オリバーな連載⑧【編集現場レポート】

NHK
2022年9月30日 午後10:18 公開

編集現場レポート

ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』特別連載、第8回目は編集現場レポートをお届け! オダギリジョー監督に密着し、普段なかなか明かされない超・貴重な編集の舞台裏の様子をお伝えします。(取材・文:#SYO)

いまから記すのは、2022年6月から8月にかけて行われた『オリバーな犬』の編集&仕上げの作業、その一部のレポートだ。あくまで僕の経験則だが、実働スタッフ以外が編集現場に密着する機会はほぼないのではないか。人生初体験ということで初回は緊張のあまりカチコチしながら都内某所のスタジオに向かったのだが……。まずは編集作業のざっくりした流れを紹介しよう。

① オフライン編集(仮編集とも。加工前の撮影素材をつないでいく)
② オンライン編集(本編集。映像の加工やエフェクト等も施していく)
③ カラーグレーディング(作品のテイストに合わせた色味の調整。)
④ MA(マルチオーディオ。音楽や効果音、ナレーション等を付けていく)

これだけ見ても、編集がいかに根気のいる作業かが伝わるかと思うが、単純に言えば「編集とは、こだわればこだわるほど大変」なもの。そして、オダギリジョーといえば生粋の芸術家である。作り手の美意識がダイレクトに反映される場で、オダギリ監督は朝から晩まで悩みぬき、作品を仕上げていった。

見学初日、我々を迎え入れてくれた彼は「ずっとうまくいかないシーンが2つあるんです。何がベストなのか出てこない」と切り出した。それは、溝口(永瀬正敏)とある人物の電話シーンと、一平(池松壮亮)&オリバー(オダギリ)が地面に落ちた会員証を拾うシーン。視聴者的にはさらりと見てし見てしまう場面な気もするが、オダギリ監督のこだわりはすさまじい。

「どのアングルの素材をどう組み合わせるのが効果的か」といった素材の選択から、「どのタイミングで画面を分割して、どこで戻すか」といった演出に至るまで、編集技師を交えて試行錯誤を延々と繰り返す。さらに「編集でテンポを変えると、キャラクターの心情が変わっていく」という考えから、1秒にも満たないフレーム単位で細かく微調整。また「芝居的に気持ちいい編集だと、面白みに欠ける」等、この場面ではどちらを立てるのが正解かという選択にも常に迫られる。まさに「終わりがない」作業だ。

なんとかこの工程を通過し、映像を加工しつつ画面に映る余計な要素を消去し、作品の世界観をより強固に仕上げていくフェーズへと突入しても、オダギリ監督が気を抜くことはない。運転シーンに映り込んでいる車窓のシーンは、実際には別撮りで合成している場合も往々にしてあるが「前のカットより風景の流れるスピードが遅い」と一瞬で見抜き、修正を指示。その集中力と視野に驚かされるが、とはいえ緊張が漂うことはなく、口調はどこまでも優しく、スタッフ陣と談笑しつつ精度を高めていく柔和な雰囲気が漂う。

作業の合間に「実はこの背景には某チェーン店の看板が入り込んでいて、消してくれたんです。全く気付かないですよね。すごくないですか?」と編集チームの仕事ぶりをアピール。こういった部分もまた、オダギリ監督の人柄だろう。なお、防犯カメラの記録映像に記載される文字情報やスマホに映るSNSの画像に至るまでオダギリ監督のチェックが入っているため、放送時はそういった部分にも目を配って楽しんでいただきたい。

取材最終日は、8月に行われたMA作業。防音完備&多種多様なスピーカーに囲まれたレコーディングスタジオに近い雰囲気の空間で、音周りの調整を行っていく。音楽や効果音、セリフ等のボリューム調整やフェードイン/アウト、カットイン/アウトの調整を繰り返し、ある程度決まった後はテレビで流してみて視聴者にとって最適な音像が構築できているかをチェック。自分たちの理想は追求しつつ、届いた先の環境への意識も忘れない。

この日興味深かったのは、オダギリ監督から「大げさに言うとケモノみたいな声にしたい」とエフェクトに関するリクエストが出たときのこと。現状の音源では対応できないという話になるも、「じゃあいま録っちゃいましょう!」とその場にいた面々がスッと動き、様々なパターンのうめき声をアフレコブースで収録し、新たな素材を生み出したのだ。

こうしたフレキシブルかつクリエイティブな姿勢こそ、オダギリ組の強み。妥協なき姿勢で作り上げられた『オリバーな犬』の業(わざ)の数々は、気を付けて見なければ気づかないかもしれない。ただそれこそが本懐。すべて最初からそうだったかのように自然に仕上げていることが、スタッフたちの技術と情熱の高さを示しているのだ。

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次回は、第4話~第5話の撮影裏話を振り返り! 放送後だから言えるあんな話やこんな話も? 更新を楽しみにお待ちください。