梅雨の時期に発生するイメージがありますが、実はこれからの秋シーズンも要注意!
9月は梅雨以上に雨が降り、湿度も高いためカビの勢力が増す時期なのです。
モノを汚し、腐らせていく厄介者のカビですが、実は秘められた人間と地球を救う驚きの能力が、、、
もくじ ●常に空気中にいる⁉カビが増える3条件 ●地球を救う!?カビの”分解力”とは? ●カビが食べ物をおいしくする? ●カビが薬に?難病から人類を救う⁉
常に空気中にいる⁉カビが増える3条件
アンチの言い分「いつの間にか生えるから最悪!どこから来る?」 カビの言い分「最初からそこらじゅうにいる」
食パンを放置するとカビが生えますが、よく見ると、いろいろな色があることがわかります。それぞれが異なる種類のカビです。
実は、私たちの周りには、すでにカビの胞子が舞っています。
家の中には、クロカビ、コウジカビ、アオカビなど、さまざまな種類の胞子が飛散しています。
カビはもともと土の中で生活する微生物ですが、その胞子が風にのって飛んだり服などに付着して家の中に持ち込まれているのです。
室内の空気1㎥に数百から数千個の胞子が浮かんでいると言われています。
普段、私たちの目には見えていない胞子は、どのようにして増えていくのか?
カビが増える条件は3つ。
①温度(25℃くらいが好条件) ②水分 ③栄養
この3つの条件がそろうと、
・カビの胞子は「菌糸」という細長い糸のようなものを出す。
・菌糸から水分と栄養を吸収して成長する。
・成長した菌糸は、新しい胞子を出し、空気中に舞い上がる。
新しく生まれた胞子が、新しい場所に着地して、カビはどんどん増えるのです。
(ちなみに…水分と温度の条件は十分な“お風呂”。栄養はなさそうなお風呂ですが、お風呂で増える黒カビにとっての栄養は人間の皮脂やアカ・フケなどです。)
地球を救う!?カビの”分解力”とは?
アンチの言い分「世の中に必要ない!役に立っていない」 カビの言い分「カビがあるから地球は美しい」
カビで「地球が美しい」とは、一体どういうことなのか?
イラストでわかりやすく教えてくれるのは、ギャグ漫画家で絵本作家、ピン芸人としても活躍する田中光さん。
カビの働きがわかる紙芝居はこちら
自然の山などで、カビは落ち葉や動物の死骸などを土に返す働きをしているといいます。しかし落ち葉などがそのままの状態では、カビは栄養をとることができません。
そこで働くのが「酵素」です。カビは菌糸から酵素を出します。
酵素の働きで、落ち葉に含まれている栄養素を水に溶ける大きさまで分解します。こうしてカビは栄養をとることができるのです。
分解された落ち葉や動物の死骸は、土の栄養にもなります。カビは自然の中で、落ち葉や動物の死骸などを土の栄養に変えることで、地球の自然を守っていました。
カビが持つ「分解する力」は人間の役にも立ちます。
農研機構で、菌類を研究する北本宏子さんは「カビは農家を救います!」と主張。
北本さんによると、「農業資材で使われる生分解性プラスチックの分解にカビの酵素が役に立つ」とのこと。
生分解性プラスチックとは、カビなどの微生物によって分解できる素材のことで、畑の湿度や温度を保つマルチシートに使われています。
使い終わった後に回収しなくても、そのまま土の中の微生物によって分解されるエコな製品です。
しかし困ったことが…
微生物が分解しやすいようなシートにしてしまうと、栽培中にシートが分解され、なくなってしまいます。
逆に分解しにくいようにシートの強度を高めてしまうと、栽培後もなかなか分解されずにシートが残ってしまいます。
そこでこの研究所が注目したのが、“パラフォーマ”という、オオムギなどの植物に生息するカビです。
このカビの酵素は強力な分解力を持つのです。
どのくらいの分解力を持っているのか、実験してみました。酵素の入った液体と、酵素の入っていない液体を用意し、生分解性プラスチックシートを1時間漬けてみました。
1時間後、「酵素なし」の液体に漬けたシートは、まったく分解されていません。
一方、「酵素あり」の液体に漬けたシートは、軽く振っただけでバラバラに。
つまり酵素があれば、畑に敷いた生分解性プラスチックのシートも、すぐに分解できるわけです。
北本さんは、パラフォーマの酵素の溶液をスプレーなどで散布することでシートを分解することを目指しているそうです。
将来的には、一般家庭のプラスチックごみを小さくしたり、減らしたりする可能性を秘めています。カビの持つ「分解する力」が、私たちの農業を助け、ゴミ問題を解決してくれるかもしれません。
カビが食べ物をおいしくする?
アンチの言い分「食べ物を腐らせるな!」 カビの言い分「カビの力でおいしいものがたくさんある!」
私たちが普段からおいしく食べているものの多くはカビと深い関係があります。
かつお節にはカツオブシコウジカビというカビが使われていて、カツオの乾燥を促進し、うまみ成分を増やします。また、かつお節特有の香りを生んでいます。
カマンベールチーズに使われているのは、チーズをとろとろにする白カビの一種「ペニシリウム・カメンベルティ」
みそには、大豆のたんぱく質をうまみ成分のアミノ酸に分解するコウジカビの一種「アスペルギルス・オリゼー」が使われています。
さらに赤身肉のステーキに使われるカビもあります。
詳しく解説してくれるのは、カビなどの菌を40年研究している明治大学教授の村上周一郎さん。
村上さんはカビの力を利用する「熟成シート」をレストラン経営者と共同開発しました。
これはお肉を熟成シートに包み、冷蔵庫に入れて保存したもの。
シートの表面を見ると、細かい毛のように菌糸が伸びているのがわかります。
シートに使われている、ヘリコスチラム菌という毛カビです。
村上さんによると、このカビは成長していく過程で抗酸化物質を作り、腐敗を防ぐことができるそうです。
肉が悪くなる原因は空気に触れることで起こる酸化です。しかしこのシートにたっぷり含まれているカビの胞子は酸化を防いでくれます。
胞子は菌糸を伸ばして肉の内部に侵入、その際に抗酸化物質を分泌して酸化を抑えてくれるのです。
さらに、腐敗菌が侵入してくるのをブロックする役割も果たしてくれます。
実際に「胞子つきシート」と「胞子なしシート」で比べて見ました。それぞれのシートに包んだお肉を10日間冷蔵庫で保存します。
「胞子なし」のシートを肉からはがして包丁で切り、断面を見ていると、肉が酸化して茶色く変色しています。
一方、「胞子あり」の肉の断面は、菌糸の働きで酸化が進まず、美しい赤身の色が保たれていました。
比較すると一目瞭然!村上さんによると、食材にもよりますが保存期間を10~20日間くらい延ばすことができるそうです。
村上さんは「売れ残ったお肉の寿命を延ばすことによって、フードロスを解決できる可能性がある」「いいカビは食の寿命を延ばし、食べ物をおいしくし、みんなを幸せにする力がある」とコメント。
保存期間を延ばすだけではありません。熟成シートによる長期保存で、肉のたんぱく質が分解され、うま味成分のアミノ酸が3倍にまで増加しました。また、エビやホタテなど腐りやすい海産物にも効果があることがわかっています。
カビは食べ物を悪くするイメージがありますが、実は食べ物をおいしく、長持ちさせるように働くカビもあるのです!
カビが薬に?難病から人類を救う⁉
アンチの言い分「悪いカビが体内に入ると体に悪影響がある!」 カビの言い分「人間の病気を治すカビもいる」
世界で初めて発見された抗生物質「ペニシリン」は、体に入り込んだ細菌に対する抗菌作用がある薬ですが、アオカビが出す物質から作られています。
さらに最近、カビのすごい力が発見されました。解説してくれるのは理化学研究所の長田裕之さん。カビから、細菌による感染症に効く抗生物質を見つける研究をしています。
長田さんによると、カビはもともと膨大な菌が生息する土の中にいるが、そこで生き抜くための武器が抗生物質になる、と考えられているそうです。
そこで、長田さんの研究チームは、全国各地から数千種類のカビを収集。それぞれのカビが出す物質を抽出して、病原体とかけ合わせることで抗生物質になるものを見つけ出します。長田さん曰く「およそ2000から3000の菌の中から、2つか3つ新規物質が見つかれば大成功」 そして長田さんたちが、去年、発見したのが”マラリア”に効く抗生物質です。マラリアとは、マラリア原虫を持った蚊に刺されることで感染する病気で、2021年には世界で61万人が死亡したといわれています。
長田さんたちは、フザリウムというカビが出す抗生物質が、マラリアに効果があることを見つけ出しました。フザリウムは植物や畑の作物を枯らす“嫌われ者”の病原菌ですが、人間を病気から救う働きが明らかになったのです。
つまり、私たちの周りにいるカビたちが、将来、私たちを病気から救ってくれる…そんな可能性が秘められているのです。
まとめ
いかがでしたか?
カビというだけで嫌なイメージを抱きがちですが、カビにはたくさんの種類があり、その特性をしっかり研究すれば、私たちに役に立つ存在なのです。
普段の生活で発見したら、優しく除去してあげましょう。
<気が付いたらそこにいる!な不意打ちヴィランたち>
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