空港ルートとは
小林)今回新たな動きがあった「空港ルート」。これまでのいきさつを教えてください。
真野)まずは3つのルート案を整理します。仮にフル規格で整備することになれば、新しく線路を引く必要があります。現在議論されているルート案はこの3つです。
佐賀市北部を通る「北回りルート」。
在来線に沿って佐賀駅を通る「佐賀駅ルート」。
佐賀空港を通り九州新幹線筑後船小屋駅で合流する「空港ルート」です。
国は「佐賀駅ルート」が最も適しているとしていますが、佐賀県側はこれに強く反発。一方、空港ルートについて山口知事は「一考に値する」としたため、与党側は国に対してこの「空港ルート」が技術的に実現可能かなどを調査するよう求めていました。そしてきょうの与党検討委員会で、その調査の結果が説明されたのです。
「現実的な選択肢にはならない」理由は?
小林)その説明は「現実的な選択肢にはならない」というものでした。どうしてなのでしょうか。
真野)軟弱な地盤と空港特有の環境が原因です。
想定では武雄温泉駅から佐賀平野を通って佐賀空港を経由し、筑後船小屋駅へと至ります。ここで「最大の難所」とされたのは空港のすぐ東側・早津江川と筑後川の河口付近です。ここを横断するためには、橋をかけるか川の下にトンネルを通す必要があります。
まずは「橋」。一帯は離着陸する飛行機の妨げにならないよう高さ制限があります。
黄色の円は半径3000メートル・高さ制限は45メートル。さらに厳しいのは滑走路の延長線上にかかる部分で、ここも最大60メートルまで斜めに制限がかかってます。
橋はこの高さ制限に引っかかるというのです。
さらに「トンネル」についても、一帯の地盤が軟弱でミリ単位で沈むおそれがあり、安全な運行に支障が出るとしました。
以上の理由で空港ルートは「現実的な選択肢にはならない」と結論づけられたのです。
小林)「一考に値する」とした空港ルートが否定されたことに対し、佐賀県側の受け止めはどうでしょうか?
真野)山口知事はこのように話しています。
山口知事「まだはっきりと聞いていないのでよく分からない。いろいろとときょうあったことを聞いてみたいと思う。聞いたところによるとルートについてもいろんな検討がなされる可能性があるという話だったので、それはいいことだと思う」。
空港ルートが否定されたことについて直接的には言及せず、フル規格の議論であればさまざまなルート案を検討していくべきだという、従来の考えを改めて述べるにとどまりました。
小林)今後はどのような動きがあるのでしょうか。
真野)与党検討委員会は国に対し、佐賀県側に丁寧に説明するよう求めました。山口知事も「まずはきょうの内容を聞きたい」と話しているので、去年の2月を最後に開かれていない佐賀県と国との「幅広い協議」が開かれ、直接説明するものと見られます。
議論にどう影響?
佐賀県側からすると今回の説明は厳しいものだったと言えます。
というのも、空港ルートを巡っては、新幹線と空港を直結させることで▼佐賀空港が混雑の著しい福岡空港の代わりとなることや▼将来新幹線が貨物輸送もするようになれば、佐賀県産の農作物などを空港で載せ替えて全国に発送するといった構想があったからです。
佐賀県側は公の場で空港ルートを推したことはありませんが、空港ルートは山口知事が常々口にする「新たな発想」や「佐賀県がフル規格に対して夢を描けるか」といったことに近づくことができる可能性はあったのです。
今回それが否定されたことで、今後の「幅広い協議」で佐賀県が合意できる点を見いだすことはより困難になったと言えます。今後協議がどう進んでいくのか、引き続き注目していきたいと思います。