『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』撮影現場レポート6話
ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』特別連載、第10回目は撮影現場レポートVol.3をお届け! 衝撃のラストを迎えた第6話の舞台裏を、ついにお伝えします。(取材・文:#SYO)
2022年10月4日、『オリバーな犬』シーズン2第6話が放送終了。ついに一連の事件の黒幕・神々廻(橋爪功)と対決し、すべての謎が明かされる……!というテンションでテレビやPC・スマホの前に鎮座した方々は、いまどんな気持ちだろうか。
きっと、「舞台⁉」「カラオケ⁉」と大いに面食らい、「あのラストは何⁉」「ちょっと待ってあれってこういうこと?」と、いままさに脳内や視聴者同士で考察合戦を繰り広げていることだろう。個人的にも、脚本を拝読したとき「えッ!」とショックを受けた記憶がある。シーズン1の第3話のまさかのダンスシーンに匹敵するサプライズ……。オダギリジョーは一体どこまで、我々の想像を超越していくのか――。
視聴者の皆々様においてはまだうまく整理がついていない状態かもしれないが、3月末に千葉県の某所で行われた第6話クライマックスシーン(舞台シーン)の撮影はというと、なんとも多幸感あふれるものだった。
約1000人を収容できる大ホールを貸し切って行われたこちらのシーンの撮影。会場を訪れると舞台上には煌々(こうこう)と照明が照らされており、舞台奥にはEGO-WRAPPIN'が登場する巨大なショーケースが設置され、手前にはゴージャスなソファや机が置かれ、上手(客席から見て舞台の右側)には香椎由宇演じる占い師用の岩のセットが用意されていた。そして舞台上部に目を向けると、書き割り(木の板などに絵を描いた大道具)のヘリコプターに、本物の縄梯子があって……。一言でいうとカオスな空間である。
さらに、そこに池松壮亮から佐藤浩市まで超豪華なメンバーが勢ぞろいするのだからどこに目を向ければいいのか、脳が処理落ち状態。カメラも計3台投入され、物々しい雰囲気……になることは一切なく、皆が談笑しつつ、締めるところは締めるというチーム・オダギリの空気は変わらない。
小西(佐藤浩市)が客席から舞台上に上がるシーンでは、佐藤が「つながり」(編集で複数のカットを1本につないだときに、動作の連続性に違和感がないこと)を意識しながら動き、さすがの貫録を見せつける。ちなみにこの日、ムードメーカーとして活躍していたのは麻生久美子。宣伝チームから託されたカメラを楽しげに操り、演者たちの合間をするすると縫いながらオフショットを次々と収めていた。
そして、ショーケースの幕が上がりEGO-WRAPPIN'の生演奏が会場に響き渡ると、キャスト陣はノリノリに! 第4話のラスト&第5話のシシド・カフカのドラムの生演奏シーン然り、生の芝居×生の演奏がシーズン2のチャレンジのひとつだが、第6話でもオダギリジョー監督の“音”に対するこだわりが随所に見られた(余談だが、編集現場を見学した際、カラオケシーンのテロップの出方や字体についてもオダギリ監督の細やかな創意工夫を垣間見た。吹き出してしまうギャグシーンも、コンマ単位での微調整が入っているのだ)。
そのオダギリ監督だが、この日は大忙し。大団円となる舞台上でキャストが入り乱れるシーンを演出しつつ、自分の出番になるとオリバーの着ぐるみに袖を通し、演じた後は会場隅に設置されたモニターまで走っていって映像をチェック。ストップウォッチを片手にシーンの尺(長さ)も含めて細かく確認し、また中央まで戻って撮影し……といった具合で、休みなく動き続けていた(その後には、例の縄梯子のシーンの撮影も!)。
キャストが多いだけではなく、前述した演奏シーンや、橋爪が縄梯子に掴まるシーン等もあるため、事前に細かな動きの確認や打ち合わせが必須になる。さらには後からホワイトボードや巨大な球体に映像が投影されることも考えたうえでシーンを作っていく必要も生じ、まさに正念場といえる内容だ。
しかし先ほども述べたように、内容的に負荷がかかる日であっても、現場がピリつくことはない。明るい雰囲気の形成に一役買っていたのが、オダギリ監督の気遣いがにじむケータリング。チーズおかか等のちょっとひねった味が楽しめるおにぎり屋さんに加えて、多種多様なお惣菜が長机にずらりと並べられ、キャストもスタッフも一列に並んで思い思いに食べたい料理を選び、休憩スペースで雑談しながらお昼ご飯を楽しむ。あちこちでグループができ、笑い声が飛び交うという遠足チックな時間となった。
終始リラックスした環境で、あっと驚くシーンを創り出したチーム・オダギリ。飄々としつつも攻めていくこの“抜け感”こそ、我々が本作に魅了され続けている要因のひとつだろう。
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ここまで続いた「オリバーな連載」も、次回でいよいよ最終回! 最後は、SYOが『オリバーな犬』と歩いた日々を主観たっぷりに振り返ります。更新を楽しみにお待ちください。