親方の目 藤島親方 ~大相撲初場所展望~

NHK
2024年3月29日 午前9:30 公開

横綱・照ノ富士が久々の出場を決め、大関・霧島が綱とりに挑む。ファンの期待も高まる初場所は14日が初日です。恒例の「親方の目」は、今年最初を元大関・武双山の藤島親方に担当して頂きます。「おもしろい番付になっている」と評価する初場所について、たっぷり展望、しっかり分析して頂きます。(※2024年1月12日スポーツオンライン掲載)

元武双山・藤島親方とは


強力な押し相撲を武器に「平成の怪物」と呼ばれた元大関・武双山の藤島親方。平成5年に幕下付け出しで初土俵を踏むと、持ち味の強力な突き押しでわずか1年足らずで幕内に上がりました。平成12年の初場所で初優勝し、その年に大関昇進を果たすと、通算での大関在位は27場所。現在は日本相撲協会の副理事、そして審判部副部長を務めています。

横綱昇進に挑む大関・霧島


藤島親方が初場所の見どころとして真っ先にあげたのが、やはり、大関・霧島の横綱昇進への挑戦でした。

さっそく、藤島親方の見解をうかがうと・・・優勝した先場所のような相撲を取れば期待できると太鼓判を押しました。一方で、横綱の地位にたどりつくためには、精神面の充実も必要だと指摘しています。

<藤島親方>

『綱とりの場所ですからそこが最大の注目でしょう。初日2日目の相撲が無難に行けるというか、いいスタートを切れるとその後もぐっと乗ってくるので、自分より下位の力士に取りこぼさないというのが1番大事になる。霧島は名古屋場所が新大関で途中出場。秋場所が角番で迎えた場所だったが、先場所は何も気にせず相撲に集中できる状況だったのがよかったのかなと思う。先場所の相撲を取っていれば、いい内容だったので期待できる。横綱に今一番近いのは霧島には間違いない。するするっといっちゃう気もする。今場所はまた(プレッシャーが)かかってくる場所だが、この試練を乗り越えないと上には上がれない。力だけではなく、精神面などが試される。』

求められるのは「力強さ」


横綱審議委員会は横綱に推薦する条件として「大関で2場所連続の優勝」を原則とし、「これに準ずる成績をあげた力士を推薦する場合は、出席した委員の3分の2以上の決議が必要」と内規で定めています。藤島親方は霧島の横綱昇進には何よりも「力強さ」を期待したいとしています。

<藤島親方>

『霧島は相撲にうまさはあるが、力強さはもう一つだと思う。ただそれがなくても今これだけの成績を収めているので、まだまだ力を出しきってないというか、ポテンシャルは相当高いと思う。優勝しなくて横綱に上がる人もいるわけで、やっぱり内容を見る。例えば15戦全勝でも全部変化で勝ったら2場所連続優勝でも声がかからないだろうし、やっぱり内容だと思う。その上で優勝すれば最高だが、力強いなという相撲が取れるかが重要。強いなという相撲じゃないと、横綱に上がっても持たない。』

横綱・照ノ富士が壁に?


霧島が過去、苦しんできた相手が横綱・照ノ富士。これまで10戦して一度も勝っていません。

その照ノ富士は初場所には出場することを師匠の伊勢ヶ濱親方が明言していますが、3場所連続で休場してきた影響が、どこまで残っているかは未知数だとしています。

<藤島親方>

『照ノ富士が1人で頑張っていますが、休場が続いてますし、常に満身創痍で体調が万全で出ることはないでしょう。場所前の稽古総見でも本人の本来の力からすると少し物足りない部分は感じた。もう少し力強さがあるはず。本人は霧島の壁になりたいと思っているだろうし、本来はそうなんだろうけど、今は出場していない状態なので。』

おもしろい番付


初場所の番付を「おもしろい」という藤島親方。看板の横綱・大関以外にも気になる力士の名前が大勢上がりました。その中でも熱く語ってくれたのが4人でした。

まずは、関脇の琴ノ若

<藤島親方>

『1番気になる。本当に力をつけてるし内容がいい。大関になっても取れる実力はある。自信も出てきた。ずっと三役で相撲を取っていて、勝ち越すだけでも大変なのがふた桁勝てるようになった。皆さん期待しているだろうし、大関に上がったら盛り上がる。』

右ひざの大けがで、一時、幕内から序二段まで番付を下げながらも新小結となった宇良

『大けがをして下まで落ちて、上がってきたのは立派。身長はないけど、体の幅とか厚み、俊敏さはあって、見ている人がおもしろい相撲を取る。土俵で相撲を取るのが楽しくてしょうがない感じがする。』

2場所連続で優勝争いに加わり、前頭筆頭まで番付を上げた熱海富士

『2場所連続で優勝争いをしてるのは並じゃない。今場所は上位総当たりなので楽しみ。どのぐらいの相撲を取れるのか。簡単じゃないと思うが、ここでいくようならすごい。相手にデータが入ってる状態になってきているので、厳しいとは思うが馬力はあるし、常に一生懸命向かっていくというか、好感が持てる相撲を取るのでどのぐらい通用するのか見たい。』

そして、最後に名前があがったのは、所要4場所というスピード出世で新入幕を果たした大の里。石川県出身でもある23歳には、能登半島地震の被災地にも届く活躍を期待しています。

『すごい力士。4場所は早いけど、持ってるものからしたら遅いくらい。本人が持ってる力を出し切ったら2場所で上がったと思う。今場所大勝ちしてもおかしくない。相手が強い方が力が出ると思う。石川県出身なのでそういった意味でも頑張ることが元気を届けることになると思うので頑張ってもらいたい。』

相撲を取れる幸せかみしめて


能登半島地震では、石川県で200人以上が亡くなりました。(11日現在)さらに、孤立した状態になっている地区が残るなど、深刻な状況も続いています。藤島親方はこうした中で初場所を迎える力士に、より相撲に真摯に向き合うよう最後にメッセージを送りました。

<藤島親方>

『戦国時代と言われ、みんなにチャンスがあって、いつ誰が名乗り出るか分からないし、意外な力士がくる可能性もある。新しい年なので、それぞれ自分の目標があるだろうし、みんないいスタートを切りたいと思っているだろうが、世の中は今大変な人たちがいっぱいいるので、そんな中でも相撲を取れる幸せをかみしめながら相撲を取ってもらいたい。』

この記事を書いた人

松井 嚴一郎 記者

平成29年入局
6年間の宮崎生活を経て令和5年夏からスポーツニュース部で大相撲など格闘技を担当。
新弟子として頑張ります。