ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』特別連載、第7回目は「知ってるとより楽しめる小ネタ&トリビア特集」をお届け!9月17日放送のシーズン1「特別版」とセットでお楽しみください。シーズン2のヒントも隠されているかも……。(文:SYO)
【映画編】
オダギリジョーといえば映画の申し子!『オリバー』シリーズには、映画ネタが大量に仕込まれている。その一部をご紹介しよう。まずはマーティン・スコセッシ監督。シーズン1の中で神々廻(橋爪功)が言及する「スコセッシのカミソリひげを剃るの映画」が気になっていた方も多いのではないだろうか。その名は『ザ・ビッグ・シェイブ』。スコセッシが1967年に発表した短編だ。約6分の短さだが、侮るなかれ。ひげをそる男の顔から血がたらたら流れる相当強烈な内容になっている(ご覧になる際はご注意を!)。なお、スコセッシを敬愛するオダギリは、『オリバー』内で『タクシードライバー』や『ミーン・ストリート』への愛も忍ばせている。そして、オダギリが多大な影響を受けたというジム・ジャームッシュ監督とデヴィッド・リンチ監督。ジャームッシュにおいてはもうオダギリの血肉になっており、シーズン2の青葉一平(池松壮亮)とオリバーが横たわるメインビジュアルは『デッドマン』のオマージュだ。リンチでいえば、『オリバー』シーズン1の冒頭で描かれる北條かすみ(玉城ティナ)の遺体が見つかるシーンは『ツイン・ピークス』、何者かの切り取られた耳が登場するシーンは『ブルーベルベット』を想起させる。ちなみに、『オリバー』のオープニングにはEGO-WRAPPIN'の楽曲「サイコアナルシス」が使用されているが、本楽曲は鈴木清順監督作『ピストルオペラ』のタイトル曲でもある。同作に感銘を受け、自身も鈴木監督の『オペレッタ狸御殿』に出演しているオダギリのたっての希望で実現したという。劇中には他にも数えきれないほどオダギリの愛する監督たちのエッセンスが詰め込まれており、第3話の伝説のダンスシーンは『ウエスト・サイド物語』、本筋と異なる話が続いていく展開は『レザボア・ドッグス』をはじめとするクエンティン・タランティーノ作品を彷彿させる。
【キャスト編】
『オリバー』といえば豪華すぎるキャストも魅力だが、それぞれの個性はもちろんのこと、バックボーンやフィルモグラフィを活用するのもオダギリ流。その好例といえるのが永瀬正敏だ。本作で彼が演じるフリーライターの溝口には、代表作のひとつである『私立探偵濱マイク』が強く反映されている(住まいもマイクと同じ横浜・黄金町)。なお、『私立探偵濱マイク』の主題歌もEGO-WRAPPIN'であり、放送時にファンが大いに沸いたのは記憶に新しいところだ。そして、同じく放送時に話題になったのは『孤独のグルメ』ネタ。松重豊扮するヤクザの若頭・龍門がいきなり食レポを始める展開に吹き出した方も多かったことだろう。ドラマネタであれば、外せないのは『時効警察』。オダギリジョー×麻生久美子といえば本作であり、オダギリは『帰ってきた時効警察』の第8話「今回、三日月が大活躍する理由は深く探らない方がいいのだ!」で監督・脚本を務めている。こちらにも犬に関わるネタが登場しており、『オリバー』を見た後だとニヤリとしてしまうのではないか。漆原といえば、徐々に前髪が短くなっていく演出が笑いを誘ったが、その着想は麻生がオダギリに送った写真だったとか。こうしたプライベートのエピソードも反映されているのが興味深い。メタネタ(現実世界の話をフィクションに持ち込む)も積極的に取り入れるのが『オリバー』の持ち味だが、第2話で漆原が言う「わたしは『制服コレクション』のグランプリなんだからね!」は、麻生が第6回『全国女子高生制服コレクション』でグランプリを受賞したことから来ているそう。他にも、佐藤浩市演じる小西のモデルは、スーパーボランティアの尾畠春夫と作家の志茂田景樹だったり(小西が異常に“鼻が利く”のには別の理由が……)、漆原(麻生久美子)の口調が突如IKKO風になったり、オダギリの主演作「仮面ライダークウガ」で共演した葛山信吾が出演したり、わかる人にはわかる「ポンポンポ~ンポポポポ〜ン」ネタがぶっ込まれたりと、カルチャーの領域に留まらず、様々なネタが入り乱れている。今回挙げたのはあくまで一部だが、改めて感嘆させられるのは「ここまでオマージュネタの宝庫なのに、わからなくても十分楽しめる」ように仕上げているオダギリ監督の手腕。カルチャー好きをニヤニヤさせつつ、それらはあくまで枝葉であり、作品の幹はオリジナリティに満ちているという仕様が、我々を飽きさせずに楽しませてくれるのだろう。シーズン2では物語も演出もオマージュ&パロディネタも縦横無尽に駆けめぐり、さらに遊びまくっている。お楽しみに!