大の里、意欲を語る「1年間けがなくフル出場、1枚でも2枚でも上がる」

NHK
2024年3月29日 午前9:40 公開

大の里は初場所、11勝を挙げる活躍で初の敢闘賞を受賞しました。新入幕ながら結びで横綱照ノ富士戦も組まれ、令和の大相撲期待の若手として注目を集めました。吉田賢アナウンサーがその胸の内を聞き出しました。(※2024年3月2日スポーツオンライン掲載)

まさかこんなに勝てるとは、たくさん経験させてもらった


インタビューは茨城県阿見町の二所ノ関部屋で行われた

――大活躍でした。振り返ってどう思っていますか。
本当に幕内で相撲を取れたことが良かったです。まさかこんなに勝てるとは思いませんでした。2桁、三賞受賞を目指していたのですが、まさかでした。

――新入幕で横綱と対戦が組まれるとは思いませんでしたね。
光栄ですね。新入幕で横綱と対戦したのは私が10人目なのですね。今まで何百人と新入幕のお相撲さんがいても、10人しか横綱と相撲が取れない中で取らせてもらえたのはすごいことだと思います。あの空気の中で相撲を取れたことは大きな経験になりました。

――十両を2場所続けて12勝を挙げて通過したことは、自信になったのではないですか。
そうですね。いけいけという感じで自信はありました。幕内に上がってもやることは変わらないと思っていました。勝ち越しが最低条件で、勝ち越しできればいいかなと軽く考えていました。後半戦で少し優勝争いに絡んだりしたことは良かったです。

初場所で初の三賞となる敢闘賞を受賞

――勝ち越しは最低条件で2桁が目標だったのですね。
そうです。高めの目標を目指すとしたら新入幕で三賞を取りたいと思っていました。11番勝てたのは大きかったです。

――勝ち越しが9日目にはやばやと決まりましたが、そこから何と琴ノ若関、豊昇龍関、照ノ富士関と上位との対戦が続きました。10日目、琴ノ若関との対戦は驚いたでしょう。
翌日の取組表が配られると、私は対戦を見るのですが、前半戦に私の名前がないのです。それで後半戦を見てびっくりしました。でもありがたいことです。思い切っていくだけと思いました。

関脇、大関、横綱戦で1番でも勝ちたかった


関脇琴ノ若との一番 (初場所10日目)

――琴ノ若関戦は振り返ってどうでしたか。
今だから言えることがありますが、立ち合い、両手(もろて)でいくか、体をぶつけていくか迷いがありました。師匠(二所ノ関親方・元横綱稀勢の里)から「ペースを相手に握られていた」と言われました。完全にペースを乱されて負けました。午後5時半以降の時間帯に相撲を取りたいということが目標でもあったので、実現したのですが、欲を言えば、関脇、大関、横綱戦の3番で1番でも勝ちたかったです。

大関豊昇龍に下手投げで敗れる (初場所11日目)

――豊昇龍関戦はどうでしたか。
高校時代1学年上で、1回負けていますが、近い存在でした。映像を見たら惜しい相撲に見えますが、簡単に左を取らせて相手十分の形にさせてしまったのです。本当に完敗ですね。

――落ち着いて取れたのではないですか。
相手が大関だし、翌日が横綱戦と分かっていましたから、けがをしないように取ろうと思って、それで落ち着いて取れたのではないですか。

やはり横綱は強い、たくさん勉強になった


横綱照ノ富士に敗れる (初場所12日目)

――照ノ富士関戦、いちばん善戦しましたね。
思い切って怖がらずにいこうと思いましたが、気持ちが空回りしてしまいました。やはり横綱は強いです。力も全く違いました。何もさせてもらえず簡単に投げられました。さすが横綱だと思いました。たくさん勉強になりました。

――3日間見ていて、最初の琴ノ若関戦が緊張して硬くなっていましたが、日ごとに良くなっていきました。前日の反省点が生きているのです。関取は修正することが早くできると思いましたね。3日間いい経験をしましたが、その分2桁を勝つためには苦しくなりました。三賞を取りたいと本音では言っていましたが、取れないかもしれないと思い始めました。

最後に負けたら何の意味もない


――そこから千秋楽まで三日間、よく頑張りましたね。
家族が13日目に国技館に来ると聞いていたので、3連敗したままでは終われない、絶対に勝とうと思いました。懸賞がついていたので自分の手で懸賞を親に渡したいと思ったのです。いい相撲で勝てて良かったです。力士が出るのを観客が待っているところで、両親に会って懸賞を渡しました。

――それで9勝目ですね。あと残り2日で1勝しなければいけませんでした。
大崖っぷちに立って、9勝5敗で千秋楽を迎えるか、10勝4敗で千秋楽を迎えるか、すごく考えました。14日目は取組表が出るのが遅かったのです。朝乃山関だったらどうしようとか考えました。佐田の海関だったのでベテランですが思い切っていこうと思いました。自分の不利な形になりましたが、稽古の成果が出たと思います。

玉鷲を破り11勝目を挙げた (初場所千秋楽)

――感心したのは、新入幕で疲れが出る終盤の3日間全部勝ったことです。
最後の3日間、全部勝てば11勝ですが、2勝1敗でいいと思っていました。最後、千秋楽に玉鷲関と対戦することが決まったときに最後の1番が大事で相手も意地を見せてくるので、最後に負けたら何の意味もないと思いました。

――二所ノ関部屋に入門して師匠から基本を指導されてきましたが、どう思っていますか。
自信にはなりました。立ち合いについて直接指導を受けて体も脚が太くなりました。稽古もしているので自信になっています。

相手がつけ込めないシナリオができた


初場所千秋楽の土俵入り

――入門して1年たっていませんが、1年足らずでどうしたか。
1年前は初場所を観客席で見ていたのですから、まさかですね。1年後に結びで相撲を取るのですから。

――初場所で見つかった課題はありますか。
上位戦をこの年で経験したとことで弱さが分かりました。自分の甘い点、弱点に相手はすぐつけ込んできます。うまいですね。こうしたら相手がつけ込めないというシナリオが自分の中にできました。師匠が言っていましたが、次は憧れの場所ではない、相手を倒しにいく場所ということです。次はしっかり頑張りたいです。

――WBCの大谷翔平選手ですね。「憧れるのはやめましょう」
そうですね(笑)。

――春場所の目標は「憧れるのはもうやめます」(笑)。相撲の立ち合いは両手と、右肩から当たって右を差す形ですね。
はい。自信のある方をやっている感じです。相手のことを考えて選んでいます。

今は思うがままに相撲を取っていく


笑顔で語る大の里

――今後、どういう相撲を目指していきますか。
上位と対戦して、自分の力が少しは通用したと感じました。大きい体があるのでスピードを生かした立ち合いの鋭さ、スピードを生かした相撲を取って、下半身の土台を生かした強いお相撲さんになりたいですね。

――最後は右四つの四つ相撲になるのでしょうか。
なるのかもしれませんが、まだ決めてはいません。今は思うがままに相撲を取っていきます。

思いを聞き出す吉田アナウンサー

――ことし1年の目標はどこに置きますか。
まだ1年間フル出場していないので、九州場所までけがなくフル出場して幕内で相撲を取ることが目標です。まだ上の番付があるので1枚でも2枚でも上に上がれるような存在になりたいです。

慰問で少しでもつらいことを忘れてほしい


――2月6日に石川県に慰問されましたが、みなさん喜ばれたでしょう。

能登を慰問し祖父の坪内勇さん (左) と再会 (2月6日)

実際に行ってみて感じるものが多かったです。母の父、私の祖父(坪内勇さん75歳)が「避難所で生活しているのか」と思いました。遠藤関、輝関と3人で行きましたが、お相撲さんの力はすごいと思いました。感動して泣いている人もいました。祖父は避難所です。喜んでいました。3年ぶりに会ったので、照れ臭かったです。「頑張ったな」と言ってくれました。

――さあ「憧れはやめましょう」の春場所ですが(笑)、当然みんながマークしてきますね。
考えたくないです(笑)。初場所は過去のことでもう終わりました。まずけがなく勝ち越しを目指すことが目標です。初場所よりも強い相手と対戦しますし、役力士とも当たりますが、稽古を積んでしっかり土台を作って春場所で頑張りたいです。大阪は初めてなので、どんな感じか分からないですが、頑張ります。

雑誌「NHKG-Media大相撲中継」春場所号より