループが起こってしまう。 脂肪からのメッセージは大切に受け取りましょう。」

新事実!脂肪には細菌と戦う能力がある!?

アンチの言い分「美しく健康であれば脂肪はいらない」 脂肪の言い分「脂肪は人間の健康を守っている!」

人間がケガをした時、傷口に侵入するバイキンと戦うのは白血球ですが、白血球が戦えるようになるまでには時間がかかります。脂肪はそんな白血球の到着する前にバイキンから体を守る“時間稼ぎ”のような働きをしてくれます。

脂肪は細菌とどうやって戦っているのか…?
アメリカで発表された研究について解説してくれるのは、今回、二度目の登場となる日本肥満学会の箕越靖彦さん。

箕越さんによると、皮膚の表面のかたい細胞の下にはクッションのような脂肪がたくさんあり、この脂肪から体内に侵入してくる菌と戦う「抗菌ペプチド」という物質がでてくると考えられているそうです。

アメリカで発表された研究によると、傷口から細菌が皮膚の下に侵入してくると、それが刺激となり脂肪細胞が増加。そのときに抗菌ペプチドを出して菌と闘っているそうです。

箕越さんによると、「皮膚の下の脂肪のすぐ下には血管がたくさんあり、血管を流れる血液は栄養豊富のため、細菌はどんどん増えてしまう。白血球が来るまでに細菌が増えるのを抑えなければならない。それが脂肪の役割。」とのこと。

脂肪は細菌と戦い、私たちの体を守っている存在なのです!

※脂肪は大切な役割をしていますが、脂肪の量が多くなり肥満になると、生活習慣病の恐れがあるので、食べ過ぎには注意しましょう。

脂肪は再生医療で大活躍!

アンチの言い分「脂肪は邪魔!」 脂肪の言い分「人間の体を救う救世主になるかもしれない!」

脂肪が「救世主」とはどういうことなのか?
解説してくれるのは、脂肪からとれる細胞について、東京大学と共同研究を行っている井上啓太さん。

井上さん曰く「脂肪からとれる細胞は「幹細胞」といい、細胞のもとになるもの。」とのこと。幹細胞とは、さまざまな細胞に変身できる力を持った細胞で、ダメージを受けた細胞や組織を修復・再生する医療で使われることがあるものです。

従来、幹細胞は骨の中心部にある骨髄からとられていて、とても痛く、患者の負担が大きかったそうです。しかし、これまで脂肪吸引で取り除かれ、捨てられていた脂肪を調べたら、脂肪の中にも幹細胞がたくさん含まれていることが分かったのです。

井上さんは「骨髄からとるのに比べると痛みが少なく、とった幹細胞は育てやすい」とコメント。採取する脂肪の量は米2~3粒分で患者への負担が少なくてすみます。
とった脂肪には数百個の幹細胞があると考えられており、培養すると3〜4週間でなんと2億個以上にすることも可能!

脂肪からとった幹細胞を利用して、すり減った膝の軟骨を再生。さらに、脂肪幹細胞による治療は拒絶反応が起きにくく、腎臓病などの治療への応用も期待されています。

井上さん曰く
「脂肪は再生医療の世界では、とても貴重な存在です。無駄なものなんてありません。」

脂肪はすごい力を秘めていたのです!

まとめ

今まで、絶対的な悪だと思われてきた脂肪の重要性がわかっていただけましたか?
ただ、くれぐれも食べすぎには気をつけてください!