【カメムシの言い分】強烈なニオイは身を守るため!?農作物を害虫から守る!?

NHK
2023年9月16日 午前10:30 公開

イヤ〜なニオイをまき散らし、農作物を食い荒らす正真正銘のヴィラン。
しかし、カメムシは見た目もニオイもさまざま!
中には農業で活躍する仲間もいた⁉

もくじ ●強烈なニオイは身を守るため⁉ ●ニオイの出どころは?臭くないカメムシもいる⁉ ●カメムシが洗濯物につくのは生きるため⁉ ●カメムシが農作物を害虫から守る⁉

強烈なニオイは身を守るため!?

アンチの言い分「”オナラ”が臭い!」 カメムシの言い分「いつも臭いわけではない」

一体、どういうことなのか?
解説してくれるのは、カメムシを15年間研究している秋田県立大学の野下浩二さん。

カメムシは体内にニオイの素となる液体を溜めていて、敵に襲われたときには身を守るためにこの液体を出してニオイを拡散させているそうです。

野下さんは「相手をびっくりさせて、その隙に逃げようという作戦だと思います」と解説。実際に、カメムシの天敵であるアリを入れた容器に、カメムシのニオイがついた紙を入れてみると…

アリは触角を触り始めました。
野下さんは「触角でニオイを感じているアリは、あまりに強烈なニオイが入ってくると、それを洗い落とそうとする」と解説。

さらに様子を見てみると、アリはニオイがついた紙から離れ、容器の上のほうに逃げていきます。

その後、足取りがあやしくなるアリも…
カメムシのニオイがアリの運動能力を衰えさせてしまいました。

野下さんは「カメムシを瓶に入れておくと、自分のニオイで死んでしまうことがある」「それだけ危険なものを体内に蓄えて身を守っています」と解説。

カメムシの強烈なニオイは、自分にとっても危険なほどで、身を守るための最終手段だったのです!

カメムシがニオイを発するのは身を守るときだけではありません。
仲間と情報を共有するときにもニオイを使っています。

【薄いニオイで仲間を呼ぶ】
 例)「ここは暖かくて気持ちいい。全員集合!」

【濃いニオイで仲間に危険を知らせる】
 例)「あそこに怪しいやつがいるぞ!敵だから逃げよう!」

敵から身を守ったり、仲間と会話をしたり…カメムシのニオイは、カメムシが生きていく上で重要な役割を果たしているのです!

ニオイの出どころは?臭くないカメムシもいる!?

アンチの言い分「一度臭いが放たれると、オナラ臭がずっと消えない」 カメムシの言い分「あれオナラじゃないんです!」

カメムシは自分が発するニオイはオナラじゃない!と主張します。

ニオイの出どころはお尻ではなく、腹部にあるオレンジ色のにおい袋。
ここには、アルデヒドなどの化学物質が入っています。

ここに溜まった液体を、足の付け根にある臭腺孔(しゅうせんこう)という部分から拡散させてニオイを発しているのです。

カメムシ=臭いというイメージですが、実はいいニオイを発するカメムシもいます。
カメムシのニオイについて研究している野下さんに、さまざまな化学物質を調合してニオイを再現してもらいました。

オオツマキヘリカメムシのニオイは爽やかな「青リンゴ」のような香り。

オオトビサシガメは、バニラのような甘い香りがすることがわかりました。

カメムシは日本におよそ1300種類いますが、良いニオイを放つカメムシもいるのです。
カメムシって奥が深いですね。

カメムシが洗濯物につくのは生きるため!?

アンチの言い分「洗濯物につくのがイヤ!」 カメムシの言い分「生き延びるために必死なんです」

洗濯物についていたり、なぜか部屋の中まで入り込んでいたりして私たちを不快にさせるカメムシですが、”生き延びるため”とは、どういうことなのか?
それはカメムシの生態に関係しています。カメムシの大好物はヒノキやスギの実で、山に住むカメムシは、これらから栄養を取り入れて仲間を増やていきます。

しかし、秋になって山に食べるものがなくなってくると、カメムシたちの一部は食べ物を探しに山を下ります。
そしてたどり着いたのが人間の畑。ここで果物や農作物を吸い始めます。

カメムシの生態に詳しい伊丹市昆虫館の長島聖大さんによると
「カメムシは人里ではなく、山で増えたものが人里へやってくる」 「山にカメムシのエサが多い年には、たくさん人間のところにやってくる」そうです。

そして訪れる冬は試練の季節です。カメムシの産卵は夏の初め。産卵まで生き延びるためには厳しい冬を乗り越えなければなりません。
寒さが苦手なカメムシはポッカポカの洗濯物が大好き!(下の写真はイメージ)

さらに暖かい環境を求めて、隙間から家の中に入ることもあるそうです。
長島さんは「カメムシは人間に嫌がらせをするつもりはなく、冬を越したい、生きたいという気持ちでやっていると思います」とコメント。

カメムシの生涯のサイクルは…
夏に山で卵から生まれ、ヒノキなどの実を食べて育ちます。
秋になると一部が人里に降りて果樹を吸い、厳しい冬を家などで乗り越えます。
春に山に戻り、夏の始めに卵を産んで命を終えます。

洗濯物にくっつくのは、厳しい寒さをしのぐため。カメムシも生きるために必死なのです!

カメムシが害虫から農作物を守る!?

アンチの言い分「農業にとっては害虫」 カメムシの言い分「農業の役に立っている仲間もいる」

農業の役に立っているとは、どういうことなのか?解説してくれるのは、高知県農業技術センターで病害虫の防除について調べている下八川裕司さん。

高知県はナスの収穫量が全国で一位です。ナスにつく害虫に対して長年、農薬を使っていましたが、害虫が農薬に慣れてきてしまい、農薬の回数が増えて農家の方々は苦労していました。

農薬以外の害虫対策はないか、と頭を悩ませていたとき、カメムシの仲間であるタバコカスミカメが、これらの害虫を捕食していることに農家の方が気づいたそうです。

カメムシの多くは植物を食べますが、タバコカスミカメは雑食性でコナジラミなどのナスの害虫が好んで食べます。そこで、タバコカスミカメを呼び寄せて定着させるために、タバコカスミカメが好きなゴマなどの植物をナスの畑に植えました。

害虫対策にタバコカスミカメを導入した結果、15年前と比べて収穫量は2割増!農薬は4割減!

高知県内では、ほとんどのナス農家が害虫対策にタバコカスミカメを使っていて、こうしたカメムシを活用した防除の取り組みは全国各地で始まっているそうです。

農作物に被害を与えるカメムシがいる一方、農作物を他の害虫から守ってくれるカメムシもいるのです!

まとめ

いかがでしたか?
身を守るためにイヤなニオイを発するカメムシですが、その仲間には私たちの生活に役立っているものもいます!
暖かい場所で見かけても、いい距離感をとっていきましょう。

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