お坊さんの説法には生きる知恵がたくさんつまっている。
ここでは、『子育てで我が子との向き合い方に悩んでいる』・・・
そんなときに聞くと心が楽になるような3人の説法をご紹介します。
【天台宗 露の団姫さんの説法】
するようなことをしてくれまして、「わー、これ子育てって一筋縄ではいかんな」と、実感しているところなんです。
親という漢字は、「木の上に立って見る」と書きますね。ついつい私たちは、もう先々に回って、これをしてあげないと、あれをしないと、とかやってしまいがちなんですが、まずは子供のことを信頼して、ちょっと離れた距離からいつでも助けられる。そういう場所から子供を見守るということが大事なんじゃないかなと思っています。
実はお釈迦様にも羅睺羅という名前のお子さんがおられました。お釈迦様はご自身が出家をされるときに、お子さんを置いて出家をされたんです。この子供さんは大きくなられてから、お釈迦様の弟子になられます。その中で、お釈迦様はほかのお弟子さんたちと自分の子供をうまいことやっていけるようにいろんな工夫をされたとお経の中に残っています。ですから、お釈迦様も本当に、仏教の指導者としての自分と、そして父親としての自分。いろんな葛藤がある中でうまいこと両立されてきたわけなんです。
ですから、私たちもついつい子供がいると、子供のために自分の時間を捨てなきゃとか、自分の夢を諦めなければと思ってしまう人も多いんですけど、ぜひとも自分の時間も、自分の夢も大切にしながら子育てを楽しんでいただきたいなと思うんです。
仏教では『利他行』といいまして、“他を利する”という修業を非常に大切にしますけれども、やはり人さまのため、そして子供のために何かをする、何かをさせていただくためには、まずは自分自身の心と体が整っていないといけないんですね。ですから、子供のために全てを捨ててしまう、そういう気持ちで取り組んでしまいますと、また子供が巣立ったあとに、自分の中が空っぽになってしまったりしてしまいます。そして、それはまた子供自身の負担にもなりかねません。
自分の中で、自分の時間・子供に使う時間とうまく使い分けながら、ちょっとリラックスしながら子育てに取り組んでいただけたらいいんじゃないでしょうか。
【浄土宗 長谷雄蓮華さんの説法】
私にも子供4人いるんです。特に下の子は、今、小学校4年生、小学校1年生なんです。朝いつまでも寝てますしね。起きてくれないし、早くご飯食べなさいって、早く学校行きなさい、忘れ物あるのって。そしてやっぱり小さい子はパパの怒る姿とかパパがこうやって困る姿、うれしかったりします。思ったとおりにいかなかったり、本当は怒っちゃいけない、叱らなきゃいけないと思っても、大きな声で怒ってしまうことあるし、なんで分かってくれないんだって思うことありますよね。
でも実際、皆さんもどうだったんでしょう、子供のころ。親のことを考えると、私も実は高校を途中で辞めています。いろんなことがありました。そのときはちょうどお寺が火事になりました。その燃えた本堂を見るのが嫌でした。いろんなこと自暴自棄になりました。母が毎日言う、その小言が嫌でした。だから学校を辞めて、家出をしてしまいました。今思うと、なんて親不孝なことをしたんだなと思います。でもそんな私でも母は、父はまた受け止めてくれました。
愛という字、皆さんご存じですか。「愛」という字、見てください。真ん中に心がありますよね。そして下に足がある。そして向き合うという字なんです。愛を持って歩いてる。私たちは家族、パートナー、子供たちと一緒に人生歩んでますよね。歩んで、一緒に歩いてるつもりだけども、いつの間にか歩幅が違ったり、スピードが違ったり、体力が違う。途中で疲れることもあるから、どんどんその距離が大きくなったり、短くなったりします。この先に行ってる人が後ろを振り向いて、そして後ろを歩いてる人が進んで、向き合って、そして一緒に歩幅を合わせて歩いていく、これが「愛」なんです。
仏様は私たちと一緒に歩んでてくれます。私たちのことを包んで、そして守って、そして時には叱咤激励して歩いててくれます。だから私たちも仏様と同じように子供たちのことを叱咤激励して、そして先に歩くんじゃなくて、愛を持って、一緒に歩幅を合わせて、時には向き直って、そして一緒に見て、愛を持って進んでいきましょう。子供のことを思ってるからこそ、本当に愛してるからこそ、怒ってしまったり心配をするんですよね。それでいいんですよ。一緒に歩いていって、そしてすてきな子供、すてきな大人になっていただくように皆さんも頑張りましょうよ。
【曹洞宗 安達瑞樹さんの説法】
私たちはこのコロナ禍におきまして、普段見えないものが見えるようになりました。私はあらためて家族のことや、また友人のこと、絆とか命をあらためて見つめる良い機会になったなというふうに思っておりましたが、案外そういうことばかりではありませんでした。
私は子育ての経験はありませんけれども、電話相談の研修会に伺ったときにお話をお聞きしましたら、やはりお子さんがお家におられる時間が長くなったせいでお互いのストレスがたまってしまったり、また、家庭内での暴力が増えた、というふうなこともお聞きいたしました。
本当にいろんな見方があります。大人の見方もあれば子供の見方もある。何が正しいのかっていうのは、結局、子育てにおいては大人の判断に委ねられてしまうところが、またお父さん、お母さんの重荷につながってるのではないかなというふうに思うわけでございます。
いろんな問題、1つの問題に対して答えは1つではないと思うんですよね。いろんな見方がある。だからこそ私が皆さまにご提案したいのは、いろんな人にぜひ相談をしていただくというのはいかがでしょうか。なかなかお母さん同士でお話をする機会が減っているかもしれません。いろんな電話相談の窓口、専門家の方へ相談されるということもよろしいかと思います。いろんな答えがあると思います。
『応病与薬』という言葉がございます。“病に応じて薬を与う”。お釈迦様はその心のそれぞれの病に応じてお説教をされました。あなたの周りにもたくさんの仏様、あなたを支えてくれはる多くの仏さんがいはるはずでございます。ぜひ多くの方にご相談をされてはいかがでしょうか。